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京都事変  作者: たま
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サナトリウム

薬がキツい。

ずっとボ〜ッとしてハッキリしない。

家のいる時、あんなに明瞭で無限の力が湧いたのに。

全然眠くない。

力は無限に湧いてくる。爽快だった。

あんなに人生で気持ちよかった時間は無かったのに…

ココに閉じ込められて投薬されてから、ずっと身体に力が入らない。

たまに目覚めるが、逃げ出そうとしても扉も窓も閉じ込められているらしい。

「誰がこんな事を…」

黒い影達は、全てを通り抜けて私の所へ集まるが私が

空洞なのでまた去っていく。

そう昔から影は私の側にいた。

だが家に帰り家族と過ごすといつのまにか消えていた。

少し寂しいが家族が私を愛しているのが分かるから。

私は幸せだった。

父は甘いし、母はおおらかで、姉は恐いけど頼りになる。

中学で勉強が得意だったせいで、なぜかクラスの女子に無視された。

前に呼ばれて先生に答案用紙を褒められて渡される。

それが目障りだったようだ。

ある日、姉がその無視してる女の子を呼び出してガン詰めしてた。

クラスの皆も顔が強張っていた。

先生も来たが、姉は大人の怠慢だと先生まで責めてた。

結局、校長室まで姉は苦情を言いに言ってた。

次の日から、もう誰も無視しなくなった。

気づけば、黒い影も消えていた。


「お姉ちゃんはさあ〜自分が正しいって顔いつもしてるけど、

その自信はどこから湧いてくるの?根拠は?」と聞いたことがある。

姉はビックリしたような顔してた。

考えた事も無かったようだ。

「根拠?って、そんなの無いよ。

納得できれば黙るし。納得できなければ、気が済むまで相手に聞くだけだよ。

で、私の納得できる答えを提示しなければ、絶対黙らないだけよ。」

姉の答えもまた私には意味不明だった。

自分が納得するって、何だろ?

評価は人が決めるものだ。

私が決めるものじゃないのに…

「お姉ちゃんって、変だね、変わってるね。」と言うしか無かった。

お姉ちゃんは全く勉強しないし、自分の興味ある事しかしない。

夏休みの宿題も全然しないで、9月はいつも廊下に立たされていた。

皆が姉を見て笑う。

私は恥ずかしくて他人のフリをする。


頼りになる姉だけど…なんかしんどかった。

弱音は絶対吐けない。

吐いたら、即解決に動き出す。

恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい…私は心の中で呟くしか無かった。


イジメは消えるけど、またクラス替えすれば他の子がする。

勉強できるのがイヤらしい。

私は周りの大人の喜ぶ顔が、好きなのだ。

それを見ると安心する。

私は守られてる。評価されてる。

ココに居て良いんだ…

教室は居心地良くないが、もう気にしない事にした。

姉にしゃしゃり出られたら、恥ずかしいし。

意地悪してくるのは数人だけ。

他は勉強教えてとか難しい問題を一緒に考えようとか言う人と仲良くしてた。


父は私と似てる。

人の喜ぶ顔が、好きだ。

笑顔を見ると安心する。

だから相談事は姉や母じゃなく父にしてた。

なのに…私を残して死んでしまった。

高校2年の終わりに転校、高校3年は受験だから勉強ができるのでクラスの皆に重宝がられた。

誰かの役に立つのは良い。

居場所を貰ったみたいで。

でも受験が終わると皆離れた。

転校生であまり知り合いでも無いし。

受験から解放された遊びに誘われる事は無かった。


黒い影は、もう誰にも打ち明けられない孤独や寂しさを夜の闇の中で慰めてくれる。

一緒に人の理不尽や身勝手を嘆いて、自分が受けた仕打ちを語ってくれる。

それを聞くと癒された。


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