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リアルRPG  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一ステージ 初めての冒険
9/44

他人と仲間

 振り向くと、刀を携えた制服姿の女性が居た。

 背格好からして高校生だろう。長い髪を赤いリボンで結び、ポニーテールで纏め上げ、人懐っこそうな顔をゆがめて苦笑いしている。

 鞘に包んだ刀を肩に引っさげ、空いた左手で背後を指す。


「私、緋織ナスカ。ちょっち酒場でお話しない? 今ゲーム説明屋は大人気売り切れ続出中だしさ」


 突然の誘い。ゲームなら新キャラ加入イベント発生。

 でもリアルでは……リアルも似たようなもんか。


「どうする雄一、バッタ。俺は別に話くらいいいと思うけど」


 別にリーダー気取りなわけではなかったが、代表して聞いていた。

 ここにいるとまるで自分がゲームの主人公にでもなったように思えてくるのは何故だろう。


 やはりどこかでこれは現実じゃなくゲームだと思いたい自分がいるんだろうか?

 バッタの方は異論はないようで、首を縦に振っていた。


「僕は反対だね。なんとなく下心見え見えで、仲間が居なくなったから代わりを補充したいってことだろ? みすみす消耗品になってたまるか」


 ……何か深読みしているようだが雄一よ。

 俺もお前と仲間になるにあたって盾用員としてしか見てなかったのだが。

 刀を使うということは前方攻撃部隊として役に立つかもしれない。


 ゲームではこれくらい華奢な女性の方が下手な重戦士より使い勝手がいいのだ。

 だから俺としてもこの子が仲間に入ってくれるなら願ったり叶ったりだ。


 少なくともガリガリで重戦士という使えない雄一よりはまだ役立ってくれるはずだ。

 この事実は雄一には悟られないように伏せるとして……ん?


 ちょいちょいと俺の肩を叩くバッタに気づく。

 バッタの口元に耳を寄せると、『ちょっと話が……』とのことで、雄一と謎の少女ナスカをその場に残し、二人で路地裏に向かう。


「なんだよ?」


『オンラインゲーム。されたことはありますか?』


 話しかけてきたのは、声を聞かれたくないけど俺にはすでに聞かれているから。という秘密共有からだろうか?

 ちょっと嬉しい。


「いや、そういうのはやってない……かな」


 どちらかというと一人でゲームする派だった。

 他人と話しかけたりするオンラインゲームは現実世界みたいで好きじゃないのだ。


『オンラインゲームで恐ろしいのはPK。この世界でもおそらく一番気をつけなければならないものだと思うの』


「PK……」


 聞いたことはある。確かプレイヤーがプレイヤーを殺すというシステムで、通常の魔物よりも高い経験値を得られたりする。

 殺されたプレイヤーはモンスターにやられたときと同じようにゲームオーバーになる。


 PKとはプレイヤーキラーの略で、オンラインゲームにはこのPKを専門に退治するPKKも存在するらしい。

 しかし、この世界でもPKに気をつけろということは……


「人殺しがでると? このゲームの参加者から?」


『考えてみてください。外は化け物がいます。町の中は安全ですが、生き抜くためにはお金が要ります。お金集めの方法は聞かないと分かりませんけど、おそらくゲームと同じで魔物を倒すことで手に入ると思うんです』


「ええと、それって外に出ないと金が貯まらないってことか?」


『IDカードで認識されて……るんじゃないでしょうか? 何を倒したからその分のお金……とかって、換金屋があるから多分そうだと思うんです。で、外に出ないでいるプレイヤーは、お金を手に入れるために次にすること……』


「他の人から盗む?」


『です。盗むだけならまだマシですが、ここには警察がいません。警察が居ても現実でも殺人は起きるんです。きっと……10日もしないうちにこの町は無法地帯になると思います』


 こいつ……結構頭が回るな。俺はそこまで予想はしてなかったぞ。

 いや、予想は出来ていたかもしれないが、平和な日常を今まで過ごしていたんだ。

 まさかそんな非日常的なことが起こるわけがと、信じたくない気持ちから考えないようにしていたのかもしれない。


 まずは黒服たちへの不満から暴動が起きる。

 そしてどうにもならなくなった奴らが非行に走り、殺人が起き、この町はバッタの言うとおり無法地帯になるだろう。

 その時黒服たちは……きっと何もしない。


 運営側にさえ危険が近づかなければ何もしないだろう。

 だからこそ、魔物たちが強力で、他の冒険者達が滅多に近寄ってこないような村がもっとも安全な土地になる。


「出来るだけ早くこの町から離れろってことだな」


『それもありますけど。私が言いたいのは【他人】を簡単に信用してはいけないということです。いきなり後ろから刺されるのは嫌でしょう?』


「な、なるほど……確かにそれは嫌だな」


 仲間の中にも裏切るヤツはいるかもしれない。

 新しく仲間を作るにしてもそれで仲間内に不協和音が出来るのは好ましくないものだった。


『話を聞くのは賛成ですが、仲間に誘うのはしっかりと考えましょう。それに……綺麗な人ですし、環架さんがその……』


「は?」


『い、いえ……なんでもないです』


 少し焦ったように会話を切るバッタ。

 なんだ? この好感度イベントみたいな状況は?

 マジでゲームなんじゃないだろうな。本当に現実かこれは?

 思わず頬を抓ってみたが、痛くて涙が出た。

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