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楓はとにかく気持ちを落ち着けようと、大きく深呼吸をした。少し気持ちが落ち着いたところで、目の前にいる亜紀が視界に入る。
「どうしたんですか?松島先生…」
楓の仕草を見て、かなり心配している様子であった。
「三島さん…これを見てください」
楓はそう言って、自分の携帯を亜紀に差し出した。亜紀はそれを楓から受け取ると、開いたままにしていた携帯の画面を見る。
「!!!」
亜紀は、それを見た瞬間左手を口に当て、大きな息を漏らした。そしてそのまま崩れ落ちそうになるが、右ひじをテーブルについて体を支える。
「三島さん…落ち着いて聴いてください。娘さんは、自殺をするかもしれません…まずは、家にまだいるかどうかを確認して、いなければ探しに行きます。学校にも協力してもらいましょう…」
楓は、優良を探すためのプランを話したが、亜紀は右ひじをついたまま大粒の涙を流していた。
「私は、これから高校に行ってこれを報告してきます…三島さんは、家に戻って優良さんが家にいるかどうかの確認をしてください…」
楓は亜紀の仕草にかまわず話を続けるが、亜紀は泣いたまま動かなかった。
「いいですか?三島さん…」
「私のせいなんですね…」
「えっ?」
亜紀は自分を責める気持ちを強くした様子であった。
「何、言ってるんですか?あなたのせいだとは、誰も言ってませんよ」
「あの子が言ってるんです…あの子が…」
辛いのは楓も一緒だった。しかし、ここで楓がうろたえるわけにはいかない。そして、優良の母親でもある、亜紀にうろたえられても困るのだ。
「松島先生…あの子を、娘の優良を…助けてください…」
楓は亜紀のその言葉を聴くと、大きく息を吸い込み大きく吐いた。そして、自分の心に浮かんだ言葉を正直に亜紀に伝えた。
「助けるのは…、優良さんを助けるのは、私じゃありません!あなたです!」
亜紀は楓のその言葉に反応し、頭を上げ、楓を見つめた。
「あなたが、優良さんを助けないでだれが助けるんですか!?優良さんはあなたの娘です…母親なら、自分の子どもは命かけて守ってください!お願いします!」
楓は亜紀に向かいそう言うと、その場でひざまずき、手を前に添えて頭を下げた。楓の突然の行動に、レストランの店内にいた客のどよめく声が聞こえる。
「松島先生…頭を上げてください…」
楓はそう言われて頭を上げる。
「三島さん、私たち、カウンセラーの仕事はクライアントを助けることではありません…助けるのは、クライアント自身であり、その家族なんです。私たちは、そのお手伝いをするだけです…」
楓は、そう言いながら立ち上がり、もう一度こう言った。
「三島さん、優良さんを助けてください…」
楓が、もう一度お願いすると亜紀も立ち上がった。
「分かりました…優良を助けます…。松島先生もお願いします」
「分かりました…行きましょう!」
優良は店内を出ると、優良が通う高校に足を進めながら電話を掛けた。電話の相手は後輩の野久保大智だ。
「野久保くん!今日は暇?」
「暇っすけど…どうしたんすか?」
いつもはおちゃらけたことを言う野久保であるが、切羽詰まった楓の声を聴いたからか、真剣な声色で応答してきた。
「私のクライアントは死ぬかもしれない…お願い、一緒に探して」
そう言って、楓は野久保に事情を話した。すると野久保は、すぐに了承した。
「分かりました!このことは、だれにも言いませんし、大丈夫っす!三島優良さん、この前、話してた女の子ですね!携帯の画像もこの前見たんで、大体わかるっす!」
「ありがとう!」
楓はそう言って電話を切った。守秘義務が厳しいカウンセラーとしたは、絶対にしてはいけないことだが、野久保は信頼できるし、優良が助かるのだったら、首をかけてもいいと楓は思っていた。




