表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
京都事変  作者: たま
1/60

崇徳天皇

『崇徳天皇は島流しされたが、写経だけは京都に置いてほしいと兄弟である後白河天皇に頼んだ。

だが、断られ怨霊となり後白河天皇を呪った。』


「ところで市子(イチコ)ちゃん、どうなの?病状は?」

朝ご飯で有間がクロックムッシュを日美子(ヒミコ)の前に置きながら聞く。

サナトリウムは同じ東山だし、母が見舞いの度にヒミコの所にも寄ってくれるので詳しい病状なども聞いている。

しかし、ヒミコ自体は一度も見舞いに行ったことは無い。

「相変わらずです。薬がキレたら奇声上げて暴れるから投薬が欠かせないそうで。」

アキラ達とほがらかにジャレてた顔がくもる。

「そうかあ〜統合失調症って薬がキツいらしいしね。

治るとかあるのかな?」有間はあまり詳しくないので

当たり障りなく聞いたつもりだが、

ヒミコの顔が険しくなる。

「人が死んでる訳ですしね。殺人教唆はしっかりと犯罪ですし!

もし治ったら、ちゃんと罪を償って欲しいと思ってます。」

ヒミコは許せていないのだ。

姉妹だからこそ!

レイプは許せない。

が、殺人はもっと許せない。

言霊(ことだま)なら仕方ないが、思わず口に出る事もあるだろう。

が、それをネットで流すのは許されない!

形として残り、人に見せるのは絶対ダメだ!

兄弟姉妹だからこそ!

許せないのだ。


「確かにそうだね~

いつか元気になって法廷に立てたら良いね。」と有間は変な笑顔になってしまった。

「お子さんを亡くされた方もいますし、酷い(むごい)死に様だったようで…

実行犯は皆捕まり刑に服してします。

市子だけ無罪放免とは虫が良すぎますよ。」ヒミコは微笑む。

「僕が身体を焼いた時、我が身を焼かれる痛みを味わってるよ、市子。

あまり責めないであげなよ。」

アキラがヒミコに言い聞かせるように話す。

アキラには、ヒミコの心の奥底の冷えた気持ちが見えてるのかもしれない。

『今度、人に害なす時は私が印籠いんろう)を渡す』

それがヒミコなりの市子への姉としてやれる事だと覚悟しているのだ。

「平安から武士の世界へ変わる時にこの京都で、骨肉の争いがあったんだよ。

息子を愛せない父親、父親を愛せない息子、兄を弟が、弟が兄をお互いを憎み争った。

巻き込まれた沢山の人間が殺された。

まあ、昔から変わらないし進化しないんだよね〜人間。

まあ、僕もおじさんに殺されかけたしね〜」

有間も過去を思いだし苦笑いした。

「そうなんですか?」ヒミコが驚く。

「ニュータウンの用地を売って金儲けしたいおじさんが、

実の弟殺して僕も殺そうとしたんだよ。

入鹿さんのアイデアなかったら、今ごろまだ争ってて

僕殺されてたかも?」有間が自分の首を絞めるゼスチャーをして笑う。

「悪趣味だな。気にすんなよ。」日頃は仲の悪いアキラが気をつかってくれる。

「うん、ありがと」ヒミコが笑った。

自分家だけじゃないんだ。

昔から日本人は、家族で殺し合いしてたのか?

市子に本気で殺されそうになったあの日から冷えて凍った部分が癒される。


物語やこの世は美辞麗句に溢れてる。

でも実際は、戦争があり遺産相続があり人は毎日死んでいく。

ヒミコは市子のために止めようとした。

市子がこれ以上罪を犯さないために。

が、そんなの市子に届かなかった。

小さい時から大事に可愛がってきた。

それを市子も分かってくれてると…

でも市子には、そんな私の気持ちより世間にどう思われるか?が大事。

自分の欲望の邪魔者でしか無かった。

ただの障害物の1個。

あの日、それを思い知らされた。

アキラが助けてくれなかったら殺されてた。

「あの子がまた人を呪い殺めようとするなら、私があの子を止める。」

そう心に誓っている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ