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サボり方






 たくさん考えないといけないことがある。

 けど、その前にリフレッシュもかなて。

「ボーリング行こうよ」

 彼女に言う。


「良いんですか?たくさん考えることがあるのに・・・」

 少し俯きながら言う彼女。


「それが今日の目的じゃん。フランにサボり方を教えるっていう」

 考えなきゃいけないことが多いからこそ、一回頭をスッキリさせたい。


「フランが嫌なら別に行かなくていいよ」

 フランが決めていいよというふうに言う。

 そう言うと彼女は顔を上げ口を開く。


「嫌じゃないですよ。むしろレイ様を倒すことに燃えてきました」

 さっきの言葉は彼女の闘志を上げたらしい。

 目が燃えているように感じる。

 

「やったこともないのに僕に勝てるんだ。流石生粋のメイド様。なんでもできるんだね」

 その彼女の想いに対して揶揄うように言う。


「はい、その通りです。それに、レイ様のお世話はいつも私が行ってきたんです。ボーリングでもお世話してあげます」

 微笑みながらかなり毒のあることを言う。

 実際部屋の掃除とか、雑務をやってもらうなどお世話をしてもらっているといえばしてもらっている。


「わかった。じゃあ負かしてみてよ」

 彼女の言葉に対して挑発するように返した。


「もちろんです」

 少し怖い顔で言ってきた。




 ボーリング場


「嘘でしょ」


「やりました!!」

 彼女が初めてとはとても思えない5回連続ストライクを決めたこともあり、スコアは200対149で負けた。

 

「フランってボーリングこんな得意なんだね。もしかしてやってた?」


「今日初めてやりました。けど、日頃から狙ったものを仕留める訓練はやってたのでその影響かもしれません」

 仕留める訓練ってなんだ。

 しかもそれでボーリングって上手くなるのか?

 いろいろ気になることはあるけど負けは負けだ。


「本当に負かされるとは思ってなかった」


「まだまだ、負けないですよ。レイ"お坊ちゃま"には」

 意地悪そうに言ってきた。

 今のは少しだけムカっときた。

 そこであることを思いつく。

 

「なんか、今のムカつく」

 フランの方に寄っていく。


「えっ、ちょ、レイ様!?」

 肩を掴み、ボーリングのレーンから離れたところにあるソファーに軽く押し倒した。


「他にもお客さんいるんですよ///」

 顔を赤く染め慌てて言ってくる。


「でも、少ないから大丈夫」


「え、それでも、その・・・///」

 どんどん口をモゴモゴと籠らせる。

 そして、何故か目を閉じた。


「なんで目を閉じるの?」


「え、だってそれは普通では?」


「普通じゃないでしょ」


「普通じゃないんですか!?!?」

 焦って手を顔の前で振る彼女。


「それにいつまで寝てるの?」

 そんなに寝てるのが気持ち良かったのだろうか。


「だって、レイ様がその・・・」

 ゴニョゴニョと言いながらまた顔を赤く染める。


「なんのこと言ってるかわからないけど、僕はボーリング場のソファーの気持ちよさを知ってもらおうと思っただけだよ」

 何故かボーリング場の順番を待っている時に座るソファーは気持ちいい。

 初めてきた彼女にはそれを味わってもらいたかった。

 けど、言い忘れていた上に負けてしまい少しムカついたため、彼女を押して強引に味わってもらうことにした。

 でも、彼女は嬉しかったのか顔を赤く染めていたし、思いのほかいい気分を味わっていたように思える。


 いい気分を味わってもらって良かったと思っていると、彼女の表情から明るさは消え徐々に暗くなっていった。


「それ本気で言ってますか?」

 かなりの形相で見つめてくる。


「ソファーならボーリングをしている間も待っている時に座りましたよ?」

 ソファーから起き上がり、座っていたところを指差す。


「でも、ほら、寝たらよりソファーの感触を味わえるというか、その・・・」

 かなり怖いオーラを感じる。

 目が澄んでて、顔は一切笑っていない。

 獲物をやる前のハンターのような冷酷な表情だ。


「なるほど。レイ様ソファーの気持ち良さを教えていただきありがとうございました」

 そう言って一瞬笑う彼女。


「うん」

 恐る恐る返事をしたその瞬間、お腹に物凄い衝撃が訪れた。


「ぐはっ!!」

 目に見えないスピードのパンチで殴られた。

 お腹に力を入れておらず、威力が消されずにそのままの威力でお腹に入ったため、とんでもないダメージを負った。


「お会計払ってきますね」

 荷物を整理して、会計に向かう彼女。


「あ、あの、それはありがたいんですけど。なぜ、僕は殴られたんでしょうか?」

 全然痛みは引いていない。


「すいません。蚊がいたので、一刻も早く退治せねばと思いまして」

 なるほどね。

 なんてなる訳がない。

 仮に本当だったとしてもここまでやるのかな。

 そもそも蚊はまだ夏前なんだからいない気がする。


「そ、そうなんだね。それなら仕方ない」

 けど、今の彼女に対してそんなことは言えないため笑いながら納得したような言葉を言う。


 お腹の痛みはぜんぜんとれていない。

 彼女はお会計に向かっていて、置いていかれる。


「一応僕王子なんだけどな」

 今だかつて、メイドに腹パンをされた王子がいるのだろうか。

 そんなことをするような関係性の王子とメイドはいるのだろうか。

 今まで、僕とフランのことを主従関係と思ったことはないけど、腹パンをするような関係だとも思ったことがない。


「フランにはお世話になっているし腹パンされたことはいい。けど、何故腹パンをしたのかは知りたい」

 めちゃくちゃ痛くて、きついけど。

 今知りたいのは今まで腹パンどころか暴力を僕にしたこともない彼女が何故したのか。

 会計を終え、彼女が帰ってきた。


「王子。行きますよ」

 そう言って肩を貸してくれた。


「聞きたいことがあるんですけど、まずその王子って呼び方。怒ってる時に言う呼び名ですよね?」

 昔から機嫌が悪い時は名前ではなく王子呼びだった。


「そうでしたか?」

 あ、これは確実に怒っている。

 答えてくれなそうだし、聞いてもいけなさそうだけど、聞くしかない。


「何故腹パンをしたのですか?」

 彼女の目を恐る恐る見る。


「・・・」

 返事がない。これ、本当に怒っているやつだ。


「もし何かしてたのならごめん」

 軽く頭を下げた。

 そうすると、彼女はこちらを向いた。


「ニーナ様にはしちゃダメですよ」

 怒りをあまり感じない冷静な表情で言う。


「腹パンを?」

 すいません。少しふざけました。

 冷静な表情じゃなく怒りの表情に戻る彼女。

 睨む目力がかなり強い。


「ニーナ様のために喝を入れておいたんです」

 少し笑顔になりこちらを向いてきた。


「よくわかんないけど、ニーナのためならありがたく受け取るよ」

 本当になんで腹パンをされたかはわかんない。でも、ニーナのためなら仕方ない。

 思ったよりかなり痛いからそう思うしかない。

 今は少しだけど痛みも引いたし、フランとの次の約束の場所に向けて切り替えることにする。


「じゃあゲーセンに行こっか」

 肩を借りずに自分で歩けるようにはなったが、先導できるほど今は力もないためゆっくりと歩いてゲーセンに向かった。














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