電車の合図
「わ!弓弦見てみて!!東京スカイツリーが見えるよ!!!」
「いや、ガキかよ。今更の話すんな。」
絶好の天気だから綺麗に見えたから興奮したのに〜って拗ねると笑ってきた。
寒いけどサンサン光る太陽さんのお陰でさっきまでの陰気な雰囲気も気持ちもぶっ飛ぶ。
アメ横をブラブラしながらあの鞄ニセモノだね。とか野菜安いな?!ここで明日から買い物しよう!とかまたまたくだらない話をして駅に向かう。今日はカラオケ行くだけの約束だったからね。
電車が来るまで改札で駄弁る。あの駅員さんイケメンだな〜とか思っていたら弓弦が「おい聞けよ」って言ってきた。「弓弦の話は全て聞いてるよ〜!あの駅員さんイケメン過ぎて見惚れてた。」とか笑いながら言い返してまたイケメン駅員さんを見る。本当は頭の中で蓮実会議を行っている。イケメン駅員さんとかどうでもいいのだ。
今まで友達として大好きって思ってきたけど、それは弓弦に「お前とは一生友達としていたい」って言われたからであって私の気持ちをガン無視なんだ。弓弦の顔を見る。やっぱ好きだわコイツのこと。でもこの好きは何の好きか今では分からなくなってしまった。友達としての好きなのか。恋愛として好きなのか。それとも、いつか消えそうで、いなくなってしまいそうで、守らないといけないっていう執着している好きなのか。前までは完全に友達として。だった。今日一日でこんなに感情がグルグルするなんてな。振り回されてるわ。
「誰かに必要とされたい。」
「は?」思わず声が出た。「私、こんなにも弓弦を必要としてるんだよ?なんで分かってくれないの?ねえ、凄く大好きだよ?消えないでね。私は弓弦を求めているんだから。」ポロポロと本音が続いて出てくる。ああ、しまった。
「まじ蓮実好きだわ」
友達として好きを言ってくれる。私の好きも友達として言われてるって思ってるのだろうな。
「そろそろ来るね。蓮実〜寂しいよ〜ぎゅーしていい〜??」
こっちの気も知らないで。でもハグはしたい。って自分は馬鹿だなって手を広げた。弓弦はハグだけじゃなくてキスもしてきてまさかの舌も入れてきた。え?って驚きのあまり目が開く。弓弦もしかして私を好きなの?って思った時に弓弦を乗せる電車が来た。弓弦にキスをしてくる理由を聞こうとしたら
「蓮実を好きになるところだった。」
って釘を刺された。どういう事?私の気持ちを置いて私を見つめる君は続けて言う
「好きにならないから安心してね。」
頭が追いつかなくて呆然とした私に手を振って「今日はありがとう!楽しかった!また遊ぼう」って言われた瞬間に『扉が閉まります。』と話すアナウンスが流れた。笑顔で手を振って弓弦はダッシュで電車に乗ってしまった。わたしの返事なんて待ちもせずに。離れて行く青いラインが入った電車に戸惑いの目を向けていると『オーライ!よし!』とイケメン駅員さんが合図をしている姿が目の端に映った。