名もなき歌
何もできなかった僕の歌。
何もしなかった、君のための歌。
線路の先で見た景色
首に絡んだ糸を辿って
やっと出会えた愛しい君に
どんな言葉を贈ろうか。
『「もういいや」って嘆いた花
「どうでもいいよ」って笑った鉄塔
世界は今日も平凡で
つまらない一日でした。』
屋上から見下ろした空
君が 哭いた 鳴いた
「さよなら」
なんてさぁ
くだらない冗談でして。
「大好き」も「大嫌い」も
全部全部嘘だったのでしょう。
例えば
君が息を止めないように
あるいは
僕が息を止めるように
『届かない声でだって
いつかこの思いも報われる』って
電線に唄った愛を
ここで壊すことにしたのです。
あぁ。
右手で締めた首筋と
左手で刺した心臓
踏み潰された感情が
痛い、痛い、って泣いていました。
とっくに止まっちゃった君に
伝えたいことなんて何もないよ。
ただ、苦しいだけだ。
ずっと、苦しいだけだ。
線路の先に見た明日
指に絡んだ糸を追って
やっと出会えた愛しい君に
どんな言葉を遺そうか。
『「もういいや」って喘いだ花
「どうでもいいよ」って叫んだ鉄塔
「本当はわかっていたんです」
なんて誰が信じるだろう?』
屋上から見下ろした月
君が 啼いた 泣いた
「ごめんね」
だってさぁ
言えもしない癖に。
「大好き」も「大嫌い」も
全部全部気づいていたんでしょう?
例えば
君が息をやめないように
あるいは
僕が息をやめられないように
聞こえないふりさえも
上手にできなかった僕らは
電線に括った愛からも
逃げられないままなのでしょう。
あぁ。
右手で刺した心臓と
左手で締めた首筋
抉り取られた感情が
痛い、痛い、って泣いているのです。
とっくに止まっちゃった僕に
伝えられることなんて何も無くて
この手が届くことはなく。
ただ、愛していただけだ。
ずっと、愛していただけだ。
空を仰げば君の声。
《もうどうだっていいや》
なんて、
冗談だったら良かったのにね。
右手で締めた首筋と
左手で刺した心臓
曝け出された感情が
痛い、痛い、って泣いているのです。
飛び降りた君の手を掴んだって
伝えたいことは何も無いんだけれど
僕を見ない君には
嘘じゃなくたって届いてないんでしょう?
「さよなら」
ほら、もう見つからないよ。
この感情に、二人で名前をつけようか。
それで充分だよ。
それで充分ってことにしよう。