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強いのってめんどくさいから、弱ければいいと思っていた・・・。










                    プロローグ  




 







 セントリアン王国、そこが僕の住んでいる王国の名前だ。


「入れ」

 扉を開き王様の部屋に入る。


「父さんなんか用?」

 その瞬間顔を殴られた。


「何故私からこんな息子が生まれたのかがわからん」

 身長200cmはあるであろう巨漢(きょかん)の父さんが、倒れている僕を見下ろしてくる。


「お前は何故"兄"と違って出来損ないなんだ!」

 倒れている僕に蹴りと怒号をたくさん浴びせてくる。

 何回も何回も蹴られ、意識を失いかけた辺りで蹴りが止まる。


「お前にもし許嫁がいなかったらとっくに殺している」

 とても息子に対する言葉とは思えない程冷たく言い放つ。


「だが、こんな使えなくて、価値もない、生きる資格もないクズでも利用できるからな」

 部屋の外に投げ出される。


「せいぜいくたばるなよ、"レイ"」





 たくさん蹴られて意識が朦朧(もうろう)としているが、周りに執事やメイド、城の兵士達がいるのがわかった。


「本当に無様な姿ですね王子」


「お兄様とはえらい違いだ」


「こんな弱々しい王子。王国の恥晒しだわ」

 たくさんの罵声を浴びせられる。


「国王様が来る前に早く医務室に運びましょ」


「機嫌を悪くされては困るからな」


「けど、こんな王子を手当てする必要があるか?」


「必要はありますよ。だって、生きててもらわないと王女様と結婚ができないではありませんか」


「そうだぞ。利用価値がなくなる」

 僕は道具としか見られていないらしい。

 王子なのに酷い言われようだ。


「だとしても・・・、こんな王子()()()()()()()良かったな」

 その言葉を聞いたあと、意識が保てなくなりそのまま眠りに落ちた。


 僕はこの王国で出来損ないの王子扱いをされている。

 だから、将来を担う王として全く期待されていない。

 学園のテストは赤点ギリギリ。

 運動も全くできない。

 2つとも、王子とは思えない成績だ。

 父さんにも、母さんにも、お城の人にも嫌われている。

 

 そんな、嫌われている僕が初めて弱いやつ扱いをされたのは6歳ぐらいの時。

 初等部に入学してからだ。

 0点のテストを見せて、クラスでも1番足が遅いことを言った。

 そしたら殴られた。

 ひたすらに殴られた。


 その時から、定期的に暴力を振るわれるようになる。


 僕が歳を重ねる度に暴力の強さと、頻度(ひんど)は増える。

 そして、城の人達にも段々と嫌われはじめる。


 だけど、これは別に嫌なわけではない。

 だって、()()()()()()その道を選んでいるから。


 僕からしてみたら、強いとか、かっこいいとか正直めんどくさい。

 強くなればなるほど、かっこよくなればなるほど、周りの人に期待や憧れを抱かれていつまでも成長し続けなければならないから。

 そのめんどくささを10歳離れた兄さんから教わった。

 この国で()()()()()()の天才と言われ周囲から期待され続けた兄さん。

 小さい時から強くなるために勉強も運動も鍛錬(たんれん)も行ない、たくさんの努力をしていた。

 その結果兄さんはかなり強く、かっこよくなり期待に応えた。

 けど、周囲からの期待は止まることがなく、強くなっても強くなっても、かっこよくなってもかっこよくなっても、成長しても成長しても、同じように期待され続ける。

 なのに、何も褒めてもらえなければ、感心もされない。

 なぜなら、強くなり成長することが周りからしたら当たり前だから。

 期待に応え続けることが当然だから。

 城にいる人、家族である父と母も兄さん”自身”を見なかった。

 兄さんの力を見ていた。


 期待をされ続けた結果、兄さんはどんなに強くなろうとも、期待され続ける"強さ"というものが怖くなり、どんどん弱っていった。

 そうすると強さは止まり、成長も止まる。

 けど周りの人達はその事実を受け入れないため期待し続け、無理矢理強くなり続けさせようとする。


 その結果、兄さんの心は壊れた。

 強さに怯え、弱さにも怯え、生きてるのがやっとという姿になった。

 僕が見た、強くなってく、強いというものの先。

 期待は人を強くするけど、最後は人を壊す。

 そんな姿を見て、僕は最初から強さを求めず、期待もされない、弱いままでいようと思った。

 だから、物心ついた時から弱い自分を演じようと思った。

 強いのってやっぱりめんどくさすきる。

 周囲から弱いと思われている方がマシだ。

 暴力や暴言を浴びせられようとも期待をされないから邪魔者あつかい。

 それだったら注目されないため、誰にも見られずに済む。

 最初は確かに嫌だったけど、慣れれば平気になるし、何より期待され続ける方が圧倒的に嫌だ。


 それに、中等部2、3年生になる頃には暴力の数も減った。

 僕に対する期待というものが全くなくなったからだろう。

 さっき受けた暴力だって父さんが気晴らしするための暴力だ。

 暴力を受けたのだって数ヶ月ぶりだった。


 僕が長年弱さを演じてきたことの勝利といってもいい。




 けどね、聞いて欲しいのは"弱さを演じて"きたってこと。









 つまりね、





 本当は、、、






 兄さんを遥かに越すぐらいかなり強い。

 数万年に一度の逸材(いつざい)ってやつです。





















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