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すみつき娘  作者: 和林
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Day.2 憧れた幽体離脱

 え、何でこの人私が見えるの??


 もしかして少年も幽体離脱中とか……?


 いやいや、じゃあなんでこの家にいるんだか。


 ……まてよ? 今の私って。


「完全に不法侵入者ですよ」


「……ですよねぇぇええ!!!」




Day.2 憧れた幽体離脱




「す、すみません! 今すぐ帰りますごめんなさい忘れて……!」


「え、待って」


「……な、なななんでしょうか通報でしょうか名前はマロン・フロースと申しますはい……」


「フロースさん? ……母が帰ってきたら大変なことになるから……早くこっち来て」


「……?????????」


「何? 人の家は苦手??」


「いや……苦手ではないですけど……不法侵入者上げてどうするんですか……? 焼きますか? 捌きますか……??」


「……フロースさん、逃げてきたんじゃないの?」


「……はい??」


「いいから、早く」


 全く知らない少年に手を引っ張られ、オドオドしながら家に上がる。


 ……どうして、私のことが見えるんだろう。


 少年の自室らしき部屋に通され、高そうなグラスに、これまた高そうな紅茶を出される。


 少年は……私が幽体だと、気づいていなさそうだ。


「どうしたの? 好みじゃなかったかな?」


「あ、あの……その……」


「そういえば、名乗るのを忘れてたね。ボクはユリエナ・シエル。一応……ララヤ地域の王族一家の一員なんだけど。母が過保護すぎるせいで、ボクは殆ど表に出てないよ」


「はっ、え、王族一家!?」


「一応ね、一応。フロースさんは、どこに住んでいるの? ……出来れば家の前にいた理由も教えて欲しいんだけど」


まずい……なんと答えれば……。


「……えと、私はネミ地域に住んでます……その、私今、あの」


「……何?」


「幽体離脱中なんですっ!!!!!」


 ……言ったぁぁぁぁぁぁ!!


 すごい不審者っぽいこと言っちゃったよ!


「ほう。それは詳しく聞かないとね」


「え……信じてくれるんですか?」


「うん? そんなに必死で言われたら、信じるほかないと思うよ」


 まさか、こんなにあっさりと受け入れられるなんて……。


 あまりにもあっさりすぎて、私は少々放心状態満喫中。


 シエルさんが急に顔を近づけてきて、やっと我に返った……。


 ……なんで???


 この少年、乙女のハートを無意識に鷲掴みするタイプ……?


「フロースさん、どうして幽体離脱しちゃったの? ボクはキミが見えるけど、他の人には……見えないよね、きっと」


「……私、自転車で家に帰る途中、事故に遭ったんですよ……トラックに衝突して」


「あー……それで、肉体から抜け出しちゃったってわけか」


「シエルさん、そういう類のこと詳しいんですか……?」


「詳しいというか、興味があるだけだよ。母に外出を制限されてるから、家で試してみたりとか」


 ん???


 試して……みたりとか??


「……フロースさーーん???」


「はいっ、はい、あの……試してみたりとは?」


「ボク、怖い映画とかが好きなんだけど……見てるうちに、幽霊とお話したり、幽体離脱したり……やってみたくなっちゃってさ」


「……じゃあ今、私見てどう思ってます?」


「え?」


「いや、幽体離脱してみたいって……」


「うん。すっっごい興奮してるかな」


「はい??????」


「出来れば立場交換してほしいしなんならフロースさん綺麗だから全部交換しちゃいたいし乗っ取ってもいいかなって思っちゃうしボクの第六感が抑えきれない衝動に駆られてるかなぁ……」


 すごい……すごいニッコニコだ……!!


 獲物を捕らえた時のような嬉しそうな顔……からの頬杖してさらに満面の笑み!


「なんか……すいません」


「どうして謝るの……? いくら願ったってどうせ無理だから……願えば願う程、叶わないんだよね〜」


「……私も質問いいですか」


「うん、どうぞ?」


「シエルさんって、どうしてお母様から外出制限されてるんです……? 何か、病気とかですか?」


「それが、よくわからないんだよね。多分、過保護なだけだと思うんだ。ボクは一人っ子だし、王族一家って名称があるだけで、丁重に扱われる……みたいな?」


「……私なんかただの平民ですよ……シエルさんとお話しする価値なんて、どこにもないと思うんですけど」


「え? 何言ってるの? 折角幽体離脱している貴重な人材と会話が出来ているというのに!!」


「今、人材って……」


「ここまでどうやって辿り着いたの? 門を通った時はすり抜けてきた!? わざわざ開けてきた!? だけど開けたらブザーが鳴っちゃうはず……じゃあ透明になったの!? どうなっちゃってたの!?!?」


「圧が……圧がすごいです」


 必死すぎて、シエルさんは机から身を乗り出して目を合わせて来る。


 やっぱり……この人は乙女心をわかっていないんだなぁ。


「フロースさん? 顔赤い、熱?」


「ち、違いますっ!!!」

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