逆転
アキラ、ヒミコ、見波も近衛吉良に近付こうとしたが、部下に止められた。
「吉良様から、遺言です。
すぐ開眼を進めてくれと。吉良様は私達におまかせ下さい。」
「確かに!」アキラも頷く。
「もう崇徳天皇は境内に侵入してる!気を付けろ!」
と皆に聞こえるように声を張った。
読経が止まった瞬間を突くように、あの透明な玉が
境内の全ての人の頭上に降り注ぐ。
至るところで悲鳴と肉が焼け焦げる匂いが充満する。
寸でで大仏の袖下に隠れた3人。
そこから大仏の腹を見ると、先ほど中に入れられた遺物が
まるで中から出ようとしてるのか?
箱が中で扉に体当たりしてるような音が鈍く響く。
「早く眼を入れないと、本当にヤバイな…」アキラが呟く。
「でも、どうするんだよ?」見波が辺りを見回して絶望する。
僧侶達はことごとく硫酸と過酸化水素を浴びて倒れている。
新しく入った者が読経を始めるが、一気に全滅したので補充が間に合わない。
籠の脇に墨壺と巨大筆が転がってるのが見えた。
ヒミコは飛び出して筆を担ぐ。
「私をあそこまで持ち上げて!」大仏の頭部を指さす。
「無茶言うな!生身の人間持ち上げられるか!」アキラが怒る。
「あれ?でも、この間、四国で?」
ヒミコは霊体だけで崇徳天皇陵入った時のようにと思ったみたいだ。
「あの時は物理的な事やってないだろ?
筆で眼を描くのは生身じゃないと出来るか!」
アキラが筆持ったヒミコを大仏の袖下まで引っ張る。
僧侶達が入れ替わる間もなく第二弾の濃硫酸過酸化水素の玉が落ちてきた。
せっかく入れ替わった僧侶達もまた肉が焼けただれ倒れた。
吉良の部下が負傷しながら壁の計器のスイッチを入れた。
するとスピーカーで爆音のお経が流れる。
おかげで第三弾は来ない。
救護班はどんどん倒れた僧侶を運び出し、新しい僧侶が読経を始める。
「じゃ、登るしかないよね!」ヒミコは辺りを見回し若い僧侶の袖をめくるタスキ紐を拾い、巨大筆に墨をたっぷり含ませて自分の背中に背負う。
そして、まず大仏の手のひらから腕まで登った。
「見波君、来れる?私を担いで欲しいの。」見波に声を掛けた。
「やってみる!」見波は登り肩にヒミコを乗せて大仏に手を付きながら立ち上がる。
ヒミコの体重プラス筆の重さなので大柄な男並みの重さだ。
「あ〜絶対ヒザ壊す〜っ!」と叫びながらも立ち上がった。
「コッチだ!手を伸ばせ!」漆でピカピカの大仏に裸足になって先に肩まで登ったアキラがヒミコに手を伸ばす。
「ゲッ、重っ」と悲鳴を上げながらも、何とか引き上げた。
「そんな重くないわよ!裸足いいね、私も」ヒミコも靴を脱いで裸足になる。
「ここから眼を入れれないかな?」様子を見る。
「筆が真っ直ぐだから無理だろ…頭に登って描くしか…」
2人で大仏の耳をよじ登り頭のコブ、螺髪をまたよじ登る。
ヒミコは仏の頭の前に降り、筆を持つ。
筆を運んだタスキでヒミコと自分の身体を繋ぎ、アキラは後ろの螺髪のコブにしがみつく。
「イケるか?」アキラが聞く。
「何とか!身体前に倒すから、お願いね!」ヒミコが頼む。
まず片目が入れられた。
と、綺麗な着物の裾が目の上の方をかすめた気が…
真上を見ると、なんと市子が!
崇徳天皇と並んで浮いていた!




