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京都事変  作者: たま
14/60

通夜

太秦の実家に戻ると玄関を入ったすぐの客間に

祖父と祖母が並べて美しい布団に寝かされていた。

顔には布が…

さっき事故の現場でも顔に布を被った遺体を見た所だ。

土間に崩れるようにヒミコがへたり込んだ。

「ほら、おじいちゃんとおばあちゃんにご挨拶して。

きっとお前の事待ってたと思うから。」

母は意外にしゃんとしている。

「昔からのご近所さんが沢山いるからね〜

お母さんの幼馴染も来てくれて結構昔話で盛り上がって忙しいのよ。」

父が亡くなった当時はひっそりと戻ってきたが、

ヒミコが動画で有名になったり九条のヤリサー事件があったので

皆、訪問の機会を伺っていたようだ。

ちょうどお通夜で客がひっきりなしに訪ねてくるようだ。

母だけでは捌けないのでご近所の方がお手伝いで駆けつけている。台所はマダム達で賑やかだ。

昔からの町家なので、ご近所付き合いが元々盛んだったのだ。

母も仕事が落ち着き子供も手が離れ、小中高と地元なので付き合いが復活していた。

「あら〜ヒミコちゃん、おかえり♪」

ヒミコを囲んでご近所の人達が話し掛ける。

「覚えてる?お母さん、里帰り出産して最初に抱いたの私なのよ!」

「覚えてる訳ないじゃない〜アホちゃう」

「いや〜お父さん亡くして借金で大変とか聞いてたから声掛けづらかったし。そしたらあっという間に有名人なって

タクシー通学だしね〜」

確かに。

ご近所は気になっても母は働いてるし私たちは籠るか大学だし関わり用が無かった。

「おじいちゃんとおばあちゃんから、話聞いてただけだから〜」

そうか!皆はおじいちゃんおばあちゃんから私達家族の話を聞いていたのか!

オバちゃん達に囲まれて祖父と祖母の枕元へ。

ココは2人が作った人間関係で出来上がった世界なのだ。

弔問客はひっきりなしで、いかに祖父と祖母が地元で愛されていたか分かる。

改めて涙が流れる。


「あれ?アキラ?」気付くとアキラが側にいない。

見るとオバちゃん達に囲まれている。

「あれっ!お兄ちゃんも有名人やん!全国大会行きはるんやろ?

頑張ってな!」

「えっ、2人は恋人なん?」

「お兄ちゃん、ええ身体してるわ〜触らして〜」

アキラはオバちゃん達に触られまくって困っていた。


母は市子の記憶が消えてるので、スッカリ元気だ。

バケモノになった市子の姿も気がふれて喚く姿も忘れている。

病気の娘を抱えている記憶が丸々消えているのだ。

「もしかしたら、このままが良いのかな?」祖母と祖父の安らかな顔を見ながら呟いた。


「ごめん!お部屋無いのよ!2人はヒミコの部屋にお願いできる?」

今夜はご近所さんで故人を偲んで飲み会があるらしい。

そのまま告別式まで泊まると言うので部屋が無いのだ。

「お母さんもちょっとは寝てね!」ヒミコが心配するが、母はオバちゃん達や同級生の相手で忙しいながらも楽しそうだった。


2階のヒミコの部屋の横は壁になって市子の部屋は存在しなくなっていた。

「やっぱりな。病院と同じか。」アキラがため息をつく。

「それより…私達今夜一緒に寝るの?」部屋にベッドは一つしかない。ヒミコはふと心配になった。

もしかしたらアキラが帰るかと…

「何言ってんだ!お前どんだけ狙わてるか?

分かってないだろ?

病気に事故に突然死。

あっちは何でも出来るんだぞ!

今回は、お前を俺から引き剥がすために仕組んだんだろ。」

アキラは当たり前みたいにヒミコのベッドに横になった。

「ちょ、ちょっと、私はどこに寝るのよ?」アキラも180以上あるが

ヒミコも167cmある。

「ココ寝れば?」自分の脇下を目を閉じながら指でトントンした。

「!!!!」ヒミコは絶句する。

すぐに階下に布団を貰いに走ったが、全部使うようで…1枚も無かった…

すごすごと部屋に戻る。

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