プロローグ
はい、学者さんの方をほったらかしにして新シリーズです。すいません、前の方はいま筆が進んでない状態でして。百文字もまだ書けてない現状なんです。さらにテストも近いので余計に更新できません。
ならこれを書くなよとはツッコまないで下さい。気分転換で何か良い発想が出るかも知れないと思ったんですよ。ホントですよ?
多分来週には学者さんの方も更新できると思いますのでゆっくり待っていて下さい。駄文なので見るのを止めた方もいるかもしれませんが。
では改めて新シリーズです。どうぞ。あ、相変わらず厨二病を鍛えていこうと思ってます。
深い森の奥。フクロウが不気味になく暗い奧地に少年は迷い込んだ。災厄の象徴と言われた黒い髪と目を持つ少年だ。彼は家族から嫌われ、学校の同級生から虐められた。とうとう限界が来た少年は森の中に逃げ込んだのだ。
ひょっとしたら自分を心配して助けに来てくれるかも知れない。ありもしないそんなことを想像して。
結果として少年を捜索しにくることはなかった。少年は村の誰からも見捨てられたのだ。
帰り道が分からなくなった少年は次第に導かれるように森の奥地に入った。
「誰だ?」
「え…あっ…。」
少年は暗くて見づらいが奥の広場で何かが横たわっているのを見た。その何かは全身が黒く、4足歩行の獣の姿をしていた。毛はクルクルと巻き、手入れされていない。臭いも少しキツく、人によっては吐き気を催すほどだ。
異様な姿を見た少年は話しかけられても反応できなかった。そのせいか、その何かの期限が目に見えるように悪くなる。
「誰だと聞いている。食い殺されたいか?」
「え、あの。…ウルドといいます。近くの村から迷い込んできました。」
「…嘘だな?」
「え!?」
異形はすぐに少年が嘘をついていることを知った。長い毛の間から見える二つの眼は紫色に妖しく輝いている。その目を見た少年は底知れない恐怖を感じ、本当のことを自然と口に出していた。
「名前はウルドです。黒い髪と眼のせいで虐められてこの森に入ったら心配くらいはしてくれるかも知れない。そう思って入ったんですが、結局探してもらえなくて、道にも迷ったんです。それだけです。」
「今度は本当らしいな。して、お前には俺がどうみえている?」
「えっと、4足歩行の獣です。それも毛むくじゃらで手入れされていない。臭くて薄汚れた姿です。」
正直に答えなければならないという意識が強すぎ、いらないことまで言ってしまった少年。本当に食べられると覚悟するが、異形は笑い出した。
「アッハッハッハ!俺に向かってそんなことを言うか!面白い奴だ!」
「あと、血の臭いが少し。…もしかして怪我してますか。」
「……そんなことまで分かるのか。まるで犬だな。っておい!どこに行く!?ちっ、逃げられたか。」
異形は悔しそうに舌打ちをした。ようやく美味しそうな人間を見つけたと思った矢先逃げられたのだ。これは空腹で死ぬと思った。
しかし、少年はなぜが帰ってきた。両手に魚と草を大量に抱えて。その姿を見た異形は驚愕に目を見開いた。少年はその様子に気づかず、魚を異形の顔付近に起き、草を近くの岩ですり潰し始めた。
「なにをしている?」
「黙って。今治療薬を作ってるから。魚でも食べて我慢して。」
先程までおどおどとしていた少年の姿からはかけ離れたほど必死の顔で草をすり潰す。まさかの少年の言動につい黙ってしまった異形。施しなどいらない。そう言うまもなく少年は薬草すり潰しきった。
そのすり潰した物をポケットから取り出した瓶に液体と一緒に混ぜる。
「ちょっと痛いけど、我慢してね。」
そう言うやいなや異形が否定するまもなくその液体を傷口にかけた。その上布でゴシゴシと容赦なくこする。痛みになれていた異形とはいえ傷口をこすられる痛みに呻く。
この少年は自分を痛めつけてきた。よって食い殺すべきだ。そう考えた異形は少年を捕食するとばかりに口を開ける。その時、口の中にひんやりした物を入れられた。
「ゴメンね。これあげるから。あとちょっとだから。」
「ぐぅ。」
口に入った物はしっかり咀嚼する。そんな良い子みたいな習性が災いし、少年を食い殺すことは叶わなかった。
そんな空白の時間のうちに少年は傷口に水をかけ、新しい布で水気を拭き取った後に長い包帯で傷口をキツく縛った。少年の年は見た感じ8歳。その姿からは想像できないほど包帯の巻く腕は高く、早かった。
ものの数十秒で包帯を巻き終えた少年は純粋な笑顔を見せて異形に話しかける。
「これで大丈夫!はい!お魚!」
「う、うむ。」
これまで迫害され続けた異形にとってその行為は理解しがたく、あまりにも純粋すぎる目を向けられてたじろぐ。これまで優しくされたことなど一度もなかった。見つかれば人間に攻撃され、身を守るために殺せばさらに人間が増えて襲いかかってきた。
そんなことしかされなかった異形は自分の中に生まれた感情に戸惑う。何ともいえない高揚する感覚。どこにも当てることのできないこの想いは自然と行動に表れた。
「ん?なに?」
「いや、その、なんて言うかありがとな。」
「うん!」
頬を舐めてお礼も言ってしまった。恥ずかしくなり顔をすぐにそらす異形。その姿を見て何が嬉しいのがずっとニコニコし続ける少年。
暗い森という中に似合わない平和な空気が出ていた。
「僕、そろそろ森から出なきゃ。」
「……なぁ、お前は村に戻りたいか?」
「え?」
少年がここから去って行く。その事実に寂しさを感じた異形は少年に質問した。少年は驚いた後、少し考え、そして顔を俯かせた。
その目からは少し涙が零れている。
「戻りたくは…ないよ。家に居ても殴られて、怒られてだから。学校も楽しくない。全然楽しくない。やりたくない悪者にされるし、この前なんか花瓶を割った犯人にされたよ。僕が違うって言っても誰も信じてくれなかった。でも、僕は家に戻らないと生きられないから。」
八歳の少年にしては酷く現実的な言葉が帰ってきた。少年は既に自分が愛されていないこと。でも戻らなければ生きられないこと。そして、自分に助けがないことを理解しているのだ。人間は全て醜い。殺すべき存在。そうとしか見ていなかった異形は少し考えを改めるべきだと思った。
人間の中には例外もいる。この少年のように純粋ゆえに現実を理解して、感情を押し殺す。でも、他の者には相変わらず優しい。そんな人物もいる。そのことを知った異形は続けた。
「全てを投げ出す気はあるか?」
「え?」
「家族も、友達も、村人も全てと縁を切って、自由に過ごす。そのためには俺と契約して貰う必要があるが、そんな勇気が、お前にはあるか?」
「……。勇気はないよ。僕はそんなに勇者みたいに強くないし、逃げ出したし。村人の言葉で何回も泣いた。だから投げ出すことなんてできないよ。でも。」
少年は卑屈だ。自分を弱いと思っている。少年は優しい。その優しさは行き過ぎている。だから今も村人を投げ出すことなんて考えられていない。少年は甘い。村人にやり返しすら考えていない。
しかし、少年は寂しそうにはにかみながら答えた。
「自由に、好きに生きる。そんなことを経験してみたかったかな。」
その表情は諦めたように無気力に包まれて、その言葉は後悔するかのように濡れていた。口元を震わせ、気丈に振る舞う少年。
望んだ答えではなかったが、異形は決めた。
「お前を自由にしてやる。」
「……ホントに?」
「あぁ、手を出してくれ。そう出なければ契約できない。」
「じゃあ、はい。」
異形は軽く舌を噛み、血を口の中に含んだ。そして、その口を少年の手元にもっていき、噛みつく。牙は少年の白い肌を裂き、赤い血肉を突き刺した。
余りの痛みに少年は涙を流す。でも、今度は逃げ出さなかった。鳴き声すらも出さない。目を強くつむり、顔を赤くしながら痛みに耐えている。
しばらくして、少年の血と異形の血が混ざり合い、紅く輝いた。神獣と人間の間でしか結ぶことのできない契約。『血の契約』は一番厳しい契約だ。約束事を破ればお互いに待つのは消滅。魂すらも残らない。そんな契約。
契約を結び終えた一人と一匹はどこか清々しい表情をしていた。
「これからお前の名はリト。リトと名乗れ。」
「リト…リト…。うん!僕の名前はリト!じゃあ、君はリオン!僕の村の言葉で『希望』って意味なんだ!君は僕を自由にしてくれた!だからリオン!」
「ふっ、俺には大層な名だが、ありがたく受け取ろう。」
絶望そのものとまで呼ばれた神獣。名前のない異形はこれから永遠に『リオン』と名乗る。災厄と呼ばれた少年は『リト』。調和を意味する古代語。
リオンとリトはお互いに笑い、一夜を過ごした。その二人の様子を見守るかのように満月が照らしていた。
プロローグでした。一応三人称のつもりで描いてみたのですがどうでしょう?いつも一人称ばかりで練習していたので上手く書けてるかは分かりません。学者さんの一人称と今回の三人称。…どちらもむずかしいものですね。
学者さんの方はテスト勉強しながらちまちま書いていきますので、お待ちください。ありがとうございました。