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嫉妬の王子様






「痛てて・・・」

 今は学校の屋上に来ている。


「我慢してください」

 ニーナが殴られた頬を手当てしてくれた。


「少し優しめにしてほしい・・・」


「かなり優しく手当てしましたよ」

 言葉に少し冷たさを感じる。


「ニーナもしかして怒ってる?」


「怒ってないですよ、学校始まる前に朝から喧嘩しちゃう王子様だからって」

 顔は笑っているけど目は笑っていない。

 それにいつものような優しい声じゃなく、力がこもった力んでいるような声。

 彼女は絶対に怒っている。


「ごめんニーナ。あれにはちゃんと理由があって・・・」


「ナルカが先に絡んできたんですよね?」


「え、どうしてわかったの?」

 もしかして一部始終を見ていたのだろうか。


「あいつはそういうやつですから」

 見たっていうよりかはナルカの人となりを知ってての発言って感じだ。

 少し心がモヤモヤする。


「あいつが例の"お見合い相手"だよね」


「物凄く気に入らないことですがその1人ですね」


「やっぱり顔だけはいいよねあいつ」

 僕はそう思わないけどクラスメイトの人とかはみんなそう言っているため、本当のことではあるんだろう。


「そうですね。"顔"だけはいいですよね」

 顔だけを強調する。

 これはたぶん彼女はあいつの顔も嫌いだ。

 僕の頬が少し上がる。


「顔も嫌いそうだね」


「あんなやつは顔以前に考えたくもないです。急に頬を触ろうとしてくるし」

 考えたくもないのは同意だ。あのゲス野郎は去年僕のクラスメイトに酷いことをした。

 僕にもたくさんちょっかいをかけてきたし。

 あいつは死んだ方いいくそみたいなやつだ。

 それにさっきはニーナの頬を触ろうと・・・。

 しかも"未来の旦那"だとかなんとか言ってたし。

 怒りが溢れてきている僕をニーナがじっと見る。

 

「え、もしかしてなんですけど」


「何?」

 少し怒気がこもった声で言ってしまった。


「その顔嫉妬してますか?」

 天使のような微笑みで言ってきた。

 僕はその言葉を聞いて心の中から怒り以外の何かが溢れでるのを感じた。


「ニーナは僕のだから」

 その瞬間彼女に思いっきり抱きついた。

 あいつのことでイライラとモヤモヤが生まれていたからだろう。

 これは彼女に対する独占欲なのかな。


「誰が何と言おうと、何をしようと僕のだよ」

 思っていることを紡ぐ。

 心の中にあるニーナを想う気持ちが、僕の行動を、言動をいつも変えてしまう。


「何か酷いことを言われましたか?」

 女神のような声で囁きかけてくれる。


「うーん。考えたくもない」

 あんなやつを彼女とハグしている時に思い出したくない。


「じゃあなんで頬を殴られたんですか?」


「わかんない」


「ふふふ。王子らしいですね」

 綺麗に微笑むニーナ。


「さっきからそれやめてほしい」


「え、何をですか?」


「その、敬語みたいなやつ。2人きりの時はそういうのしなくても大丈夫だから」

 さっきから感じていた違和感を言う。


「すいません。学校だとつい癖で敬語にしてしまうんです」

 そう言って苦笑いを浮かべる彼女は普段の綺麗さとは違う可愛さがでていた。


「こういう感じでいいレイ?」

 少し照れくさそうに言う。


「なんか無理してる感があるね」


「そんなこと言わないでよ〜」

 そう言って笑うニーナ。

 彼女のこういう笑顔にいつも救われているんだ。


「ナルカや"あいつ"と何かあったとしても最後は僕のところに戻ってきてよ?」

 ニーナは僕のだと言いつつ、弱気なことを言ってしまった。弱いところを見せないといいつつ、弱気なところを見せてしまった。


「心配してるの?」


「それはもう、たくさん心配してる」

 こんなに綺麗で可愛くて素敵な彼女なんだ。多くの男は彼女を一目見ただけで惚れてしまう。


「安心して、私の中ではずっと、いつまでもレイが1番だから」

 僕の腰に腕を回し、耳元でささやく様に言ってくる。

 僕も彼女を抱きしめる力を強め、彼女の存在を確かめるように腰や背中あたりをさすった。

 幸せな時間。

 至福の時間。



 けど、この後に言われた言葉でその時間は終わってしまう。














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