表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ととむんズ・ショート&ショート

どら焼き

「へえ、めずらしいな」


 その小さな店は目の前で焼く、どら焼きが名物だった。

 そろそろ日が傾き始めた真冬の午後3時半、下校途中の二人はその店に列をつくる数人のいちばんうしろについた。

 ときおり吹く寒風に鉄板から届く熱気が混じって冷と熱のグラデーションが二人の頬をかすめる。そのたびに彼の前に並ぶ彼女の小さな肩が少しだけすくんだ。


 ひとり、またひとりと列は進み、さほど待つこともなく彼と彼女のそれぞれに熱々の焼き立てが紙に包まれて供された。熱い湯気といっしょに餡と生地の甘い香りが彼の鼻腔をくすぐる。

 しかし彼女はその包みを開くことなく、おもむろにダッフルコートの隙間に手を入れて内ポケットの中にそれを仕舞い入れた。


「へへ、あったかいね」


 白い息を吐きながら目を細める彼女。


 そうかそういうことか。

 この店が人気である理由の一つが今、彼にはわかった気がした。



どら焼き

―― 完 ――


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ