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11話 偽物の正体と二度目の過去渡り

 あれから数日後。私はティナに頼んだ自白薬を受け取り、偽シアンに飲ませていた。


 「さて、今日こそあなたの依頼者について教えてもらうわ」


 「なるほど、さっき飲まされた水は自白薬か。だがこの私はそんな薬に屈しな――ロー様に命令されました!」


 即堕ちしたわね、こいつ。忠誠心も薬には勝てないってことなのかしら。


 「フィン、後は分かるわね」


 「ええ、証拠は魔法で録音しました。後は奴をじっくり尋問するだけです」


 フィンはいやみったらしい笑顔を浮かべる。私も同じような顔をしていたらしく、偽シアンがこちらを睨んできた。


 「それで、本物のシアンはどこに行ったの?」


 「ああ、殺したよ。他の従者と同じようにな」


 偽シアンは当然のように答える。人を殺したというのになんとも思っていないようだ。


 「なるほど。それじゃ最後に一つ聞かせて。あなたの本名は?」


 「レイだ」


 なるほど、あのレイか。ローの側近だったかな。

  

 「分かった、それじゃあまたね」

  

 私は偽シアンから背を向けると、扉を開けて出ていく。そして、過去渡りを使用した。


 「さてと、周りで人が死ぬのは気分が悪いからね。さっさと片付けてしまいましょう!」


 私は過去渡りを使用し、偽シアンことレイに襲撃された日の昼間まで来ていた。場所はもちろん私のベッドだ。


 「……その様子、過去渡りでやってきたのですか?」


 「相変わらず話が早くて助かるわ。まず状況を説明するわね」 


 私はフィンのそばまで行くと、先程レイから聞いた情報を話す。フィンは聞いているうちに顔が険しくなっていった。


 「状況は理解しました。サンドラお嬢様はシアン様達を助けたいのですね?」


 「うん。だからシアン達に会わないといけないんだけど、どこにいるか分かる?」


 「そうですねぇ……分かりませんが、この時間なら庭の掃除をしていると思うので適当に歩いていれば会えますよ」 


 そうか、今はティナが部屋に引きこもってる時間か。それならたしかに掃除でもしてそうだな。シアンの掃除担当はたしか西だったはず。そこに行けば会えるかしら?


 「ありがとうフィン。シアンに会いにいくからついてきて。話には加わらないで周囲を警戒しておいて」


 私はフィンを連れて庭の西方面に向かう。


 庭にはやはりシアンがいたが、どうやら他の従者も集まって何か話しているようだ。


 「やっぱり皆さん呼び出されたのですね。一体なんのためでしょうか?」


 「さあ。まあティナ様のことですし……」


 私は彼女達の会話を聞いてみたところ、何者かに呼び出されたらしい。


 私は彼女達の集まりに参加し、話しかける。

  

 「どうも皆さん。お困りのようですが、大丈夫ですか?」

 

 「サ、サンドラ様!? その……ティナ様に呼ばれて来たのですが、本人が来ないのですよ」


 なるほど、さっき聞いたのと大体同じ内容だな。


 しかし、ティナがこんな場所に人を集めるとは思えない。おそらくこれは偽の伝達なのだろう。


 そして偽の伝達を出したのは偽物のティナ、つまりレイだろう。そうして従者を集めたところで一網打尽といったところか。


 元々ティナの従者は非戦闘員ばかりだ。そこに私達も食らったあの爆発魔法を食らえばひとたまりもない。


 「ああ、そうなんですか。よろしければ、ティナ本人を呼びましょうか?」


 「え、良いのですか!? 下手したら激怒されません!?」


 「大丈夫です、なんとかしてみせます。それではまた」


 私はそう言って集まりから離れる。フィンは私に言われた通り、周囲の警戒を怠らなかった。


 「フィン、私はティナに事情を説明してくる。フィンは引き続きここで周りを警戒しておいて。頼んだよ」


 「ええ。必ず彼彼女らを守り抜いてみせます!」


 私はフィンと別れを告げると、二階に行きティナの部屋へと押し入った。


 ティナの部屋は私の実験室のようになっていた。棚には見たこともない薬が入ったフラスコが置いてある。


 私はベッド付近に薬を置くのはいかがなものかと思いつつ、私は部屋の奥へと進む。


 ティナの部屋には奥にもドアがあって、その向こうには実験室がある。彼女はそこにいるはずだが、ドアには鍵がかかっていた。


 「悪いわねティナ。緊急事態だから無理矢理開けさせてもらうわよ」


 「バーンアウト!」


 私は呪文を唱え、実験室のドアを破壊する。この状況ならマーキング魔法を使う理由はない。


 「きゃ、きゃあ! 誰!? 誰なの!? って……サンドラ!! 今日という今日は許さ――」


 「今それどころじゃない!! 一歩間違えればあなたの従者が死ぬのよ!」


 「は、はあ?」


 ティナは混乱した顔でこちらを睨みつける。とりあえず、話ができるところまでは持ち込めた。

 

 「ローの側近のレイって奴があなたの従者の命を狙ってるの。説明は行きながらするからついてきて」


 私はティナの手を引き、彼女の部屋から出す。そして過去渡りのことは伏せてティナに事情を説明した。


 「事情は分かった。でもあたしに何ができるというの?」


 「今あんたの従者はフィンが守ってる。私達はレイを直接叩くわよ!」


 「それあたしいる?」

 

 「もちろん! 私一人じゃレイを捕らえられるから怪しいから。つまりあなたは人数合わせよ!」


 私はきっぱりと言い切る。場所が分からない以上、予めマーキングすることもできない。


 「……あたしがレイだったらどうするのよ?」


 「それはないわね。さっきの反応は間違いなくティナだったもの。あれは真似できないわ」


 「……なんか癪ね。まあいいわ、レイを探すわよ!」


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