ニーナと仲直り
私立ドライアド学園。
僕が住んでいるセントリアン王国。
ニーナが住んでいるニブル王国。
ナルカが住んでいるテスレフトホール王国
シュルテンが住んでいるステリアライト王国。
この4国の丁度中心にある高等学校だ。
理念は切磋琢磨と一騎当千。
簡単にいうと、一緒に成長しながらとんでもなく強い人になろうっていうことだ。
誰でも通うことができる学校だからこそ、入学するのはかなりの至難。
学力、知力、体力、機転力、精神力。
そして、運命力。
多くの力が一定水準以上ないと入学できない。
そんな学校に通っている。
「楽しかったです」
フランとサボりを終えて学校に帰ってきた。
今はまだ授業中だから屋上にいる。
「それは良かった。これからも定期的に一緒にサボる?」
「それも悪くないですね。けど、レイ様みたいにサボりすぎるとお城の人に怒られてしまうので私は厳しいかもしれません」
少し悩みながらも断られた。
「でも、レイ様がどうしてもって言うなら私は従者なので一緒にサボるしかないですね」
意地悪そうに言う。
あくまで僕が決めること。そう、彼女は言ってくるが本当の意味は違うだろう。
僕が誘ったことにすれば、彼女は悪くなく僕の責任になる。
側から見たら主のわがままに付き従う従者だから。
「フラン策士だね」
「そうですか?」
そんなことありませんと言うような表情をする彼女。
「まあでも、サボる時はいくらでも僕のせいにしてくれていいよ」
「えーっと、それってどういうことですか?」
言っていることを理解できていないのか説明を求めている。
「どういうことって言われても、フランがサボることを心配してる理由って王国の人に怒られるからでしょ?だから、僕がサボることの理由になれば僕のせいだから怒られなくて済む。そういうことだよね?」
困惑した表情になる彼女。
あれ、もしかして僕の解釈が間違っているのか?
「なるほど、そういうことですね。ほんとレイ様ってニーナ様以外のことになると鈍いです」
怒った顔をする。
「やっぱり僕なにか勘違いしてる?」
「そういうのは自分で気づけるようになった方がいいですよ〜」
そう言って一歩前に出て歩く彼女。
表情はよく見えないけど怒っている訳ではないのだろうか。
「それでニーナ様との集合時間はいつなんですか?」
前までしていた会話からの切り替えがかなり早い。
「もうそろそろで授業が終わるから大体10分後ぐらい?」
「どこで集合予定なんですか?」
「屋上」
ニーナと集合する時は基本的に屋上だ。
「わかりました。なら、私はいない方がいいですね」
「居てもいいと思うけど」
信頼のおける彼女だ。それはニーナも変わらない。
「せっかくの王子と王女の水入らずの時間ですもの。私は遠慮させていただきます」
断りをいれられた。
「私にもこの後少々予定がありますので」
この後の予定。
それだけ言うと何か気になる。
彼女が友達と会う。遊ぶとかなら全然良いのだ。
でも、どんな予定か言わない感じが気がかりだ。
「どんな予定なの?」
気になったので聞いてみることにした。
「それは秘密です。けど、後々わかると思いますよ」
そう言って彼女は屋上から出ていった。
ニーナが来るまでの間屋上のベンチで寝転がることにした。
ナルカとシュルテンを倒すと決めたは良いものの何で倒せばいいのだろうか。
単純に殴り合いで勝ったことでそれは倒したといえるのだろうか。
何かもっと倒したことが"明確"になるようなものがあってほしい。
「そんな都合よくあるわけないか」
考えても今は出てこない。
そもそも倒したとしてそれで父親はニーナとの結婚を認めてくれるのかもわからないため、考えるだけ無駄かもしれない。
「めんどくさー」
王子ってやっぱりめんどくさいな。
けど、覚悟決めたんだやるしかない。
「お待たせ」
屋上のドアが開く。
美しい金色の髪が風に靡きながらこちらの方を見る。
今日の朝僕が怒らせてしまった人物がそこにいた。
「全然待ってないよ今きたところだから」
寝転がっていたベンチから立ち上がり彼女の方を見ると、その瞬間彼女は走ってきて僕の胸に飛び込んだ。
「今朝はごめんね」
優しくいつも聞き慣れた声が今は何倍にも、何十倍にも嬉しく感じる。
「僕の方こそごめん」
意地やプライドで君に酷いことをした。
「ううん、違うよ。私が言う必要のないことを言ったから」
弱気な声になる彼女。
「そんなことないよ」
感情の赴くままに行動していた。いつもならもっと考えて行動できるはずなのに。
「私さ、ナルカ以外にももう1人結婚の可能性がある人ができて。いや、今はその人が1番結婚する確率が高くてそれで」
大変な目にあってるのは彼女も一緒。
道具の用な扱いを僕と同じように父親から受けているんだ。
「シュルテンだろ?」
「なんで知ってるの?」
驚いた表情をする彼女。
「あいつが直接僕に言いにきた」
「そんなことする人なんだ」
軽蔑してる表情で言う。
「あいつとは前から知り合い?」
「物凄ーく嫌だけど同じクラスなの。しかも1年生の時から」
嫌悪感がかなり感じられる表情で言う。
「あんなやつ去年いたっけ?」
「去年の途中から入学してきたの。しかも登校している日もかなり少なかったからあんまり去年いるイメージがないかも」
「だよね。あんなやつ去年からいたら流石に覚えてる」
それぐらい強烈で嫌なやつだ。
「確認なんだけどあいつと結婚する気ってある?」
絶対ないとはわかりつつも万が一があるため聞いてみた。
そうすると彼女は下を向いた。
表情が見えないため、顔を動かして頑張って見ようとすると抱きしめられていた力がかなり強くなった。
「痛っ!?」
腰の骨が折れてしまうんじゃないかというほどに強く抱きしめられた。
「そんなわかりきってること質問しないで」
彼女が上を向いてくれたが、その顔はかなり怒っていた。
「すいません・・・。あの、できるだけ力を抜いてもらえないでしょうか?」
これはなかなかに痛い。
さっきフランに殴られたお腹もまだ少し痛んでいる。
「あんな奴ら絶対嫌だ。結婚するのは絶対レイがいい」
彼女が普段なかなかしない名前の呼び捨てに、背中やお腹の痛みはなくなりかなりドキドキする。
少し弱っている声で、暗い表情の彼女。
そんな彼女に何を言ってあげられるだろうか。
「ねぇ、ニーナ。僕の想いを言ってもいい?」
彼女は静かに頷いた。
「今まではめんどくさいことはしたくなかったし、王子の自覚なんて持ちたくもなかった」
自然に赴くままに自由に生きたかったから。
強いことを隠して弱いままいられればいい、そう思ってた。
「けどね、ナルカとシュルテンの件。それ以外にも親達の件。たくさん乗り越えないといけない壁がある」
今までは意識をしていなかった。
けど、乗り越えないといけないたくさんの壁が僕にはある。
「全てはニーナのため。そして、僕の王国の人々のため。僕自身としても、王子としても絶対に乗り越えないといけない」
これは覚悟。
僕自身が王子として突き進むために必要なことだ。
「だから、隣で見ててほしい。良いことも嫌なこともあるかもしれない。けど、最後は絶対に君を幸せにするから」
ニーナに伝えた本気の想い。
彼女がどう思うか正直不安だ。
けど、これが僕の想いで覚悟なんだ。
それだけは知ってほしかった。
抱きしめている彼女の表情を見ると、顔が赤くなっていて、目には少し涙も浮かべていた。
でも、笑いながら僕のことを見つめている。
「うん、わかりました。レイ様がレイとして、王子様が王子としていられるように隣に居続けます」
眼を閉じ一瞬息を吸う。
「幸せな景色を見せてくださいね」
「うん。約束する」
ニーナと幸せな未来に向けて誓いあった。