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三題噺

三題噺②:ロバ、掃除婦・掃除夫、バケツ

作者: qwert1374

 夜が更けた。窓から眺める月は三日月。春の澄んだ空によく映えていた。

「もう寝たか?」俺は隣にいるメリルに語り掛ける。

「寝てる。フラルも寝たら。明日も街に出て、物資を運ぶんだから」

メリルは不貞腐れたように言う。隣にいるが、顔は合わなかった。

「まあまあ、聴いてくれ 。面白れぇ話を聞いたんだよ」

「自分から”面白い話”って言う話は、往々して面白くない」

「そんなことねぇよ」

「特にフラルの話は」

「そんなことねえよ」

ちょっと音量を上がってしまった。夜分も遅い。注意する。

「今日街に出たとき、通りすがりに聞いたんだけどな」

「噂話?」

「まあまあ。でも辻褄は合いそうなんだよ。うちの国の王様、分かる?」

「分かるよ、ミダス王でしょ。なに、王様に関すること?」

「そうなんだよ。興味あるだろ。王様の特徴といえば?」

「 …革新的な政策? 」

「違う」

「…王妃にゾッコンなところ?」

「違う」

「違うの?」

「『違う』と言うと語弊があるけど。あの服装だよ」

「ああ。すごいよね。頭にターバンこれでもかってくらいに巻いて、その上にちょこんと王冠乗ってて。長髪なのに。冬は暖かそうだけど、夏は蒸れそう。このバケツ転がるおんぼろ小屋まではいかないまでも、臭くなってそう。………悪口じゃないよ」

「…うん、ま、いいよ。つまり言いたかったことは、”なぜ王様はあんなこんもり頭にしているか?”ということだ」

俺はストーリーテラーに徹するように話をつづけた。

「 ”なぜ王様はあんなこんもり頭にしているか?” 、それは王様の頭には秘密があるからだ」

「ふーん」

「興めよ。興りを味わおうとしろよ」

「はいはい。で、その秘密って何なの?」

「いいか。王様の耳は、ロバの耳なんだ」

「………王様は人間だよ」

「わかってる。その人間の王様の耳が、ロバの耳だから隠しているんだよ。神様の呪いらしい。なんでもよお、昔ミダス王は頑固者だったらしく、自分が信じているものが、どんだけ常識から外れていても、正論だとして他人の意見を取り入れようとしなかった。見かねた神様は、『そんな奴には人間の耳は必要ない』と言って呪いをかけた。文字通り、聞く耳を失ったというわけだ」

「神様ってそんなことできるの?見たことないけど」

「教会ってとこにいるらしい。きっとそこで頼むとできるんだよ。で、人間の耳がある部分は髪で隠し、ロバの耳はターバンで隠しているってわけだ」

「ふーん」

「興めよ。湧けよ、興味」

「はいはい。じゃあ、なんでバレたの?」

俺は小刻みに首を縦に振り、『来た来たその質問』と心でつぶやいた。

「どうしてもミダス王がターバンを外して他人に見せるときがある」

「散髪の時?」

「…うん、そう」持って行かれた。しゅん。「散髪の時は、ターバンを外していたから、お付きの理髪師には見えてたんだ。もちろん口止めさせていたらしいが」

「でも、喋っちゃったんだ。‥‥‥あれ、それだと、理髪師が秘密を洩らした犯人ってすぐ分かっちゃうんじゃない?そんなリスクを冒してまで他人に話すかなあ」

「いやいや、実は違うんだよ。冤罪冤罪。理髪師はちゃんと約束を守ってたんだよ。でも、散髪の時、カーテンがあけっぱなしで、ちょうどその時に窓を磨いていた掃除夫が見ちゃったらしいだよ。で、その掃除夫が喋って広めた。口止めはされてなかったしね。でもね、お咎めはなしらしい」

「えっ、なんで?」

「”ロバの耳”だからだよ」首を傾げたメリルに俺は続けた。「つまりな、『許すことで王たる度量を見せるべき』という家臣の進言を聴き入れたから、今回のことは何の罪もなし」

「ふーん」

「興めよ」

「おい、うるさいぞ」と外から怒鳴り声がぶつけられた。

声を出すのやめた。

扉が勢いよく開けられ、男が入ってきた。

「まったくよお。うるせぇんだよ」

男は歩いて、俺たちの前に立って言う。

「おとなしくしてろよ。ロバ共が」

感想戦を読みたい方は下からご覧願います。

https://qwert1374.com/novel/3theme-2/

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