対決
「フッ、とうとう現れたのね!」ヒミコがにらみつける。
「姉ちゃん、分かってるの?今、ヤバイんだよ。
帝が一押ししたら、もう死ぬんだよ?」市子が袖で口元を隠す。
「そっちもね。もう一筆で封じてやる!」筆を市子と帝に向って振り回す。
「おおっ、勇ましい。そなたの姉は、武者のようだな。」崇徳天皇が笑う。
「野蛮で無神経なだけです。」市子がプイッとする。
「あんた!よくもおじいちゃんとおばあちゃん殺してくれたわね!
絶対許さないから!」ヒミコは1番言いたかった事を言う。
面倒臭そうに市子がため息をつく。
「姉ちゃんがアキラ君とへばり付いてるのが悪いんじゃん!
私はお姉ちゃんを狙ってたのに!
だいたい2人は苦しくもなかったし、2人で楽しそうに極楽浄土にお喋りしながら逝ったよ!」市子が話す。
「えっ、そういうの見えるの?そっちは?」ヒミコが驚く。
「私もう死んでるんだから、分かるのよ!
何も死の世界の事知らないクセに!
偉そうに自分が正義みたいなの、本当にウザい!」
市子が帝に前を開ける。
「もう、良いのだな?では」崇徳天皇がヒミコに向って手をかざす。
すると態勢が崩れて筆から手が離れ頭から滑り落ちる。
「バイバイ〜お姉ちゃん!姉ちゃんも極楽浄土逝けるよ〜」
2人は確認もせず消えようとしたが、なぜか身体が動かない。
「はて?なぜか身体が動かぬ…市子?」崇徳天皇が困って尋ねる。
「私もです…えっ、なんで???」イヤな予感がして、大仏の方を振り返る。
すると、姉はまだ落ちてなかった。
ヒミコの足首にタスキが縛りつけられ、アキラが螺髪に両足乗せて踏ん張り逆さまのヒミコを引き上げていた。
「お前、なんで筆無くても重いんだよ〜?」アキラが文句を言う。
「アンタが非力なだけでしょ!私は重くないから!」宙吊りになりながらでも、ヒミコはうるさいし偉そうだ。
いつの間にか足だけでなく、身体全体が動かしづらい。
大仏の顔がどんどん迫ってくるような…いや、違う!!
自分達が大仏に、近づいていってるのだ!
「市子!大仏の眼を見よ!」崇徳天皇が叫ぶ。
「あっ、両眼が…なんで?」市子も叫ぶ。
いつの間にか両眼が描かれて大仏がまるで生きてるような…
でも、姉は筆動かしてなかった!
市子と口喧嘩するのに忙しくて。
帝と自分に振り回した後は、持ってただけだ…
あっ、アキラ君だ!
すっかり2人共姉の動きや口に気がいってた。
全くアキラ君の存在を忘れてた!
ヒミコは振り回しながら、描いてない眼に筆を着地させた後に市子にふっかけたのだ。
昔、AV映像に顔加工して使われた時も、市子は討ち入り断ったが、完成した動画は確認した。
意外に犯人も姉もワンカットくらいで、任されたファン有志のカメラマンは事務所の機材ばかり撮影してた。
突然だから、誰もモニターを切っていなかった。
そして、姉と口喧嘩するため、皆デスクを離れていたせいで作業画面を丸写しされたのだ。
事務所や顔にはモザイク入れたが、パソコンとモニター画面はそのまま出してた。
反対にアチラは暴れて叫ぶ姉を映していた。
姉は頭は悪いが動物的な勘がスゴい。
絶対絶命の時の立ち回りがスゴいのだ。
「帝、謀られました。後ろのアキラ君が筆先だけ回して眼を入れ、お互いの身体を縛っていたタスキ紐を姉の足に縛り直したんです。話してる内に…」
市子が崇徳天皇に説明する。
「エッ、男?居たか?」まさかのまだ崇徳天皇はアキラの存在に気付いて無かった。
姉の存在感でアキラ君が霞むのだ。
半グレ事務所も姉と争うのに忙しくて、カメラマンが機材や、モニター画面撮ってるのに止めに来なかった…いや、眼に入らなかったのだ!きっと…
筆で攻撃された事で、市子も帝もヒミコとその手元に神経がいった。
また振り回して襲われない為に!
視線の誘導に引っ掛かったのだ!
頭で考えてない。直感的に最適な行動するのだ、姉は。
だから、相手に悟られない!
市子が勉強頑張ったり努力を惜しまない根底には、
姉のこの天性への脅威があったのかも…今更気付いても遅いが…
この一瞬で色々な事が腑に落ちた。
「市子、市子、助けておくれ。身体が!身体が〜っ!」
帝の身体が大仏に、吸い込まれていく。
「ご安心下さい。今度は、私がおります。2人で努力いたしましょう。
次こそは日本を滅ぼせるように!頑張りましょう!」
市子は崇徳天皇と一緒に大仏の中に消えた。




