第2話 人間卒業Ⅱ
気がつくと、驚く程に体が軽い。
そもそも、体がない。
視覚や聴覚などの五感も全く失われ、意識だけが存在しているようだ。
また、無重力というものともまた違った不思議な感覚だ。
しかし、不思議と焦りや不安などといった感情はなく、とても心地良い。全ての欲が満たされていくような…
(ああ…なんだろうこの感覚…
これが天国ってやつかぁ…)
この不思議な感覚に浸っていると、どこからともなく音声が聞こえる。
と言っても、耳からでなく、直接精神に語りかけられている感じだ。
「貴方様の死亡が確認されました。これより、来世への手続きに入ります。」
(おっと、天国じゃなかったのか…
俗に言う転生ってやつかな。とりあえずなんか喋りたいんだけど…)
声を出そうとするがまず息を吸うという行為が、どのようなものだったかすらわからず、返事ができない。
(あ、だいたいこういう時は心の中で思ったら通じるのがテンプレだったっけ。
どちら様でしょうか?)
そう思っていると。
「はい、私はこの第4649番世界で亡くなった生物の精神体を、次の生へ導くようこの世界の神がお造りになった、案内システムです。」
(おおー、通じた。精神体とはなんでしょうか。
あと、亡くなった生物すべてに話していたら大変ではないですか?)
「精神体とは、魂のようなもので、実態を持たない意識の塊のようなものです。
それが生物として生まれてきた身体の、主に脳内に取り憑くことで身体を操り、生命体となって活動することができます。
また、この世界での生命体の生命活動が不可能になった時に、再び精神体は独立し、それぞれ個別にシステムが起動、案内に当たることになっています。」
(なるほど、別々に案内することで、多数の精神体の対応にスムーズにあたれるわけか。
ん?この世界のってことは、別の星や宇宙にも生命体がいるってこと?)
「はい、その通りで御座います
貴方様の住んでいらっしゃった地球という惑星以外にも様々な場所に生命体はいます。
では、もうそろそろ来世への手続きに移らせていただきます。」