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私の名前は悪役令嬢


 「ベアトリス、晩餐のお時間ですわ」


 「はい、お姉様。すぐに参ります」



 はーん、やってらんないよおおお。なーにがお姉様か、お姉様って顔か。おっとキャラが。

 アンスフィアの聖女(ゲーム)内での私はどうやら、ベアトリス・ウインチェスターというらしくとある侯爵令嬢ということだったわ、と気を持ち直す。設定上、ウインチェスター家と王家は深くつながりがあり、ベアトリスは十七歳、王子の結婚相手の有力候補となっているらしかった。知らんがな。

 今日というこの「お姉様」に晩餐の時間ですよと声をかけられた日は「イベント」の発生日だ。三十八回まで数えてわからなくなったが今日は決して「初めて」の日ではない。なんども同じ話をされる。なんせ自分は悪役令嬢だから。



 「辺境伯令嬢がこちらに転学してくるそうだな」


 「まあ、お父様、お耳がお早くていらっしゃいますわ」



 このゲームは、辺境伯やってたおじさんの娘がひょんなことから王都に移住してきて学校生活や街の生活を経て夜会に参加し、ターゲットの親愛度を上げるというものだった。辺境伯とは名ばかりの没落貴族なので、周りからはなんかこう、しらけた目で見られているけれど。

 そしてアンスフィアというのはこの国を作ったとされる神様の名前で、主人公は「聖女(おとめ)」として覚醒して……とまあなんかこんな話だ。よくあるファンタジーテイストの乙女ゲーム。



 「辺境伯とはいうが、なんというかその」


 「まあ、歯切れが悪いですわねお父様、大丈夫ですわ、ベアトリスは優しい子ですもの。それに王宮だって我が家をないがしろにはできないはずですわ」


 「まあ、そうなんだが。頼んだぞベアトリス」


 「……悪いようにはいたしませんことよ、お父様」



 なーにがお父様か、でっぷりした腹とシワがだらしないハゲのくせして。ゲームではウインチェスター一家はこの「お姉様」しか出番がなかったからなのかどうにもキャラデザの手抜き感が否めない。ちなみに「お母様」は早くに亡くなっているという設定らしかった。まあ、このお父様、愛人も後妻さんもとらないでお母様一筋! だからそこは買っているベアトリスである。


 ここでの会話はさておいて、明日からは本来ならば転校生もとい主人公に対するいびりが始まるのが常だ。わかりやすく取り巻きもいる。とはいえ彼女、ベアトリスはここにきてもう三十八回と+αの主人公、名前も見た目もバラバラな、のわりにはどことなく可愛いが、そして王子ルートであれば断罪スチルのある自分を見ていて思った。辛いとかじゃなく飽きた。そう、冷静に飽きたのだ。


 最初の頃はつらかった。どうせなら主人公になりたかったなあ、推しは別に王子じゃないしなあ、悪役令嬢って柄でもないのになあ。ちょっとは落ち込んだ。酷いこといっちゃったなあ、泣いてるのかなあ、言いすぎたなあ、でも言わないと進まないしなあ。

 最初だけであった。なんかもう飽きた。断罪スチルで心とか痛まない。同じもの食べ過ぎて食傷気味ってほうが正しいくらいであった。



 「なんせ私は、悪役令嬢(ベアトリス)ですもの。なんの心配もございませんわ」


 「それもそうだな」


 「さすが自慢の妹ですわ」



 自慢の妹(そんなもの)は今日で終わりだ、ヴァカめ!と心中で悪態をついた。

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