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すみつき娘  作者: 和林
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Day.5 もう一人のフロース

『まっ、くれぐれも関わりすぎないように!』


 シエルさんから私が見えなくなってしまうのなら……。


 そうなる前に、シエルさんに伝えて、ここから離れた方がいいんだろうか……?


 リーナさんにも、会ってみたいと思っていたし。


 ……例え、リーナさんには私が見えなかったとしても。


「フロースさん、顔が暗いよ」


「……あの、言わなくてはいけない事が」




Day.5 もう一人のフロース




「……どうしたの?」


「神ちゃ……ティールさんから、あんまり外部の人間と関わらない方がいい……って」


「あぁ……見えなくなっちゃうからかな?」


「そうです。……だから、少しだけ……外に出てもいいですか?」


「ボクにそれを決める権利はないから、フロースさんが決めて。ボクは、いつでもここで待ってるから」


「……探検、してきますね」


「うん。行ってらっしゃい!」


 シエルさんは、私を笑顔で送り出してくれたけれど……。


 もしかしたら、この家に戻ってくる日は、来ないかもしれない。


 最後の挨拶くらい、しておけばよかっただろうか……。


「神ちゃん、私がいる病院まで連れて行ってほしいんだけど……」


『……フロースちゃんてさ、シエルくんには敬語だよね??』


「え……うん。だって初対面だったし」


『うちだって初対面なのに! なんでうちだけタメ口なの!? 神様だよ!?!?』


「……敬語の方がいいですか? ティール神」


『なっ、なんで名前……いや、いい。敬語やだ!!』


「とりあえず、病院行かせて……」


『おーけー。はい、目瞑ってて』


 神ちゃんに言われて目を瞑った瞬間、自分のいる時空間が動いた気がした。


 頭をポンと叩かれて目を開けると、目の前にいたのは私自身だった。


『んね? 言った通りでしょ』


「……顔面蒼白? 死んでる……?」


『死んでないってば! 最初に冗談言ったの根に持ってる!?』


「あぁ。そんな事もあったなぁ……」


 広い病室で眠っている私は、まるで赤の他人のように見えた。


 脚や腕、頭には包帯が巻かれており、事故での衝撃が強かったのか、身体中が痛そうだった。


「……あれが、私」


『きっと、一歩ズレてたら病院にすらいなかったかもね』


「事故に遭った事実は覚えてるけど、実際どうなってここまで酷い姿になったのか……衝撃で記憶が飛んでる」


『うんうん。それはね、受け入れるしかないよ。うちだって、神様になりたくてなったわけじゃないし』


「……そうなの!?!?」


『驚くとこそこ? 自分の姿に驚いてたんじゃないの……?』


「神ちゃんは、どうしても神様になりたくて、駄々こねて神様になったんだと思ってた。私の思い込みだった……」


『……ちょっとだけあってる』


「……あってるんだ」


『死んだあとにさ、なーぜか天国に行けたんだけどね。天国に行くための面接で、あなた神様似合うんじゃない? って言われてさぁ』


「天国に行くための面接とかあるの……?」


『あるある〜! 大っきい翼が生えてるお姉さんが、生前の職業とか、家庭環境とか……普通の面接なの』


「へぇ……ちょっと受けてみたい気もする」


『それじゃあ死んじゃうでしょ!!』


「あ、そっか……」


『……どう? 自分見れて落ち着いた??』


「落ち着くどころか驚いた。こんなに複雑骨折みたいな……」


『みたいなって言うか、複雑骨折だけどね』


「はぁ……もういいや。まだまだ期限まで時間あるんだし、今度また見に来る」


『そっか……んじゃ、帰る前に届けに行って欲しいものがあるんだけどさ』


「届けるもの??」


『こーれっ』


 そう言って神ちゃんが差し出してきたのは、白色の薔薇……の、蕾。


「なんで蕾? 咲いてる薔薇じゃないんだ」


『リーナちゃんのとこまで送るから、届けてきてくれる?』


「……また、花言葉か」


『ふふん。まぁね? 教えられないけど』


「別にいいよ……愛してるとかじゃないの?」


『それはー……どうかなぁ』


 この白薔薇の蕾は、これから大きく成長することが出来る。


 綺麗に咲いて、誰かに美しいと愛されて……。


 美しく咲き誇った後の最期だって、儚く散っていける。


 急に死が訪れる事のある人間と違い、薔薇達は余程の事態が起きない限りは……。


 ……これも、嫉妬か何かなのだろうか。


 私自身は死んだわけではないと言うのに、どうしてこんなにも嫉妬深くなるのだろう……。


『多分、フロースちゃんは思い込みが強いんだろうね』


「え……?」


『うちだって、一応神やってんだから。人の心くらい読めるわ』


「そうか……神様だったね」


『フロースちゃんは、死んだわけじゃない。天国で面接だって受けてないし、地獄にも行ってない。ただ、今は眠ってるだけなんだよ? 辛そうに、苦しんでいたわけでもなかったでしょう』


『まだ、フロースちゃんの人生は終わってない。先に終わってるうちが言ってるんだから、冗談じゃないよん』


「……終わっては……ないけど」


「やっぱり、全てを受け入れられていないのかな。病院にいる私の治療を、誰かが止めれば私は死ぬ」


『……怖いの?』


「怖いに決まってる。闘病している人の方が怖いのはわかってる。戦争でいつ死んでもおかしくない人の方が怖いのも、わかってる」


「……でも、私にとっては、今が怖い」

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