遺伝子組換えじゃない
「あら!この缶詰のコーン遺伝子組換えじゃないんだ!」
リサは倉庫の奥から缶詰が詰められたダンボール箱を運んできて、食べる前に食品添加物が無いか表示を眺めていて叫んだ。
「へえー、今どき珍しい。だいぶ昔の缶詰なんじゃないの?」
ハルが身を乗り出して言った。
賞味期限は…残念ながら切れていた。
「食べられないんじゃないの?」
ハルが言うと、リサはお構いなしに缶詰の蓋を開けた。
匂いをかいで、手づかみでコーンを一粒食べる。
甘くて美味しい。
「だいじょうぶ」
「ほんとーう?」
「うむ」
がつがつ食べ始めるリサ。ハルが銀のスプーンを手渡すとそれで手間がだいぶなくなった。リサはお腹いっぱい食べる。
「食べないの?」
「私はちょっと…」
ハルは手を出さなかった。
案の定リサは腹痛を起こしてお腹を下してしまった。
「えーん」
「だってねえ、しょうがないでしょ?遺伝子組換え食品が主流の時代に前世紀の異物だよそれ」
「…」
「私達の身体も遺伝子組換えなんだから仕方ないじゃない」
「でも」
「でも?」
「美味しかった」
リサは夢見るように言った。
はるか未来のシェルターの中での出来事。