子会社令嬢
有間が神妙な顔でダイニングに来た。
「あのさ、市子ちゃん?の友達って子が来てるんだけど。ヒミコ君に会いたいって…」
「それ、おかしくない?市子ちゃんの存在は消えてるんだろ?
九条公彦の事件もヤリサーが半グレの女に手を出したトラブルに置き換わってるって!」
見波が椅子から半立ちする。
ヒミコは記憶をさぐる。
「大学で市子が仲良くしてた子。軽井沢の別荘に誘った子だ!」思い出した。
市子が引きこもりになった後から市子の生霊に呪われて精神不安定なった友達だ!
「確かその子も大学休学して東山のサナトリウム通ってるはず!
でも、市子絡みじゃなくなってるはずなんだけど???」
どう考えても、なぜココへ来るのか?解せない?
「どうする?なんかブツブツ言ってて変なんだけど。
親が一緒だけど。
急にココへ連れて行ってくれと子供に頼まれたらしい。 親も何にでも縋りたいんだろけど…恐いよ〜」
有間も怖がってる。
でもヒミコは気掛かりな記憶がある。
その子が大学で、市子が毎晩枕元に来ると言ってた!
生霊だったけど、もしかしたら死霊も来れるかも知れない…
「いえ、会います!もしかしたら市子からメッセージかもしれないから!」
居間に通さずヒミコの部屋に来てもらった。
出入り口を一箇所にしたい。
親と共に入って来た市子の友人は見る影も無かった。
大学では華やかな一団でザ・女子大生って感じだった。そのリーダーで九条公彦の大学附属幼稚園からの幼なじみだったらしい。
市子はその情報を知らなかったのだ。
親はいかにも社長夫人な佇まいでボロい幽霊屋敷の共同トイレや共同風呂の昔ながらの下宿の様子に引いてる。
「あの…有名なインフルエンサーのヒミコさんですよね?」確認してくる。
「で、ご要件は?」ヒミコもガン無視で話を聞く。
「あっ、この子が病院の帰り道、急にココに寄りたいと言いまして。
もしかしたら娘を治してくれる人なのかも?と」
とんでもないご都合主義だが、子供が病気だとつい親はこうなるものなのだ。
「大学同じなので何度かお見かけしましたが…特に話した事もないですし…」ヒミコがやんわり断る。
「この子がこんな風になったのは、私達の仕事のせいなんです。
九条さんの会社の子会社でしたから、この子は小さい時から九条の坊ちゃんに子分扱いされてまして…
年頃になってからは良いように使われて女の子紹介させられてました。」
何だか急に言い訳大会が始まった。
「この子としては、九条さんが好きで結婚したかったと思いますよ。でも坊ちゃんにそんな気はサラサラなかったみたいで…」
急にハンカチで目頭を押さえだした。
ヒミコとアキラと見波は途方にくれる。
扉には有間も心配して立っているが、やはり困った顔をしてる。
「…お母さん、黙って!」下を向いてブツブツ話して毛を抜いてた子が、急に怒鳴った。
「悪い奴らをやっつけるの!そうすれば治るのよ!
やっつけるわ!」とスクッと立ちヒミコに飛びかかる。
「しねしねしね〜!
悪い奴はしね〜っ!」と叫びながらテーブルの上に乗って、そのままヒミコの首を絞めようとしたが、
アキラに片手でビンタされて飛んでいった。
「何するんですか!ヒドい!」母親がぶっ飛ばされた娘を助け起こして悲鳴を上げる。
「警察行きますか?行きたくなかったら、すぐ出て行って下さい!
だから、入れたくなかったんだ!」
有間がサクサクっと追い出した。
「大丈夫?ヒミコ?」見波が心配してくれるが、それよりメンタルの方がダメージきつい…
「俺は手抜きして片手しか使わなかったぞ?これでも」アキラが引っ叩いた手をヒラヒラさせておどける。
「やっぱり死んでも動かせるんだ!
でも前より雑な感じ…?」ヒミコが首をひねる。
やはり市子は私に死んで欲しいんだ。
分かってはいたが、やはりダメージはある。
たった2人の姉妹だし。
「クククッ、『愛』作戦、効いてるみたいだなあ〜
崇徳天皇が絡んでないな。
これは市子?本人がやったんだよ!
現世にいないから霊も呼べないし、精神もあの子みたいに不安定な人間しか動かせなかったんだよ。
普通の人間じゃ跳ね返される。」アキラが心底嬉しそうだ。
どうも市子は追い込まれているようだ。
それはそれでまた心が痛い。
亡くなっているのなら、せめて心安らかであって欲しいのだが…
崇徳天皇は術中にうまくハマってくれたようだ。
先を考えて動く人間ではなく、今目の前の欲望に素直な人間らしい。
弟の後白河天皇も思いつきや衝動で動く人で周りを振り回したらしい。
ただ子供には淡白で、崇徳天皇より先にサッサと皇太后に我が子を赤子から預けていたらしい。
お陰で次の皇太子候補にすぐ息子が選ばれた。
そう、後白河天皇は次男だし近衛天皇が早世さへしなければ天皇候補なるはずか無かったのだ。
近衛天皇から後白河天皇の子供へ引き継がれる流れに宮廷は動いていた。
そこで、初めて崇徳天皇は自分がミスった事に気付いたのだ。




