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すみつき娘  作者: 和林
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Day.7 好きにすれば

『あ。うちが関わるなって言ったの気にしてるのね』


「……見えなくなって、シエルさんが幸せになるなら、いいんだけど」


『んん? 幸せになるって……よくわからない事言うね』


「シエルさんから私が見えなくなれば、リーナさんの事を考えられる時間も増える……私がいる事でシエルさんの一人の時間が減ってるって考えたら……」


『いない方がいいのかなぁ。って??』


「そう……です」


『……ま、好きにしたらどうよっ』




Day.7 好きにすれば




「ここからシエルさんの家まで、どれくらい掛かるの?」


『意外とすぐよ? 歩いて十五分くらい』


「……少し、考えてみる」


『了解。うちは先にパトロールしてくるねーん』


 一緒にいて何もないのならば、今すぐにシエルさんに会いに行きたいと思える。


 けれど……大体私は幽体離脱をしている状態だし、いつ見えなくなってもおかしくはない。


 シルバーコードだって、切れてしまったら……私の生命活動も止まってしまう……。


 生きている人間の中で、私の事が見えるのはシエルさんしかいない。


 ……それなら、大きな影響を及ぼす事だって、ないはずだよね。


「はぁ……シエルさんとリーナさんが、会えるようになれば……」


 私がシエルさんと一緒に過ごしていた理由は、考えても考えてもわからなかった。


 ただ、勢いで……?


 シエルさんが幽体離脱をしている私に興味を持たなければ、こうはならなかったのかな……。


「もう一回、自分に会いに行くか……」


 神ちゃんはパトロールに行くなんて言っていたけど、あの神の事だから。


 ゆっくりと目を瞑って、行きたいところを想像してみる。


 人の心を読む事ができる神ちゃんなら、何かを言わずとも連れて行ってくれる……と、思う。


『神を移動手段に使いやがって〜!』


 どう考えても私に向けて発せられた雄叫びが聞こえた後、私は病室の前にいた。


 結局、連れて来てくれたみたいだ。


「……グチグチ言っておいてこれか」


 謎の悔しさを覚えながら自分のいる病室へ足を踏み入れると、最初に目に入ったのは……サニーだった。


 泣いているわけでもないサニーの姿は、私よりも年上に見えた。


 まるで母親が、私を見守っているかのような……。


 ……床には、五本の赤い薔薇。


 その薔薇達は、精一杯の力を振り絞って咲いているように見えた。


「姉さん……いつまで病院に住みついている気?」


「……早く家に帰ろう……二人でまた、楽しい毎日を過ごそう……」


 サニーはそう言うと、病室を出てしまった。


 五本の、赤い薔薇を残したまま。




『…………ん』


『…………くん』


『……シエルくぅうううううん!!!!!』


「うわっ! え!? 誰っ!?!?」


『嘘でしょ!? うちの事覚えてないとか言わせないからな!』


「あ……ティールか」


『何その期待外れみたいな反応』


「また余計な事でもする気ですか? ボクは一歩も引く気はないけど」


『ちゃんと任務は達成しましたよーだ。フロースちゃんと行ってきたよ』


「もうさ、昔っからその……めんどくさい性格……」


『リーナちゃんと結ばれないからって白薔薇のつ! ぼ! み! を届けさせるなんてね』


「そんなに蕾強調しなくてもいいから」


『……フロースちゃん騙してばっかりじゃん! うち、もうこれ以上手を貸すの耐えられないんだけど?』


「騙してない……全て事実。リーナとボクが結ばれないのも、この家から出られないのも、いつかは見えなくなってしまう事も」


『くぅ……一枚上手か。本当は一人で寂しいでしょう? フロースちゃん、絶対戻ってくると思うよん』


「……戻ってきたら、どうしろって?」


『ボクには見えるよって、言ってあげな。フロースちゃん、純粋すぎるから』


「純粋か……リーナもそうだし、フロースさんも。ティールだけだよ、そんなに大雑把で……神様には見えないの」


『んーでも……フロースちゃんの守護は辞めないよ。シエルくんがダメって言っても、うちはフロースちゃん手放せないからね!』


「わかったよ……守護するのはいいけど、肉体に戻った後にちょっかい掛けるのはなしだよ」


『それはもちろん。二人で仲良く見守っとけば結果オーライでしょ!!』


「え、ボクは嫌なんだけど」


『……フロースちゃん好きじゃないの?』


「そっちじゃなくて、ティールの方」


『……崩壊させようと思えばララヤ地域ごと崩壊させられるんだからね……』


「はいはい……すみません」


『……もう梅雨かぁ』


「今日は大雨警報が出てたから、相当な量降るんじゃないかな」


『……フロースちゃん、大丈夫かなぁ』

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