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 その後、楓と野久保はカウンセリングの振り返りを行った。楓はこれまで野久保に厳しく当たったことはなかったので、野久保は多少怖気づいて楓の話を粛々と聞いていた。楓はそんなに後輩に対して怒るような先輩ではないので、野久保も楓が若干おこった姿は初めて見たのではないだろうか。そう思うと、楓は少し申し訳ない気持ちになった。

「野久保くん…飯行こっか!」

振り返りが終わると、楓は野久保に対してこう話しかけた。これまでも楓と野久保は、一緒にお昼ご飯を食べに行ったことはあるが、流れでそうなったケースがほとんどなので、楓から誘ったのは初めてであった。

「楓さん…珍しいスッね…」

野久保は、急な楓の変容に不意を突かれたみたいであった。

「そこの、中華行こう!中華!」


 そして、楓と野久保は大学の近所にある中華専門店へお昼ご飯を食べに行った。この中華専門店は、学生向きのワンコインで食べることができる定食が、20種類もそろっている。そして、料理を作っているのは、中国人の方であり、本格的の中華料理が楽しめるのだ。

「うわ~僕ここ来たの、3年ぶりくらいっすよ…楓さんはよくここに来るんですか?」

野久保は昼時の時間帯ということもあり、学生でにぎわう店内を見渡して言った。

「まあ、私も久々かな…大学生の頃は、留学生の人と仲良かったから、よく来てたの」

「へ~…」

「その人がさ…ここの店員さんと仲良くて、割引してくれてたから!」

「いい人と仲良かったんですね」

楓と野久保は思わず二人で笑いあった。

「楓さん、また聴いて悪いんですけど、やっぱり何かありました?」

野久保の三度の質問に、楓は今度は起こるというより、なぜか野久保にはかなわないという思いが芽生え始めた。

「やっぱり、一番近くにいた後輩にはわかるのかな」

「はい!尊敬する先輩のことは何でも分かります!」

野久保は目を輝かせて答える。

「何でもは気持ち悪いけど…」

「すいません!」

こういったノリも、周りから見ると、漫才みたいだと言われることもある。それほど、楓と野久保は息があったコンビと言えばそうなる。

「う~ん、なんか、上手くいってたことが、というか…そう思ってたことが、実は上手くいってなかったかもしれないというか…」

野久保は、楓の話をじっと黙って聴いてくれていた。

「楓さんが担当している、カウンセリングも事みたいですが…」

上手くいってたと思ってたことが、上手くいってなかったかもしれないという楓の言葉を聴いた野久保は、カウンセリングのことだと勘付いたみたいだった。

「どうやら、心理センターに戻ってからが良さそうですね…」

「そうね、ありがとう!じゃあそこで話すわ」

楓は、野久保が少し頼りになる好青年のように思えた。かわいいだけだった後輩も、気づかないうちに成長するようである。

「しかし、重いもの扱ってません?僕たち…」

野久保は急に、話を切り替える。しかし、これも相談業務のことだろうと、楓は推測できた。

「重いよね…なんでこんなになるまで、頼ってくれなかったんだろうって、たまに思うかな…」

「はい、僕たちは、クライアントさんの回復も援助しますが、精神疾患への予防っていう本来の仕事が来ないような…」

楓には、精神疾患への予防が本来の仕事なのかどうか見当はつかないが、スクールカウンセラーなら、不登校や引きこもりになる前の予防的意味合いが強いと思っていた。

「スクールカウンセラーは特にね…」

楓は、そうつぶやいた。続けて楓はこう言った。

「でも、いつも不登校になってから、適応できなくなってから…これじゃ遅いよって…」

楓の心の中を悔しさが埋め尽くしだしていた。

「カウンセリングは、精神疾患の人だけが受けるんじゃないのに…カウンセリングに行ったら、ダメとかいう風潮もある…」

野久保のこの発言は正しい。確かに、日本におけるカウンセリングはさほど浸透しておらず、アメリカのように比較的健康な人がカウンセリングを受けているケースは少ない。

「でもさ!」

楓は開き直って声を上げた。

「野久保くん、私たちは、求めてきたクライアントさんの味方になること!それが仕事だよ!」

「そうですね、それが一番大事!」

それから、楓と野久保は最近起きた出来事などを話しはじめた。


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