覚悟
玄関には、着物姿の杖をついた老人と黒尽くめの男達がいた。
「…」すっかりテンションが下がった有間は無言だ。
代わりに見波が応対する。
「あの…どちら様でしょうか?」
「近衛吉良だ。蘇我日美子さんは居るかな?」
どうもヒミコに会いに来たらしい。
「知り合いなんですか?一応有名人なんで、本人に確認してきますね。」有間が仏頂面で返事する。
「この方を誰だと思ってる!早く、女を呼べ!」部下が怒鳴りつける。
有間がギロッとにらむ。
スーパーだと思ってたから機嫌が悪い。
「あ?知ってるよ!藤原五摂家の近衛だろ?
失礼だろ!もう!」ブツブツ言いながらヒミコに話しにきた。
「どうしょう?玄関なら大丈夫かな?」ヒミコがソワソワする。
「え〜っ、会わなくて良くない?追いかえすよ〜」有間は会わす気ないみたいだ。
「いや、動画にもコメント付けてるし、ここまで来たってことは覚悟してると思うんだよね。」ヒミコは会わなきゃいけない気がしてた。
「まあ、そう言うなら…」有間は不機嫌だ。
「はじめまして。お悔やみ申し上げます。」
ヒミコは頭を下げた。
祖父と祖母を亡くしたばかりなので、近衛吉良の今の気持ちは痛いほど分かる。
それも多分、市子がやってる…
「うむ、いいかな?握手してもらって?」吉良が、杖をつきながら片手を出した。
「お方様!」周りの部下が驚いた!吉良の周りを囲う。
「下がれ!ただの1ファンなのだ。孫もヒミコ君のファンだった。将来は動画配信者になると話しておった…」
「そうなんですか?光栄です。」とその手を握りかえした。
「もう、思い残すことは無いな。」満足したように近衛吉良は背を伸ばす。
「先日、手にした崇徳天皇の遺品を返して頂きたい。
アレはとんでもない物だ!危険だ!
僧侶も1000人集めた。専門家に文献を調べて開眼の儀式を再現する手筈を整えた。
ココへ返して頂きたい。」
部下が後ろから凄いお経の書かれた分厚い銅製の空の箱を出してきた。
「これは…凄い!放射性物質でも大丈夫そうな…」作りに有間が感心してる。
「あの…私の首のアザ見て下さい。
アレに関わることは、こうなる可能性があるんですよ?大丈夫ですか?」
ヒミコはもう死にそうな近衛吉良が耐えれるのか?
心配になる。
「玄関を開けろ!」閉まってる扉を部下が開ける。
そこにはすでに僧侶が50人ほどお経を唱え続けていた。
「最後の1人が倒れるまで、藤原家の総てで崇徳天皇の怨霊を封じてみせる!」
幽霊屋敷の門の外にはズラッと車が並び、全てにお札が貼り付けられていた。
「分かりました。ここまで覚悟されているなら。」
ヒミコはアキラの部屋から遺品持って来て、その銅製の箱に納めた。
その瞬間、箱を支えていた部下の1人が苦しみ出した。
が、誰も動揺せず新しい部下が箱を支える。
「とんでもない物だったんだね!
僕らはアキラの力で守られてただけなんだ…」見波が震えた。
後ろのお経を唱える声がより一層大きくなる。
「ありがとう。
もう、生きて会うことは無いと思う。では…」別れを言う近衛吉良の顔が一瞬、聖徳太子と熱く語る中臣鎌足とかぶる。
藤原家の始りは、権力じゃなかった。
誰かの生き様に憧れ共鳴したのだ。
『太子と国造りをしたい!』聖徳太子の政治スタイルに憧れた男の夢が始りだったのだ。
車に運び込むまでに1人また1人と部下が倒れていく。
が、誰も動揺もせず倒れた仲間を担架に乗せ前へ前へと進んでいった。




