前日
明日はとうとう大仏開眼式だ。
ヒミコ達も招かれているので出席する。
うまく行くのか?不安もある。
出来るだけ文献を集めて再現すると近衛吉良は言ってたが…
また、いつ崇徳天皇がやる気を出すかも知れない。
何より市子の状態が気掛かりだ。
眠れなくてモニターでニュースとか見てる。
すでに開場を待って並ぶ人まで出てる。
皆に崇徳天皇へ捧げるお経が書かれた札がカイロと共に配られていた。
無料の暖かい鍋やぜんざいや焼き餅が提供され、緩いBGMとお経を読む僧侶の声が混じってお正月のような感じが漂っている。
お焚きあげに人が集まりお経を唱えながら暖を取る人達。
電車は深夜も走り人がどんどん増えていく。
扉を叩く音が。
有間だった。
「ごめんネ、寝てるかなと思ったんだけど…」遠慮しながら入ってきた。
「ヒミコ君は市子ちゃんの事、覚悟できてるの?
もしかしたら、崇徳天皇と一緒に封じられるかもしれない事?」
有間が聞く。
「…死んでも、まだ苦しかったりツラいのなら、封じられて拝まれて神様扱いされるのは嬉しいかも?と思ってます。
私は妹を勘違いしてたみたいだし。」中継を見ながら目線を落とす。
「勘違い?」有間が聞く。
「勉強してるし、先生や親の言うこともちゃんと聞くし守るし…だから、将来エリートサラリーマンなりたいんだろな。と
勝手に思ってたんです。
だから絶対大学行かせて上げようと。
親が亡くなっただけで、子供の時から勉強してた市子が大学行けないなんて、ダメだ!
と思ったんです。」淡々と床を見たまま話す。
「良いんじゃない?良いお姉さんだよ。」有間がうなづく。
「でも、余計なお世話だったみたい。
妹はそんなに大学行きたくも無かったし、私の動画手伝ってる内に自分がヒミコなんだと思ってたみたい。
大学行かされて、インフルエンサーの道を取り上げられたって思ったみたいです。」大きなため息をつく。
「ショート動画は、自分だけで何とかなるけど普通の動画なったら編集作業が膨大だからね〜
中にはコンビ組んで編集の人も一緒に顔出ししてる人もいるよね?」
「そうなんです。妹は、そういう風にして2人で、ヒミコなんだ!と思ってたんですね。
私の動画って法律ギリギリ多いし警察に良く謝りに行く事も多いし、
絶対エリートコース歩む妹を関わらせたらいけない!と私は思ってけど…」
話してる内にズーンと落ち込んできた。
「あ〜っ、結構なすれ違い起こしてたんだよね〜
話し合うべきだったね、とことん。」
有間もため息をつく。
「妹さんは、人の役に立つのが好きなんだよ。
ありがとうって感謝されるのが無常の喜びってタイプ。
だから、お父さんお母さんを喜ばせたい。
先生を喜ばせたい。
って勉強してたんだろね。」有間が客観的に分析する。
「ハハッ、私単細胞だから、そんな妹のいじらしい気持ち、理解してなかった。
自分が自分が〜ってタイプで人がそれをどう思うか?
なんか1ミリも気にしてなかった…」どんどんヒミコがめり込んでいく。
「でもね〜福祉ボランティア?大学の体験でやって理解したよ。
感謝される仕事なんて、幻想だってね。」有間がフッと笑う。
「人は自分勝手な生き物なんだ。
人の役に立つのが当たり前になって、水道だって電気だってバスの運転手や車掌さんも、
皆その人がいないと回らないのに誰も感謝しない。
給料貰ってるんだから働けよ!って思ってない?」
ズイとヒミコの顔を覗き込む。
「エッ、ええ、確かに。」ヒミコが戸惑う。
「それが『仕事』なんだよ。
とりあえず感謝されたい気持ちは引っ込めて、コツコツやるしかないんだよね、市子?ちゃんも」
ちょっと大人のダークな笑みで有間が話す。
「それを期待した感謝が返ってこないからって、人を恨んだり呪ったり、果ては世を儚むのは違うんじゃない?」
有間がスゴク悪い顔をする。
「いつも17.8歳で死ぬから体験出来なかったけど、今回勉強出来た部分だよ、それは。」
有間がやっと顔を遠ざけてくれた。
綺麗な人のドアップは、何か心臓に良くない。
そして、恐い!
「まあ、だから市子ちゃんが病んで亡くなった事に責任感じること無いよ。
皆、それをくぐり抜けて大人になってるんだから。」
有間がまたいつもみたいにフザケておどけた。
「まあ、恨んで怨霊なるのもアリだけどね〜
ただし、封じられても仕方ないのさ!」
サラッとなんかヒドいこと言う。




