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一章「日常はチョコのようには甘くない」1


───欠陥人間


その四文字が、今お菓子科に所属している6人を示していた言葉だ。


 13年前、失敗はありえないとされていた能力開発で、ある1人の少年が何の能力も得られなかったということが起きた。

 その出来事は、世界初の異例で各国の政府が混乱するほどの大事件となった。


 能力開発において手順に不備はなく、省略や簡略化されたものはなし。結局、原因は最後まで不明のままだった。

 少年は、能力開発の失敗による影響で運動能力が平均以下に低下、二回目の能力開発は前例がなく、死ぬ危険があると受けさせては貰えない。


 少年は、世界で初めての欠陥人間となった。


 それから、少年は政府の研究所で過ごす中、少年はおやつに食べるお菓子に違和感を覚えた。


 結果として分かったのは、お菓子が自分にに運動能力の上昇という恩恵を与えてくれるということ。


そして、それだけでなくお菓子を武器として扱うことが出来るようにもなっていたということだった。


─────


「今年も賑やかだなぁ」


いつも通り、普通に遅刻なしで登校してきた秋谷は校門のところに立って校舎を見ていた。

 関東区戦技学校の校舎は戦技ごとに3つの棟に分けられており、地上に8階、地下に2階の計10階。

 左から空手科やカンフー科が含まれる武術棟、射撃科や弓道科が含まれる装戦棟、魔術科や妖術科が含まれる魔法科。

 お菓子科は、空き教室を使っているため魔法棟にある。

 装戦棟の屋上から吊るされた布には「校内戦まであと7日」という学校の恒例行事までのカウントダウンの文字が書かれていた。


戦技学校に来てから三年間、恒例行事に関わりのない秋谷にとってはただの布でしかないのだが……


「目指すは優勝だ〜」

「もっともっと練習しなきゃ!」

「お前には負けねぇぞ!!」


 といった具合に他の生徒達はかなりの盛り上がりを見せている。

 校内戦は1年に2度しか行われず、その結果で学年内立場ヒエラルキーが決まる。

 盛り上がるのは当然だろう。


「廉〜」

「よう、瑞希」


 後ろから瑞希が元気に挨拶をしてくる。口から白いプラスチックの棒が出ているのを見る限りでは、朝から飴を舐めているようだ。

 運動能力の低下した欠陥人間の俺達の体力では、登校にも一苦労なわけで、お菓子を食べないと学校にすら来れない。


「もう始まるんだね〜」

「そのようだな」

「今年も参加権ないの〜?」

「知らないけど、多分ないだろうな」

「ざんね〜ん」


 お菓子科は校内戦に出る権利を持っていない。それどころか、その他のイベント全てに出る権利はない。

 ただいるだけの存在なのだ。

 だが、廉達にとってはそれだけで嬉しかったのだ。いるところがあるだけで満足だった。


「伸ばすのやめろよ」

「断わらせていただく〜」


 右手と左手を狐の形にして、廉の鼻や耳を挟みながら瑞希は緩い返事をする。

 瑞希曰く、スキンシップらしくよくされるのだが、鬱陶しいので瑞希の頭にチョップを決める。


「はぅ!」

「鬱陶しいわ!」

「なに〜可愛いでしょ」

「やってるひとがダメだからなぁ」

「なにを!!」


 早見は、舐めていた飴を口から出してから「ポップ」と唱える。その瞬間、棒付きキャンディーが瑞希と同じ身長くらいに巨大化した。


「なんだ、やるのか!」


 それを見た秋谷も右ポケットからラムネを一粒取り出し、右手に握る。

 ラムネを握っていた右手で銃を持っているような形を作り「レイズ」と唱えた。

すると右手が光に包まれ銃が現れる。


「そろそろ諦めたらどうなんだ。99戦中99敗だろ?」

「まだ98戦!諦めたら勝てないんだよ!だから絶対諦めない」

「まあ、俺は構わないが」


 そういうと、廉は瑞希の頭の高さに銃口を合わせる。

 その行動に対し、早見は腰を屈め攻撃の体勢になる。


「「スター『ピンポーン』


今まさに始めようとした時、まる見計らったかのようなタイミングで学園放送のチャイムが鳴る。


『お菓子科三年の秋谷 廉くん、至急理事長室まで』


 2人は攻撃の体勢のまま、その放送を聞く。放送が終わってから、瑞希はゆっくりと体勢を元に戻した。


「タイミング悪いな〜。理事長に呼ばれるって何かしたの?お菓子の盗み食いとか?」

「それはお前だろ」

「そ、そんなことしないよ?」


 早見は、秋谷から目を逸らしてピュ〜と口笛を吹く。嘘をつくのが下手なのかわざとなのか分からないが、冷や汗が凄いことになっている。

 この間、その事でかなり怒られたのにまだ懲りていないみたいだ。


「理事長室行くの?」

「当たり前だ。現役世界ランク2位の理事長を相手するつもりはないからな」

「そっか」


 そう言うと瑞希は、棒付きキャンディーの大きさを元に戻してまた口に咥える。


「じゃあ、またあとでね」

「ああ」


 もう語尾を伸ばすのには飽きたのかと言おうとしたが、瑞希はすでに魔法棟に向かって走っていた。

 廉は自分の銃を光に変えて消し、握っていたラムネを口に放り込む。

 ラムネは口に入るとすぐに溶け出し、口の中には甘さが広がる。今のはイチゴ味だった。


「にして理事長室8階とか遠すぎるだろ。まあ、エレベーター使うけどさ」


廉はぶつくさと文句を言いながら、 新しいラムネをポケットから出して食べる。

 お菓子を食べていないと行動がほとんど出来ないのは廉も同じことだ。

 そのせいで大量のお菓子しか入っていないカバンを片手に、理事長室のある装戦棟へと向かった。

ご指摘、ご感想、アドバイスがあればお願いします


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