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神攻聖機ラグナロク  作者: Jの者
第1章 「目覚めの時」
3/5

第2話 「俺がやったのか」

第2話、アキヒトの戦いが始まります。

海中から勢いよく飛び出し水しぶきをあげるラグナロク。

アキヒトの気分は、自殺しようとしていた時とは打って変わって高揚していた。

「すげえーー!!

空を飛べるのか!?」

『この程度のこと、出来て当然だ。

この機体の力に私の力もプラスしているのだからな』

「お前の力って……思念体としてのお前のってことか?

この機体に憑依しているとは聞いたが、どこにいるんだ?」

『そうだな……血液が体を循環するように、私もこの機体のエネルギーとして巡っているってところかな。

もっとも、私が尽きてしまうことはほぼ無いだろうがね』

「それって……ほとんど永久機関じゃないか?」

『まぁ、そうだな』

さらりと言ってのけるラグナロクに少し恐ろしさを感じたアキヒトだったが、それ以上の興奮が恐怖をかき消した。

「すげえ……まじですげえよ、ラグナロク。

お前となら……この世界を奪った奴らを……」

『……「奴ら」?』

「おっと、お前は知らないよな……。

俺の復讐相手の、「魔王の軍勢」という組織だ。」


十年前……世界のどこかで事件が起こった……。

劇場だったか、スポーツの大会の会場だったか……とにかく、人が集まっていた所で爆弾を爆発させて多くの人が死ぬという事件だ。

無論、テロ事件として大々的に捜査されたが、犯人は見つからなかった。

その事件を皮切りに世界各地でテロが起こり始め、やがて「魔王の軍勢」と名乗る組織が現れた。

それから、テロ事件だと言われていたものは「戦争」に変化した。

世界のあらゆる国が次々に「魔王の軍勢」によって制圧されていった……。


「そして今、奴らはこの世界全てを支配している!

俺はそれを許せねえ!

だから……この世界への反抗として……死のうとした!

……今、若者が1人でも死ぬのは奴らに多少のダメージを与えられるからな。

しかし、その必要はなくなった……」

『私がいるからか?』

「そうだ!

お前の力を使って奴らを徹底的に叩き潰してやる!

俺の両親を奪った奴らに復讐してやるんだ!

ついでにこの世界を解放する!」

『……なるほど。

君の恨みはその「魔王の軍勢」という組織に対し向いていたわけだ。

しかし……ついでに世界解放とは……いささか大きく出たものだな』

「夢はでっかい方がいいだろう?」

『君、そんな性格をしていたかな?』

「今はちょっとハイになってるんだよ」


ラグナロクとアキヒトが談笑していると、遠くの空より何かが飛来した。

真っ黒なカラスに見えるかもしれないそれは、よく見れば鳥なんかより巨大であった。

ラグナロクはそれが半径1km以内にやって来た瞬間に存在を感知した!

『……なにか来るぞ、主よ』

「何?なにかって……」

『今、外の景色を映そう』

ラグナロクがそう言った瞬間、真っ白で無機質な空間が透明に変わり外が見えるようになった。

そして、ようやくアキヒトもその存在に気づく。


「おいおい……あれはひょっとして……」

キィイイイイインと、耳を突き刺すような音も聞こえ始め、アキヒトの心臓は高鳴る。

『……戦闘機』

「「魔王の軍勢」だ……!!」

真っ黒な戦闘機は、ラグナロクの周りをグルグルと回るように飛んでいる。

ラグナロクの様子を探っているようだった。

「おい、ラグナロク!

奴の方へ声を届けることはできるか?」

『容易いことだ』

「よし!

それじゃ、今から言うことを奴へ知らせろ……。

おい!貴様!何者だ!」

ラグナロクからアキヒトの声がそのまま発せられる。

戦闘機の搭乗者は、それに応えるように無線機で「私は「魔王の軍勢」の兵士!貴様こそ何者だ!」と声を出した。

「ビンゴだったか……。

ラグナロク、次だ!

俺は神霧アキヒト!お前は何の目的でここへ来た!?」

「貴様の目的を聞くためだ!

そして、それが我々に害をなすものなら、排除する!」

「オーケーオーケー慌てるんじゃない……。

俺の目的を言ってやろう!

貴様ら「魔王の軍勢」への復讐だ!!」


アキヒトが叫ぶと、ラグナロクが反応し戦闘機に対しパンチを仕掛ける。

「ぐおっ……貴様、やはり我々の敵だったか!

排除する!!」

戦闘機は瞬時に反応し、ラグナロクの拳をかわして攻撃を始める。

『ふん、無駄だな。

この装甲を破るのは、あの程度の機関銃では無理だ』

「頼もしいぜ、ラグナロク!

しかし……お前、今どうやってパンチしたんだ?

操縦とか、一切してねえぞ?」

『操縦は必要ない。

この機体は、君の脳波にリンクしているのだ。

つまり、君が頭の中で考えれば、この機体はその通りに動くのだ。』

またも平然と言ってのけるラグナロクに、アキヒトは圧倒された。

(そんな技術があるってのか?)

「まあ、それなら俺がやりたいように動けるってことだよな?」

『そうだ』

「ますます気に入った!」


M県の空に、二つの高速の物体が飛行する。

一方は、追われるように逃げ惑う最新鋭の戦闘機。

また一方は、漫画の世界から飛び出してきたかのような真っ白で巨大なロボット。

人々は、その異様な光景をただ眺めていた。


「くらいやがれ!」

ガウンと、ラグナロクの拳が空を切る。

戦闘機は、その風圧によりグラグラと揺れる。

「くおぉ……仕方ない!

ここで貴様を破壊してやる!」

すると、戦闘機からいかにも隠し玉と言わんばかりのミサイルが発射された。

当然、追いかけているラグナロクはかわしきれず、直撃してしまう。

「……やったか!?」

灰色の煙の中、ラグナロクは健在だった。

「……それがお前の限界か?」

「馬鹿な……」

「今度こそ……終わりだ!!」

バギィイン!!

ついにラグナロクのパンチがヒットした。


墜落し、炎上する戦闘機から搭乗者を引きずり出そうとするが、アキヒトはそれをやめた。

「……」

『死んでいたか?』

「……あぁ」

『何だ、随分と沈んでいるな。

……殺したことを恐れているのか?』

「……かもしれない」

『まぁ、仕方ないことだ。

しかし……復讐するというならこのようなことは当たり前になっていくぞ。

それなのにいちいち意気消沈していては……』

「……俺が、やったのか……」

『そうだ。

紛れもなく、お前がやったのだ。

……悔やんでいるのか?』

「……ほっといてくれ」

『ご命令とあらば、我が主』


(……最初、復讐することは、スカッとして気分がいいことだと思っていた……。

でも、あの敵の死体を見て……本当にそうなのか、分からなくなってしまった……。

俺は、ラグナロクを使ってこの世界を支配から解放したい。

でも……それには、人を殺さなくてはならない……正直、怖い。

全てが終わった後に平和になった世界は、俺を受け入れてくれるのだろうか……。

血に染まっているであろう、この俺を……)


ラグナロクが夕日のオレンジ色に染まっているのを、アキヒトはただ、ぼーっと眺めていた……。

初めての戦いを終え、自身の理想と戦いの現実の狭間に揺れるアキヒト。

そんな彼を焚きつけるように現れる「魔王の軍勢」の戦闘部隊。

決断の時、神殺しの器は容赦なく目の前の敵を滅ぼす。

次回 「暴走」

お前を、倒す。

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