疫病
「あれ?ダイニングにもテレビ置いたんですね?」
ヒミコが気付く。
有間の書斎兼居間にしかテレビはなかったのに
いつの間にかダイニングにもテレビが増えてた。
「ほら?突然のニュースとか見逃さないようにね。僕は携帯見ないから。」
有間が少し憂鬱な顔からいつもの笑顔に戻った。
本当に有間は見てきたように話すので、ついお話しに
引き込まれてしまう。
「あの夢がそんな古代の一幕だったのかあ〜」ヒミコが呟く。
「もし、そうなら中臣鎌足って気持ち悪いおじちゃんだったんだなあ〜教科書ではイケオジだったのに。」
入鹿がヒゲぼうぼうの蛮人って感じだったけど、本当は年若いさわやか青年だった。
「聖徳太子が叔父さんってすごいなあ〜
憧れてたろうなあ〜自分も摂政として天皇を支えたい!って思ってたろうなあ〜」
全然その辺りの歴史の見方が変わる。
と共に今も藤原氏って恐ろしい一族なんだなと思う。
まさかの蘇我氏の1人を神格化することで蘇我氏と切り離して印象操作するとか…
「そりゃ1000年権力の座にいるわ!」感心する。
「あのおじさんの権力への執念、震えたもんなあ〜」
蘇我入鹿への妬み羨望。
全てを生まれ持った青年への年老いた男のゾッとするような執念。
そして命も名誉も全て奪い尽くしたのだ。
ふと市子を思い出す。
「もう私しか市子の記憶ないんだなあ〜」
母も周りの人も誰も覚えてなかった。
実家の隣は部屋は市子の部屋だったのに…今は壁になってた。
市子が藤原五摂家を滅ぼしてるとしたら…それは蘇我入鹿の復讐みたいなもんなのかなあ〜?
しかし、おじいちゃんおばあちゃんを殺したのは許せない!
長く顔を見ていないので、自分も妹の記憶が朧げになってきてる。
愛しいのか憎いのか?
複雑な気持ちになる。
と急にダイニングのテレビが速報を流した。
「外務省からのお知らせです。ドバイ駐留の近衛文隆さん、弓子さん、博通さん、ご家族がエボラ出血熱で死亡されました。
交流や接触があった方は至急ご連絡ください!
お知らせです…」
「こ、これって…」見波がテレビを指さす。
「そうだね、藤原五摂家の近衛家の人達だ。」有間が冷やかに答えた。
「本当に市子は頭が良いのお〜そなたが中宮なら私は父や弟に謀られなかったかものお〜」
崇徳天皇が感心する。
「もったいないお言葉です。近衛さんご夫婦がドバイ駐留で
息子さんがイギリスに留学されてると聞いて思い付いただけですから。」
市子が嬉しそうに照れる。
イギリス留学中の息子さんが久々両親が居るドバイに
戻ると聞いたので、戻る途中にピラミッドが見たいと
カイロに立ち寄りエジプト航空を使うように仕向けた。
そこでエチオピア人の感染者が気付かず同乗しトイレに行く途中で戻してしまい吐瀉物が息子さんに。
少しだったのでウェットティッシュで取りそのままドバイの実家に帰宅してしまった。
「私では思い付かぬ。これで藤原の残党の老いぼれ以外気付かぬだろう。ホッホッホ」崇徳天皇が本当に楽しそうだ。
「そなたの実家はうまくいかなかったな。」
「はい、私が見誤りました。」市子が頭を下げる。
「いやいや、責めてはおらぬ。良い家で育ったのだなと羨ましいのだ。」優しく悲しげに貴人が微笑む。
「ところで、残った藤原氏の年寄りはどうするおつもりですか?」市子は気掛かりだった。
「あやつらは、もう捨て置いても死ぬ身ばかり。
何もする気は無いが?だめか?」崇徳天皇は何もする気はないようだ。
「そうですか…」市子は一抹の不安を覚えた。




