Day.1 死にました?
『あなたは死にました』
「…………は? い?」
『だーかーら、あなたはー死にーましーたー』
「…………はぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
私、マロン・フロース(18)。
……死んだらしい。
Day.1 死にました?
「そ、そんな不謹慎な言葉……しかも! なにその……翼みたいなやつ!」
『え? あーこれ? 翼だよ』
「……ていうか誰!?」
『うち? この地域の神やってるよん』
「……神?」
『そうそう、神』
「…………私って、死んだの?」
『……ちょっと盛ったわ』
「え?」
『あのねぇ……事故ったじゃん? そん時に幽体離脱しちゃったみたいでさぁ……』
「事故っ……たなそういえば……」
自転車で出かけてた時に……事故に遭ったんだった。
さすがに死んだと思ったけどなぁ……。
『んで今ー、病院で治療受けてるけど、目覚ましてないよーん』
「……はぁ。幽体離脱ってことは、これは夢って感じ……?」
『うちが目の前にいるんだから、夢ではないよね。フロースちゃんが死にたくないと思ったからー、肉体から逃げちゃったんじゃなくってよ?』
「名前も知ってるの……私は神様の名前知らないけど……」
『……まぁ適当に神ちゃんとでも呼んでくれたまえ』
「か、神ちゃん……」
『まーまーまー! とりあえずルール説明しますっ!!』
「……ルール?」
『一つ目! このシルバーコードは丁重に扱うこと! フロースちゃんが眠ってる肉体と、今意識がある幽体を繋ぐ糸だから、これが切れた瞬間に……きゃぁーー! 死!』
「……死」
『二つ目! ちゃんとうちの言うことを聞く! じゃないと肉体に戻れなくなるかもしれないからね。わかった?』
「あ……はい」
『三つ目! 幽体離脱の期限があるんだけど……フロースちゃんは、あと一ヶ月ね。物は触れるし、書いたりも出来るけど、普通の人には見えないからね! 悪さしちゃだめよ!』
「普通の人には見えないって、霊感ある人とかだったら……」
『まぁ、稀に見えちゃう人もいるよ』
「……で、ルールはそれだけ?」
『このくらいかなー? それ以外は好きにしちゃっていいから、うちはお昼寝してくるねぇー!』
「……行っちゃったし」
死んだわけではなかったとしても、結局は幽体離脱してるから……半死?
……ていうか、ここ、どこ。
…………本当にどこ!? ここ!?!?
なんか……自然溢れる公園にいるのはわかる。
でもどこの公園なのかは……わからない。
なんなんだあの神様は……本当に地域を守っている神様なのか……?
現状を把握しようとしている間に、刻々と時は過ぎ……。
木々の隙間から見える空は、茜色に染まっている。
周りの環境ばかり気にしていたせいか、自分をしっかり見ていなかったけど。
「死んだ時の服じゃない……」
純白のワンピースには、レースがあしらわれている。
事故に遭った時は、スキニージーンズにブラウスを着てた……はず。
靴も変わっていて、黒色のローファーからベージュ色のパンプスになっていた。
死ぬ準備……とでも言うのだろうか。
髪型はそのままで、落ち着いたブロンドのロングヘアにセンター分けの前髪。
素は、私のままだった。
公園の入口に着き、地図が載っている看板を確認する。
「……ララヤ地域。ここはララヤってところなのね」
私が住んでいるのは、ネミ地域だから……。
「あれ? 意外と近くなんじゃない?」
とは言え、ネミ地域までは、歩いて五時間かかるようだ。
「……ここに居てもなんだし、出歩いてみるか」
まるで私を送り出すかのように、公園の木々が風に揺られている。
行くあてもなく、真っ直ぐに続いている一本道を歩くことにした。
人通りは少ない上に、歩いている人々はどこか華やかで……上品だった。
「この地域って……高級住宅地か何か……?」
何も考えずに突き進んでいると、目の前に大きな豪邸が現れた。
家全体が真っ白で、その白さは私が着ているワンピースと同等の白さだ。
しかし、詳しくは見えない……。
なんたって……。
「門から家までが遠すぎない……?」
豪邸にはよくある構造なのか、門の先には長い長い道がある。
両サイドは緑に囲まれていて、綺麗な赤色の薔薇が咲いている。
「ま、見えないから……いいか」
あまりの美しさに目を惹かれ、門を抜け真っ白な家へと歩いていく。
近くまで来て実際に見てみると、その迫力は壮大なものだった。
夢のような気分になり見惚れていると、玄関のドアが開いた。
出てきたのは、私と同じブロンドヘアの少年。
その少年は私を見て、目を大きく見開いた。
……私を、見て??
……私のこと、見えてるの!?!?
「……キミ、誰?」