村
アルフィムは人里らしき集落を
遠目で確認するとスキル【神速】を発動した。
アルフィムの駆け足は猛烈なまでの速さであった。
アルフィムは足を止めた。
(・・・村じゃ、ないかもしれない。)
アルフィムが村だと思った建物は
農民が暮らすような雰囲気ではなかった。
無機質な木造の長屋が複数、確認できた。
民家らしき建物もいくらかは建ってはいたが
物見櫓や丸太で作られた高い壁。
武装した兵士らしき集団も10人ほど見えた。
兵士たちは、なにやら物々しい雰囲気であった。
アルフィムは首をひねって考えた。
(あれぇ~?
建物や外観の雰囲気は軍の駐屯地っぽいなぁ。
でも、この辺りは国境からも遠いよな。
紛争地域とかではないはずだけど。
ああ。モンスター対策かもしれん。
森やら山が近くにあるから
怪物とか出没する地域だもんな。)
アルフィムは厄介事には
関わりたくないという気持ちはある。
しかし、人恋しさや、好奇心という気持ちに負けて
心なしか早足で駐屯地らしい集落へ向かった。
(宿屋は無いかもなぁ。
駐屯地にしては
民家っぽい建物がそれなりに建ってるな。
期待は薄いけれど宿屋があるかもしれない。)
集落の門前にいた一人の兵士に
アルフィムはゆっくりと歩み寄った。
「こんにちは。あ。
もう、そろそろこんばんは。かな。」
兵士はギョッとした表情を見せた。
「お、おう、おまえ・・・冒険者か!?
ここに何か用事でもあるのか? 」
「はい。」と、兵士にアルフィムは返事をした。
「実は俺はこういう職業をしています。
格好は冒険者っぽいですが、なにぶん長旅なので。」
アルフィムは自分の首にかかったペンダントの飾りを
右手に持って、兵士の目の前に掲げて見せた。
十二芒星を象ったペンダントトップだった。
「へぇ~。
十二芒星ってことは神教のシンボルか。
あんた、聖職者なんだな。
そうか、この村の教会に用事があるんだな。」
兵士は納得した様子を見せた。
「教会なら、あの建物だ。」
兵士は、とんがり屋根の背の高い建物を指さした。
兵士にアルフィムは頭を下げた。
「ありがとうございます。
では、教会に向かおうと思います。
あのぉ。今夜は宿を取りたいのですが
この村に宿屋はありますか? 」
「おう、一応はある。
しかし、この村の宿ってのは
冒険者用の宿泊施設だから
一般人が泊めてもらえるかはわからない。
でも、空き部屋を
遊ばせとくのは、もったいないから
今夜、空き部屋があるなら
泊めてくれるんじゃないかな。」
「そうですか。
先に宿屋に向かった方がよいですね。」
「その方がいいか。
部屋が空いているといいな。
宿屋は、すぐそこのあの建物だ。」
兵士はすぐ近くにある建物を指さした。
「親切にして頂きありがとうございます。
では、これにて失礼いたします。
あなたに神の御加護があらんことを。」
そう言ってアルフィムは立ち去ろうとすると
兵士は悩むような表情を浮かべた。
アルフィムは兵士のその様子が気になった。
「何か、不安なことでもあるのですか? 」
兵士は首を縦に振った。
「いやな・・・。
今夜は宿に泊まらずに
教会の用事が済んだらすぐこの村から
去った方がいいと思ってな。
先ほど、村から比較的に近い場所で
骸骨兵が複数体で移動しているのが目撃された。
村に比較的に近い場所だったらしいから
もしかしたら、この村を襲うかもしれん。
万が一に備え、防戦の準備を
先ほどからおこなっている最中なんだ。
しかし、あんたはこの村の人間じゃない。
村に残れば危険に巻き込まれる可能性がある。
部外者がわざわざリスクを冒す必要もないだろう。」