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神攻聖機ラグナロク  作者: Jの者
第1章 「目覚めの時」
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第1話 「力を与えよう」

第1章 「目覚めの時」、始まります。

日本、M県某市の高校……今日、ここでは卒業式が行われていた。

その中で、一際つまらなさそうに、ぼーっと座っている生徒がいた。

彼の名は「神霧 アキヒト(かみきり あきひと)」という。

ありきたりな卒業ソングを口パクで済ませ、硬いパイプ椅子にドッと座り込むアキヒト。

「……なにがめでたいってんだ……」

彼は、ボソリと他人に聞こえないほどの小さな声で呟いた。

周りを見渡して見ると、父兄ではない、仰々しい黒いスーツに身を包んだ奇妙な連中が生徒や父兄を監視しているのがわかった。

アキヒトは、この怪しすぎる彼らを見つめながら、また誰にも聞こえない声で、「いつもより多いんじゃないか……」と文句を言った。

卒業式が終わり、続々と帰り始める生徒達、アキヒトはその中でも1番早くに学校を飛び出した。

「俺は今日、自由になる」

彼の目には強い決意の色が表れていた。


学校を出たアキヒトが向かったのは、港であった。

自転車ならば30分ほどで着くそこで、ぼーっと海を眺めていたかと思えば、おもむろに立ち上がりふらふらと海の間近へと歩き出した。

春一番が吹き風が強い今日、波は多少高く、彼の決意をより強固にした。

「俺は今日、死ぬ」

風にかき消されていく声を残し、アキヒトはまだ冷たい海へと飛び込んだ。

(苦しい……沈む……意識が……沈む……)

肺から空気がごぼごぼと抜けていき、アキヒトの意識は薄れていく。

しかし、彼の目に奇妙なものが映り、意識は急速に戻っていく。

(何だあれ……デカい……真っ白な……)

奇妙な物体を眺め、アキヒトは苦しみすら忘れていた。

(ロボット……?)

それは、およそ10m以上はある、巨大なロボットであった。


アキヒトがそれをロボットだと認識した瞬間、突然目の前にそれがやって来た。

(な、何だ!?動いた!?)

『恐れるな、少年よ……』

機械音声のような声が響く。

アキヒトは、それがロボットの声だと気づいた。

(お前…何だ!?…話すことができるのか!?)

『できるとも……このままだと話しにくいな。

私の中に来い』

ガガガ……ッと海中に音が響き渡り、ロボットの胸の当たりが開いた。

その中にアキヒトは吸い込まれた……。


アキヒトが目を覚ますと、柔らかい椅子が1つだけある、真っ白な丸い空間にいた。

「……ここは……」

『目を覚ましたか、少年よ』

脳に響く機械音声が、なぜか無性に心地よく感じた。

「……お前は、このロボットの操縦者なのか?」

『……違うな、私はこのボディの意思だ。

……つまり、君の言うロボットというのが私自身なのだ』

「機械が俺に話しかけているのか」

『それは正しくはない。

私はこの機械の体に住み着いた思念体のようなものだ。

まぁ、ヤドカリの様なものだな』

「……変な例えだが、そういうものなんだな……。

で、その思念体が俺に何の用だ」

アキヒトは、なぜかロボットが話すことをすいすいと受け入れていた。

本来の落ち着いた精神状態ならば、自分の頭がおかしくなったのだと思う状況だが、1度死にかけて吹っ切れたのだ。

『私は、私を起動できる人間を待っていた。

この機械の体は、お前のような人間を求めていたのだ。

お前のように、強い感情を持つ者を……』

「……俺が、強い感情を持っているだって?

そんな馬鹿なことがあるか。

俺はさっきまで死のうとしていたんだぜ」

アキヒトは、呆れたように苦笑いしながら言った。

『……お前は、深い「恨み」を持っている……。

その「恨み」が、この機体に反応したのだろう』

「恨み……」

その言葉を聞いて、アキヒトの脳裏にある記憶が呼び起こされていた。


5年前……まだ中学1年生だったアキヒトは、友人と呼べる人も少なく、日々を適当に過ごしていた。

そんなある日のこと、国際テロ組織「魔王の軍勢」が日本に上陸し、次々と都市を制圧していくその攻撃に、アキヒトが暮らしている街も被害を受けた。

彼は学校におり、地下に隠れ何とかやり過ごしたが、彼の両親は攻撃に巻き込まれ死亡した……。

その事により転校を余儀なくされ、友人を作る才能もない彼はイジメを受けた。

彼を引き取ってくれた叔父の一家はいい人たちではあったが、アキヒトに対し遠慮があり、彼にとってはどこか遠くにいる人のように感じられていた。

そしてアキヒトは、だんだんと自分に理不尽なことばかりを押し付ける世界に対し恨みを抱くようになっていった……。


「ぐっ……ゲホッゴホッ……」

思わず咳き込む彼を気にすることもなく、ロボットは話を続ける。

『つまり、君はこの機体の主に選ばれたのだ。

これから君は私を使う主人となる運命なのだ……』

「……何で、俺がそんなことを……」

『君は復讐したいのだろう?

理不尽を投げつけた世界に、君をそんな状況に追い込んだ者共に……。

ならば、私の力を使うといい』

「力……?このロボットの……」

『そうとも。

君が望むなら……この私の力を与えよう……』

アキヒトは、ニヤリと笑い「面白い、いいだろう……俺がお前の主になってやる」と言った。

それを聞き、ロボットは、こう応える。

『フフフ……そう言うと思っていたぞ……。

ところで、君の名前を聞いておこうか……』

「神霧 アキヒトだ。アキヒトでいい」

『そうか、アキヒト……。

私は、「ラグナロク」だ』

「ラグナロク……かっこいい名前じゃねえか……。

気に入ったぜ。

俺の復讐のために、力を貸せ!ラグナロク!!」

『了解だ、我が主アキヒトよ……』

ラグナロクは海中から飛び上がった……。

海中に隠されていた「ラグナロク」は遂に主を得て目覚めた。

その動きを察知した「魔王の軍勢」の日本基地は、これを撃墜するべく戦闘機を出動させる。

アキヒトの初めての戦いが始まろうとしていた……!

次回 「俺がやったのか」

世界解放、開始。

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