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神攻聖機ラグナロク  作者: Jの者
第1章 「目覚めの時」
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第3話 「暴走」

ラグナロクは実際不思議ロボット。

M県と隣のN県の境に位置する山中、その深い森の中でアキヒトは物思いにふけっていた。

日は落ち、月が登り、虫たちがざわめく中、巨大な白い機械の傍らで座り込んでいた。


『……君、家には帰らないのかい?』

ラグナロクがそう言ったことで、アキヒトは初めて辺りが真っ暗になっている事に気がついた。

腕時計を確認すると、短針は9時を示していた。

「……今日は、帰りたくない」

アキヒトは、自分が随分子供っぽいことを言っているような気がして恥ずかしくなった。

だがすぐに、それは仕方が無いことだと気持ちを切り替えた。

「人を殺したんだ……叔父さんたちに顔を合わせにくいんだよ……」

もっともらしい理由をつけて、このまま外にいようと決め込んだ。

本当は、違った。

ラグナロクが恐ろしかったからだ。

(こいつから目を離して、その間に暴走でもされたらかなわんからな……)


『……私が怖いか?』

その言葉に、アキヒトはゾクリとした。

彼の思っていることを見透かされていると、不気味に感じたからだ。

「な、何を言って……」

『君にチップを埋め込ませてもらった。

脳波をリンクさせるもので、私を操縦するのに必要だからな。

……結果として、君の考えてることもわかってしまうのだ……』

「……早く言えよ」

これでは俺が馬鹿みたいだと、アキヒトは気分を害した。

『……私も無闇に暴走したりはしないぞ?』

「……それだけじゃねえよ。

お前を街中まで持ってって、どこに置いとくんだ?

まさか、コインパーキングなんてわけにはいかんだろう」

『……それは考えつかなかった』

「ぶっ」

(……思わず吹き出してしまった)

『……そう笑うなよ。

私はこの世界には疎いのだ』

「……そうだな、海の底にいたお前が急に地上の状況を理解して順応できるわけねえよな。

何だか笑っちまうぜ」

『……笑うなと言っているだろう』

アキヒトは、ひとしきりラグナロクと喋ったあと、疲れて眠ってしまった。


朝が来て彼が目を覚ますと、ラグナロクの中にいることに気がついた。

「昨日は外で眠っちまったと思ったが……」

『あんな所で眠って、体調を崩されたりしたら困るからな。

君がいなければ私はろくに動けないのだよ』

「そういやそうか。

いや、すまん……これから気をつける」

『ところで、君……腹が減っているのだろう?

これは朝食だ』

ラグナロクはコックピット内部に目玉焼きの乗ったトーストと焼いたベーコンとミルクを出現させた。

「……どうやって作ったんだ?」

『私は、この世界の電子的ネットワークに無線で繋がることが出来たようでな。

人間の食事について調べたのだよ。

重ねて言うが、君には健康でいてもらう必要がある、私のためにな』

「うん、お前がすげえことはわかった……。

で?材料はどうしたんだ?」

アキヒトが不安げな表情を浮かべる。

『ああ、そういうことか。

……ここは森だからな、材料には事欠かない。

豊富な動植物を様々に合成したのさ』

「……合成?」

『ここにあるものを利用して、似たようなものを作ったってことだ』

「……」

アキヒトは、とても不安だった。

だが、食ってみれば存外に味はよく、ラグナロクからは『もっと私を信用してほしいものだな?』と文句を言われた。


朝食を食べ終わり、ほうっと息をつくアキヒト。

だが、突如として鳴り出したけたたましいサイレン音にドキリとさせられる。

ビーーーーッ!ビーーーーッ!

コックピット内に危機を伝えるそれを受けて、アキヒトはすぐさま臨戦態勢をとる。

「ラグナロク、この音は……」

『ああ、作ったばかりのサイレンだ。

無論、この内部にのみ聞こえるようにしてあるから安心しろ』

「そうじゃない」

『……敵襲だ』

ラグナロクの感知能力は昨日から格段に成長しており、3キロ先の敵を捕捉できるようになっていた。

『敵は昨日と同じ型、数は3機だ。

現在右手方向2.5km先より接近中』

「なるほど、「魔王の軍勢」に違いないな。

3機ということは、昨日の偵察機とは違いマジに戦いに来たってわけだ」

『そうだろうな』


果たして、それらはすぐに目の前までやってきた。

特に会話もなく、お互いが姿を目視した瞬間に戦闘は始まった。

ラグナロクの、ロボットらしい関節の硬さを思わせぬ滑らかでパワーあるパンチやキックは、3機の敵の巧みな連携により空を切るばかりでまるで当たらない。

その逆に、敵戦闘機の機関銃は、ダメージこそ少ないものの確実にラグナロクの装甲を抉っていた。

「まずいな……このままじゃジリ貧だ」

『……見事に翻弄されているな』

「分かってる、だが……3機の動きを見切るのは厳しい」

不意に、ゴゴォンッとアキヒトの背中に衝撃が走る。

『危険だ、背中にでかいのを食らってしまったようだ……』

「どのくらいだ?穴でも空いたか?」

『それはない、だが……10分の1は抉れた』

「……もう、9発食らえばアウトってわけか……」

装甲が削られる毎に、ラグナロクの動きが鈍る。

このままでは負ける。

そう思った瞬間、敵の動きが急にスローに見え始めた。

「……!!?これは……」

『死の直前のスローモーション……ではないぞ。

私の視界を共有しているのだ。

これは、君を消耗させるから使いたくはなかったが……』

「これが、お前の見ている世界……」

『そうだ。

……早くした方がいいぞ?

終わった後に死ぬほど疲れるだろうからな』

そう言われて、アキヒトは攻撃のペースを上げた。

狙いが付けやすくなり、1機目、2機目とすぐに落とせた。

そして3機目に狙いをつけた、その瞬間、再び背中にさっきよりも強い衝撃が走った。

『緊急事態だ、装甲がもう持たない。

やられたよ……』

先に倒した敵が、最後の力で特攻をかましたのだ。

「なんてこった……」

(ここで、終わっちまうのか?

俺の復讐がこんなところで?)

アキヒトが諦めかけたとき、ラグナロクとのリンクがぷつりと切れたのを感じた。

「ラグナロク!?

まさか、死んじまったのか!?」

思考が、終わりという文字に占拠されていく。

だが、ラグナロクは意図せず動き出した。

恐ろしく速く、恐ろしく力強く、おぞましい雄叫びをあげ、残りの敵機を捕捉する。

『がぁぁぁぁぁあッッッ!!!!!!』

聞いたこともないラグナロクの叫びにアキヒトは震え上がる。

(こいつ、暴走している……!?

俺の考える前に動いてやがる!!)

機械とは思えない激しい動きを繰り出すラグナロク、腕からはギシギシと軋むような音がしている。

「ま、待て!ラグナロク!」

アキヒトの制止の声は、ラグナロクに届くことは無かった。

腕が崩壊するのも意に介さず、ラグナロクは最後の敵にトドメをさした。

殴った衝撃で己の腕が吹き飛び、標的は粉々になっていた。

敵を倒しきってからも数分間ラグナロクは暴走を続けた。

木々をなぎ倒し、やがて背中の穴が1m大になるまでラグナロクは止まらなかった。


「おい!なあ!ラグナロク!

返事しろよ!おい!」

アキヒトが何度叫んでも、ラグナロクは応えなかった。

その日は結局、眠るしかなかった……。


(ラグナロクには、まだまだ俺の知らない面がある。

しかし、こいつについたこの傷は直せるのだろうか、崩れた腕を直せるのだろうか……ということが今の俺に考えられることの限界だった。

こいつに眠る謎について考えることは、できるはずがなかった……)

厳しい戦いに、辛くも勝利したラグナロク。

だが、結果として大きく損壊することとなった。

新たに芽生えた謎に目を向ける前に、その損傷が大きな壁となっていた。

次回 「何者なんだ」

ラグナロク、それは謎深き破壊の器。

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