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アベルとベアトリス



「だからずるいなあって思っていたんだよ」


「はあ、私にそんなこと言われましてもあの二人は付き合いも長いですから……」



 授業の合間にアベルがやってきた。開口一番「君はどうして僕のことだけ敬称をつけて呼ぶの?」ニコラとノエルはなんだかんだ昔から付き合いがある体だがどういうわけかアベルはそうではなかった。なんでなのかはベアトリス本人も知りえない。ただあまり交流がない公爵家の男子を彼女が呼び捨てにするわけにはいかなかったのだ。理由なんてその程度だった。



「ずるいよね、僕だって幼い頃の君と出逢ってるのに今まで接点があまりなかったなんて」


「まあ、二人と違ってアベル様はボルフラン公爵様の実の孫ですし、今後の商売だってアベル様がやられるんでしょうって皆さんおっしゃってますわ」


「僕は長男の子じゃないんだけどなあ。本来なら叔父さんが継ぐはずだったけど出て行ってしまったから僕に矛先が向いているだけだよ」



 ヤヨイの父であるボルフラン辺境伯は長男であったために後継ぎ問題も若い頃からなんども聞かされていたそうだ。それが原因かどうかはさておいても、出ていきたい理由としては十分すぎたのだろうと住民たちは噂している。理知的な人だったと良く聞くがやったことは資産家のお嬢さんとの駆け落ちに近いため、ボルフラン公爵もムキになって戻って来いと言えないままでいた。もう帰ってくることは、無いのだが。



「私、アベル様に気に入られるようなことしてないですわ」


「気にはなってたけどきっかけがなくてね、僕はもっと前から君を知っていたよ」


「そうですか……」



 友達になりたがってくれているのならこんなにありがたい話もないが、グランツの話のあとのあの微笑みは確実に狙いに来るそれだった。ヤヨイは、今まで見てきたどのヒロインよりも完成されていたが、あのあと聞いたところによれば「他人の恋路を見守るほうが好きなので」と言っていた。

 要はヤヨイは恋愛シュミレーションとしてゲームをしていたわけでなく、ヒロインと誰かの恋路を見守るという第三者視点でいたわけだ。


 まさかそれが原因?いままでみたいに恋愛しようとしてないから誰もヤヨイに傾かないのだろうか。もしそうだったら誰かとの、あるいはハーレムのエンディングになってしまう。バッドエンドでも困るが言い寄られている今の状態も精神的にはきついものがあった。



「で、では、今日からアベルと呼ばせていただくのはどうでございましょう?」


「うん、それならまあいいかな。トリクシー、君は本当に王家に嫁ぐ気はないの?」


「だってグランツ様だって幼馴染ですわ、そんな風に見たことはございません」


「テランスには顔を赤くするくせに?」


「な、んでそれを……」


「たまたまこの間馬車から見かけてね。彼も君を慕っているんだろう?つまり僕らは恋敵だ」


「大袈裟ですわ」



 あからさまなアプローチは、この間のテランス以来だったためどっと疲れが押し寄せる。今日の昼食を一緒にとろうとキラキラした笑みで言ってくるアベルにベアトリスは力なく承知の返事をした。

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