りんご
「あかい、あまい、おいしい。」
一番初めの、リンゴの記憶はとてもおいしかったということ。
子どもの口には大きく、手づかみで食べると、べたつく。
「やわらかい。」
二番目に思い出すのは、軟らかく煮たリンゴ。そのまま食べてもおいしいし、ホットケーキの中に入れて一緒に焼いてもおいしい。
「かたいなあ。」
三番目に思い浮かぶのは、おばあちゃんの顔だ。果物が大好きで、リンゴはとくに毎食後に食べるぐらいには好きだった。むいて、たべる。そのままたべる。
いつからか、寂しそうに、そう言うようになっていた。
「かたいなあ。」
そういいながらも、ゆっくりとリンゴを食べていくその様子に私は「年」を叩きつけられたような気がした。
リンゴはおいしい。
おいしい、思い出の果物だ。
食卓の上にはたいていリンゴが置いてあります。