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第4章18話 同盟軍は狡猾な卑怯者ばかりだ

 作戦フェーズ3がはじまったところで、俺たちはしばらく待機である。


 俺たちが行動を開始するのは、フェーズ3開始から数分後のこと。

 時間を確認したリーダーは、ざわつく高官とその家族に向かって口を開いた。


「これから皆様を脱出地点までお連れします。それまでの間、我々は帝國軍兵士になりすまし、皆様を護送します。皆様には手錠をかけ銃を向けるなどしますが、どうかご辛抱を」


 続いて高官とその家族たちに手錠をかけた特殊部隊の隊員たち。

 高官たちはおとなしく特殊部隊に従い、また嫌がる子供たちを必死でなだめる。


 脱出の準備が整うと、俺とリーダーは数人の高官とその家族を連れ、一足先にエレベーターに乗り牢獄を後にした。


 エレベーターを降りると、さすがに帝國軍兵士たちの視線が集まる。

 異星人(・・・)のお偉いを牢獄から連れ出した俺たちは、かなり目立つ存在だ。


「おい、君たちは彼らをどこへ連れて行く気だ?」


 案の定、1人の帝國軍兵士が俺たちにそう聞いてくる。

 リーダーは用意していたセリフを放った。


「先ほど、すぐそこの倉庫部屋で銀河連合同盟軍の工作員を発見したのは知っているか?」


「ああ、知ってる」


「奴らの狙いは、牢獄に囚われていた彼らのようだ」


「なんだと!? 同盟軍も勇ましいものだな」


「まったくだ。同盟軍の工作員は、まだどこかに潜んでいるかもしれない。そこで我々は、彼らを別の場所に移動させることにしたのだ」


「ほう……」


 表情を驚きに染める帝國軍兵士。

 発見された銀河連合同盟軍の工作員とは、倉庫部屋にいた特殊部隊隊員の2人である。


 ただし、彼らを発見したのは、帝國軍兵士になりすましたフユメとメイティだ。

 そして工作員を連行したのもフユメとメイティだ。

 彼女たちはすでに格納庫へと向かっているのだ。


「同盟軍は狡猾な卑怯者ばかりだ。気をつけるんだな」


 俺たちに話しかけてきた帝國軍兵士は、俺たちの狡猾で卑怯な作戦に気づかず、俺たちを見逃してくれた。

 これはまさに、フユメたちが帝國軍兵士たちを騙している証。


 20人の捕虜(・・)全員がエレベーターを降りると、俺たちもいよいよ出発である。


 銃を持った俺とシェノ、特殊部隊のリーダーを含む3人の隊員たち。

 そんな俺たちに囲まれた、落ち着きのない20人の高官とその家族たち。

 あまり不自然なことをされては困ると思っていたが、高官たちの落ち着きのなさは、ある意味でリアルな反応だ。


 大所帯に帝國軍兵士の視線は集まるが、それ以上のことはない。

 ここは早いところ格納庫に向かってしまおう。


「歩け」


 帝國軍兵士らしく、高官たちに敵意のある視線を向けたリーダーの言葉。

 ゆっくりと歩き出した俺たちは、帝國軍兵士たちを掻き分けデスプラネットの廊下を進んでいく。


 天井の高い廊下に並んだ、帝國のシンボルである稲妻と星が描かれた垂れ幕に見下ろされ、俺は唾を飲み込んだ。

 青白い光と灰色の世界、鮮烈な垂れ幕のコントラストは、まさに帝國の激情そのもの。

 世界の端に追いやられた者たちの尊厳の中を、俺たちは歩いているのである。


 ちょっとした衝撃が加われば、その尊厳を守るための暴力が、俺たちを襲うのである。

 こんな中で平気な顔をできるシェノたちは異常だ、と俺は思う。


「下等生物どもの護送か?」


「我ら人間を蔑視し続けた者たちの末路か」


「あれこそ正しい世界の形だ」


 高官とその家族たちを見た帝國軍兵士たちのつぶやきは、どれも同じ。

 強烈な優越感と痛快さを胸に、自分たちを貶めてきた者たちを嗤うのだ。

 事実、高官とその家族たちは人間を劣等種と呼び、人間を見下し、今は見下される者として人間たちを睨みつけていた。


 まったく、絵に描いたような憎しみの連鎖である。


「胸糞悪い……」


 つい漏れ出した俺の心の声。

 この任務、早く終わらせたいものだ。


 しばらく廊下を歩くと、格納庫まで移動するための乗り物に到着。

 乗り物に乗るため、リーダーはドロイドに話しかけた。


「囚人の護送だ」


《護送? そのような予定はありません》


「緊急の案件なのだ」


《それでしたら、非常時データリンクに繋ぎます。しばらくお待ちを》


 嫌な予感がする。

 シェノや特殊部隊の隊員たちは、銃を持つ手に力を入れはじめた。


《非常時データリンクに該当する緊急案件なし。貴殿らの行動は軍規に抵触している可能性がある。そこを動くな》


 ドロイドのランプが赤と青の点滅をはじめ、7体のドロイドが俺たちを囲む。

 明らかに危険な状態。高官とその家族たちも血の気が引き、青ざめていた。


 さらに、俺たちが持つ帝國のライフルは、ドロイドの仕業か引き金がロックされてしまう。

 帝國軍兵士が呼ばれるのも時間の問題。

 このままでは救出作戦失敗だ。


「ああ……クソッ!」


 どうにかしてこの状況を打破しようと、俺は実力行使に出る決意をし、ライフルを捨て両腕を突き出した。


 しかし、俺よりも早く実力行使に出たのはシェノであった。

 彼女は隠し持っていた拳銃を構え、息もつかせず引き金を引く。


 高官たちや特殊部隊の隊員たちの隙間を飛び抜け、ドロイドを撃ち貫くレーザー。

 連続する発砲音は、高官やその家族たちに悲鳴を上げさせる暇すら与えない。

 俺が口をぽかんと開けているうちに、7体のドロイドはスクラップとなり地面に転がった。


「片付いた……のか?」


 あまりに一瞬の出来事であったため、理解が追いついていない。


 どうやらシェノは、7体のドロイドを全て破壊したらしい。

 ということは、俺たちを邪魔する者はもういない。


「さすがシェノだ。これで格納庫まで行けるな」


「まだ終わってない! 油断し――」


 シェノの忠告が俺の鼓膜を震わした時、俺の体にはレーザーが突き刺さり、激烈な痛みが俺の全身を襲った。


 感覚は麻痺し、意識は揺らぎ、自分が地面に倒れているのかどうかすら分からない。

 ふと視界に入ったのは、俺にライフルを向けた帝國軍兵士が、シェノの銃撃によって倒れた場面。

 ひとつ確かなのは、俺が死ぬということだけ。


 救世主、ここに死す。

次回 第4章19話『敵襲! 銀河連合同盟軍の艦隊が出現した!』

ラグルエル「やっぱり死んじゃったクラサカ君。彼はフユメちゃんやメイティちゃんと一緒に行動を開始するわ。そして、いよいよ作戦は佳境に差し掛かるわよ」

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