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0章「お菓子科」

なんとなく、お菓子を題材にした作品を書きたくなったので連載始めます


誤字脱字の指摘、意見、アドバイス、ご感想お待ちしています

 関東区戦技学校。

 全世界崩壊大戦争後に日本に作られた10つの戦技学校の中でも最大規模の学校であり、日本の中でも優秀な生徒達が数多く在籍している。

 そのために、2週間前に入学式を迎えたばかりにも関わらず、グラウンドや体育館では剣道科やら魔術科が練習に励んでいる。


 この学校には筆記教科が存在しない。

授業として戦技を教え、勉強として戦技を磨く。

世界大会の優勝を目指して青春を戦技と共に過ごしている生徒達とは違い、秋谷あきや れんはクーラーの風に黒い髪を揺らし、涼しい教室でイスに腰掛けていた。


「涼しい〜」


 教室は16畳ほどの大きさで、真ん中に長方形の机があり、向かい合うように6つのイスがある。

それ以外には、漫画が並べられている本棚とお菓子の入った戸棚と冷蔵庫が置かれていた。


 今、教室にいる生徒は三人。秋谷はドアに対し、手前右側にあるイスに座っていた。


「おい、瑞希。そこのラムネ取ってくれ」


 机の上にある袋に入ったラムネを指差して、前で棒付きキャンディーを舐めている女子生徒にお願いする。

 この場合のラムネは、飲み物の方ではなく駄菓子の方である。

早見はやみ 瑞希みずき──ふんわりとした茶髪のセミロングで癖っ毛が目立つ。まだ幼さの残る顔だちをしている17歳の戦学3年生。

 着崩されたワイシャツに短いワイシャツが今時といった感じだ。


「ほい」

「ありがとさん」

「廉もこれ食べる?」


 秋谷にラムネを投げた早見はポケットから飴を差し出す。包装紙が机の上にあるやつと同じということは、早見が舐めている飴と同じ物のようだ。


「ドロップボムか。何味だ?」


 飴の商品名はドロップボム。名前の由来は、棒付きキャンディーを逆さにした時に爆弾のように見えたからと聞いたことがある。

 セールスポイントは、味の種類だ。誰も思いつかないような、誰も期待していないような味まで発売する。


「即死級!激辛トウガラシ味」

「絶対やだよ!」

「じゃあこっち、歯も溶ける甘さ!砂糖味メープルシロップ&練乳入り」

「歯溶かしたらだめだろ!!砂糖にメープルシロップと練乳混ぜんな!」

「ワガママだねぇ。今日は他にカルボナーラ味とドリア味があるけど、私のお昼ご飯だからあげないよ」

「じゃあいらん」


 秋谷は飴は受け取らず、受け取ったラムネの袋を破く。

 薄緑色のラムネを一粒口に放り投げとラムネが溶け出し、口の中にメロンの味が広がる。

 トウガラシや砂糖味の飴を舐めなくて良かったと改めて思った。


「大神っち〜」


早見は秋谷の二つ隣の席に座ってバトル漫画を読んでいる男子生徒に話かけた。

大神おおがみ あきら──金髪が目立つ、若干吊り目の18歳。戦学3年生。


「なんだ?」

「大神っちは舐める?」

「いや、俺はこれがあるからいい」


 そう言うと大神はポケットから風船ガムを取り出し、俺たちに見せつるように振る。


「瑞希、凛花はどうした?」

「りんりん?今日は剣道科の助っ人に行ってるよ」

「あいつもしかしてランサー持って行ったのか?」

「あの長細いクッキーにチョコ付いてるやつ?」


 ランサーとは、棒状のクッキーに持ち手となる数センチ以外をチョコでコーティングされたお菓子の事だ。


「そうだ」

「持って行ったよ」

「マジか、食べたかったのに……」

「まあ、これでも食べて……ってあれ?チョコがないよ」


早見は、あれ〜と不思議な顔をしながら机の下を覗いたりしてチョコを探す。

確かに、さっきまで隣に開いて置いてあったチョコの袋が無くなっていた。


「チョコが無くなったと言うことは……」


 秋谷は、何かを探して部屋の天井の隅を見回す。

そして一箇所に視線を止め、その何かを見るように目を細める。


 一見何の変哲もない天井の隅だが、秋谷はあそこにいると確信して、早見に向かって手を伸ばす。


「瑞希、飴を貸してくれ」

「はい」


 秋谷は受け取った飴を見ていた天井の隅に向かって投げる。


「いてっ」


 飴は天井にも壁にも当たらず、何かにぶつかって止まり、力なく床に落ちる。


「御影、出てこいよ」

「分かりましたけど飴を投げなくったっていいじゃないっスか!」


 飴を投げた天井の隅でシールが剥がれるようにめくれ、壁に張り付くポニーテールの女子が現れる。

 御影みかげ 七美ななみ──茶髪のポニーテール、青い瞳が印象的な16歳の戦学2年生。

 日本に残る数少ない由諸正しい忍者の一族で、今のように姿を隠したりする事を得意としている。

 服装は上半身が忍者服で、下半身はスカート。隠れている時に下手したらパンツが見えてしまうのでは?と質問したところ、お洒落にはリスクが付き物と返答された。

 絶対そんなことはない。


「なんだ?打たれたかったか?」


 秋谷は左手で銃の形を作り、床に降りた御影に向ける。


「別にそういうわけじゃないっスけど……」

「なら文句はないだろ?」

「こんな理不尽な先輩がいていいんスかねぇ」

「いいんだよ」

「そういえば、今日も三奈木先輩はきてないんスか?」

「いつも通り来ちゃいねぇよ」


 御影は、答えを聞き終えると大神の正面の席に座り、さっき取ったであろうチョコを懐から取り出して食べ始める。


「大神っち、四巻貸して〜」

「もう少しで読み終わるからちょっと待っとけ」

「あれ?これ砂糖の量減ったっスかね〜」


 教室にいる秋谷を含む4人は、各々お菓子を食べたり、漫画を読んだりして自由に過ごす。


 ここは、関東区戦技学校 お菓子科


──異端にして、例外にして、特別な六人の集まる場所である。


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