たっ君と水の神様
たっ君は、保育園の年長さん。もう直ぐ一年生になります。それで、三月から自分のお部屋で、一人で寝ることにしました。
でも、ちょっとうまくいかないようです。
《朝の台所》
ママ、ごめんなさい。
どうしたの?
また、やっちゃった。
そう!気にしないで、はやくシャワー浴びて。着替え持ってくるからね。
おふとんは、そのままでいいから!
あっ、お父さん!
おはよう、たくみ!…んん!?ー、元気がないじゃないか!
あ、そっか!、お父さんが今いるってことは、今日はお休みだ!、よかったー。
祝日だよ!保育園もお休みだぞ。はい、もう一度、ごいっしょに?!
・・おはようございます・・
はい、おはようございます、たっくん!
僕、またやっちゃったぁ!
ふ〜ん。シーツに世界地図を描いたんだなぁ。
いや、今日の作品は日本地図だった。
よし、シャワーの後で見に行こうか!、ママはこれからお出掛けするから、朝ごはんはお父さんと食べるんだよ。
うん。分かった!
《たくみの部屋》
どれどれー、なるほど、大きさも形も日本だな!
ねえ、お父さん!どうしたら治るかな〜?
そうだな〜、じつはお父さんも、そんな時があったんだ!
えっ、そうなの?
二人とも、行って来ますよ。出掛けるんだったら、戸じまりと、火の用心、宜しくね!、たくみのおふとんは、かわかないと思うから、たたんで椅子の上に置いておいて!
分かったよ、そうする。いってらっしゃ~い!そうだ、じゃあ、早くおふとんかたづけて、ご飯食べたら、お出掛けするか!?
わー、やったやったー!
《電車の中》
これからどこ行くの?
うん!ヒミツの場所だよ。でも、日本で一番初めにできた、博物館みたいなとこだ。
じゃあ、どこの駅でおりるの?
この次の駅で都電に乗り換えて、荒川区役所前という駅さ!
なあんだ、区役所か!
ブッブ〜!外れです(笑)
きっとその場所に近づいたら、分かるかも知れないなぁー!
ええー!
さあ、降りるよ。ここで都電に乗り換えだ!
《荒川区役所前駅》
大きな公園だね。区役所と反対側だ。
あそこが入口だよ。看板をみてごらん。
漢字が多くてよく分からないけど、水のセンターって書いてある。
そう、よく分かったね。ここが日本で一番古い、水のセンターさ。汚れた水をキレイにするとこだ!
こんなに広いのか。上は公園と、野球のグランド、テニスコートもある。中はどうなってるの?
それをこれから見に行くんだよ。
そっか、早く行こう!
《水のセンターの中》
なんだか古いけど、全部レンガでできている。これを昔の人が作ったんだ。きっと大変だったろうな。
そうだなぁ!でも、そうでもしないと、人がだんだん増えてきて、よごれた水を川や池に流して、病気になることが分かったんだ。
えっ!どんな病気?
コレラやペストという、かかったら死んでしまうような伝染病だ。それと、食中毒もだよ。
ふ〜ん、そうなんだ!
その頃から、いろんな国と交流したり、日本でも人が行ったり来たり、沢山の人や物が動くと、病気があっという間に広がるのさ!
海外から、水をよごれたまま流したら、いけないって情報が入ったんだ。
でも、ここに来た水は、どうするとキレイになるの?、ただ集めただけじゃ、かえって危なくないかなー!
そうだな、それをこれから勉強するんだ。もしかして、たっ君が前にしちゃったやつも、まじってるかもしれないよ(笑)
えっ、マジで!
可能性はゼロではない。でも、もう完全にキレイになっているから、大丈夫さ!
《見学が終わって》
あーやっと終わった!、ちょっと臭いがして、大きなプールにジャブジャブよごれた水が流れて、もし落ちたらどうしようかって、心配になっちゃった!
おじさんの説明は難しくて、あんまり分かんなかったし…。
そっか、じゃあアイスでも買って、上の公園で遊ぶとするか!
やったー!
お父さんのリュックに、お前のグローブとお父さんのグローブが入ってる。もちろんボールもだ!
じゃあ、早く行こう!
《家に帰って》
ただいまー、ママ!
楽しかった?
うん、まあ。でもお父さんと、水のセンターの上の公園で、野球して遊んだんだ!
そう、よかったじゃない(笑)
たくみ!一緒にお風呂に入るぞ。ママ、ご飯はそれからでいいかな?
いいわよ。お風呂もわいてるし、今日はお湯もたっぷりにしたわ!
そうだお父さん、何日かしたら、あそこにお風呂のお湯も、流れて行くんだね!
そうだな。この洗濯物を洗った水も、トイレの水もだよ!
《寝る前》
僕もうねる!、オシッコもしたし、なんだか大丈夫な気がする。
そっか、よかったな!、じつはお父さんも、おじいちゃんから、あそこに連れてってもらってから、しなくなったんだよ。
じゃあ僕もかな?!
そうだな!
そうね、きっと!そうなるわよ。
おやすみ、たくみ!
おやすみなさい!
《翌朝》
おはようございます。お父さん!
なんだ笑って!
大丈夫だったよ!
よかったな!
二人とも、早くご飯食べましょう!
うん、昨日寝てから夢を見たんだ。水の神様に会って、ありがとうございます。これからも宜しくお願いしますって言った。そしたら、神様が笑ってた!
へえー、水の神様にか?!
ほら、二人とも早くしないと、水の神様にしかられるわよ!
はーい。
お父さん。ママはうちの水の神様だね!
確かにな。一番水を大切にして、一番沢山使うからな。優しい神様だよ!
そうそう!
僕は、水を大切にします。
〜〜おわり〜〜
作者 Kazu. Nagasawa