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6

5時間目の授業中であった学校は、かなり落ち着いた雰囲気をまとっていた。その中で楓は一人大慌てで職員室へと向かった。

「失礼します!」

そこには、職員は授業中のためか少なく、教頭の坂木和史が楓の声に気付いた。

「松島先生…今日は火曜日ですが、どうされました?」

楓は、坂木に事情を話す。

「何ですと…!三島さんが、自殺を…」

坂木は驚きを隠せない様子で、息づかいも荒くなっていた。

「子どもを死なせることは、教育者としての不名誉だ…絶対に心たりとも死なせてはならない…すぐに、吉田先生と養護の高山先生に連絡します」

「お願いします!」

楓はそう言って頭を下げた。

そこに、優良が所属する合唱部顧問の葛城がやってくる。

「松島先生、火曜日なのにどうかしましたか?ひょっとして…」

葛城も優良のことが気になっていたようだ。恐る恐る楓に優良のことを聞いてくる。楓は、葛城に対して優良のことを話す。

「教頭…そう言うことでしたら、私も探します!探させてください!」

「葛城先生、分かりました…」

坂木は葛城の肩を軽くたたきながら言った。

「では、松島先生…」

坂木が楓の方を向いて話す。

「優良さんをいくつかに分かれて探しましょう…見つけ次第、あなたと三島さんの母親が説得を試みるということでよろしいですね…」

「はい、その方向でよろしくお願いします!」


 こうして、優良の捜索は楓と優良の母親の亜紀、楓の後輩大久保大智、優良が通う学校の職員で行うことになった。楓と優良の母親が見つけ次第、その場で説得を行う。大久保と学校の職員が見つけた場合は、優良と接触する前に楓と亜紀に連絡して待機。仮に何かあると助けに向かうということになった。

 楓は、優良は誰とも合わない間は自殺を図ることはないと考えていた。しかし、ずっと優良を見つけられずにいたら、自暴自棄になりその時点で自殺を図ることも考えられる。とりあえずいち早く見つけることが大切だ。

 楓の携帯が鳴る。着信は亜紀からであった。

「松島先生、家にはいませんでした…これから探します…優良が行きそうな場所を当たってみます…」

「分かりました!学校の先生方も捜索していますので、私も見つけ次第絶対に連絡します」

「お願いします!」

「あの!」

楓が電話を切ろうとしたその時、亜紀が大きな声で楓を呼び止めてきた。

「あの子の部屋からギターが消えてました…」

「では、ギターを持っている子を探します!」

「はい、ギターを持ってる子でお願いします」

 楓は、亜紀のその声を聴くと電話を切った。ちょうど昼の2時半になった、東京23区の街は人で溢れかえっている。楓は人ごみをかき分けながら優良を探す。

 制服を着ている女の子を見ると、優良を見つけたような衝動に駆られるが、冷静にならなくてはいけない。優良は、ギターケースを抱えているはずだ。

「絶対に探してやる…あなたは、誰からも嫌われてない…」

 この声が優良に届いたらと、独り言のようにつぶやくが、どこを探しても優良はいない。刻々と時間は過ぎていく。


 午後3時になったところで、楓の携帯に着信が入った。優良の担任の吉田であった。

「松島先生、私も今から探します…葛城先生と高山先生も探します」

「よろしくお願いします…優良さんは、ギターケースを持っていると思われます…」

楓は息づかいが荒くなるのをこらえて話した。

それから吉田の「ギターケースですね、分かりました」という声を聴いてから電話を切った。


 楓は優良がよく街頭ライブをしたいと言っていたのを聴いていた。ギターを持っているとしたら、どこかの公園に言ったのだろうかと考えた。優良の高校がある上北沢から下北沢へ、そこから代々木公園は気持ちよさそうと言っていたのを思い出し、その場へ向かった。かなり長い距離を走り回り足が棒のようになっていた。

 ちょうどその場で、楓を呼ぶ声が聞こえた。

「楓さん!」

振り向くとそこには、同じく優良を探していた大久保がいた。

「なんだ、お前か…」

楓は大久保に心無い一言を言ってしまう。

「楓さんから聞いた、ギター好きという情報を基にここらへん探したんすけど、いないすね…」

楓は、野久保も長い距離を移動していると感じ、「ありがとう」とお礼を言った。

「もう少し、頑張ります!」

野久保はそう言って、再び走って立ち去る。

楓も代々木に優良はいないと思い、再び歩き始めた。


 どこにいる

 どこにいる

 どこにいる


 楓は、カウンセリングで優良が話していたことの全てを思い出していた。優良が一番楽しそうに話してたことを、思い出す。

“澁谷”

「澁谷だ…渋谷駅…」

楓の頭に澁谷という文字が浮かんだ。楓は、渋谷に向け走り始めた。


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