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リアルRPG  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二ステージ 幻想の現実
19/44

初めての負債

「うぅ、恥ずかしすぎる……」


 朝、ホテルを出て一番最初にバッタが口にした言葉だった。

 昨日寝ぼけていたバッタが食事を始めたのは俺が食事を終えた後のことだった。

 それから二人少し話をして、交互に風呂に入って寝た。


 ネズミの唾液で身体がベトベトだったことに気付いたのも風呂に入った時で、バッタを襲わなくてよかったと、本気で安堵した瞬間だった。

 バッタのヤツ、臭いの強烈な俺の横でよく平気に寝れていたな。


 先に風呂に入れさせられたのは何故か分からなかったが、のぼせかけたバッタが倒れこむように俺の横に寝転んできた時には驚いた。

 思わず襲おうと思いはしたものの、これがなかなか実行に移せない。

 まぁ実行せずに安心している自分もいるのだが……

 どうせヘタレチェリーボーイだよ。くそっ。


 結局何の進展も無いまま朝を迎えた。

 朝は二人揃って早めに起き、朝食も取らないままに外へ出た。

 何故かと言えば、起きた時の状況がお互いあまりにも印象的過ぎたからだ。

 思い出すのも恥ずかしいので記憶より削除しておくことにする。

 とにかくそういった理由から、俺たちは互いに顔を見ることが出来ないでいた。


「さて、どうしよっか」


「そ、そうですね、まだ病院は開いてませんし」


 もう少しホテルで時間を潰せばよかったね。

 俺はそんな言葉を脳内に思い描いていた。

 ついでに、そうなった時の止められない欲望が頭を巡る。


「あ、あの……」


「な、何?」


「も、戻ります? ホ、ホテル……」


「あ、いや……止めとく」


 襲いそうだし。と小さく呟く。


「そ、そうですよね」


 なんとなく残念そうな顔にちょっと選択肢を失敗しただろうかと不安になる。

 仕方なく街をぶらぶらと歩いていた俺たちは、ちょっとした事件を目撃することになった。


「環架さん、別の街に行くんですよね……これから」


「あ? ああ」


「じ、実はですね、向こうについてから一番初めに受けて欲しいクエストがあるんです」


「クエスト? まぁ構わないけど……」


 言いかけた俺の言葉を遮るように、乾いた破裂音が連続で響いた。

 すぐ近くだったので驚いてバッタと顔を見合わせていると、目の前の曲がり角から走ってくる子供が二人。


 必死な形相の男の子。

 手には袋をがしりと持ち、反対の手には、更に小さな女の子の腕を引っ張っていた。


 男の子は動きやすいカジュアルウェア。短パンが似合う少年だった。

 意志の強そうな目をしている。

 少女の方は、逆に恐怖で怯えていて、手にした袋を胸元でぎゅっと握り締め、絶対に落とさないようにと気を配っていた。


 二人とも髪が短く似た顔立ちだ。

 少女の服装がサスペンダー付きのスカートじゃなかったら絶対に兄弟だと思ってしまっていただろう。


 さらに、その後ろからは未来から来た機械の殺し屋よろしく、黒服の男が一人。

 突撃銃を手にして早歩きでやってくる。


「万引き……?」


 いち早く事態を察したらしいバッタが呟く。


「警告します。万引きが発生しました。粛清のため対象外プレイヤーの方は流れ弾にご注意ください」


 俺達に視線を向けて黒服が答える。

 流暢だが機械的な声に恐ろしいものを感じた。

 ようするに万引き犯など司祭者のルールを無視する相手には制裁、つまり殺害も辞さないということ。


「ま、待て待て待て、いくら取られたんだよ!」


「2000L分の菓子類です」


 歩みを止めずに淡々と黒服は答える。

 その瞬間、かなり前を走っていた女の子が躓いてこけた。

 ひっぱられた男の子は思わず手を離してしまう。

 男の子が振り返るのと黒服が銃を構えるのは同時だった。


「俺が払うっ」


 おもわず声を出していた。

 俺の声に子供達が注目してくる。黒服も銃を戻して俺に振り返る。


「貴方のお持ちの金額は160L。借金は不可能、一体どう支払うおつもりですか?」


 確か、バッタの所持金は1810L。俺のと合わせても1970Lで30L足りない。

 となると、もう一人のビッグマウス打倒者から金を貰うしかあるまい。


「少し待ってくれ、病院が開けば持って来れる」


「いいでしょう。道具屋【品蟻】でお待ちしています。期限は貴方がたが町を出るまで、町を出れば問答無用で貴方がたも襲撃対象に指定させていただきます」


 少し後悔したが目の前で子供が死ぬところを見せられるよりはマシだった。


「環架さんっ」


 黒服が去るのを見送った後で、バッタが近寄ってきた。

 不安そうな顔で見てくる彼女の頭に手を乗せて撫でる。

 安心してほしいから行った行動だったが、バッタの表情は浮かないままだった。


「雄一に出してもらおう」


 俺の言葉になるほどと納得する。

 どうやら雄一が金を持っていることは彼女の記憶になかったらしい。


「あ、あの、お兄ちゃん……」


 かけられた声に二人して振り向くと、追われていた女の子がやってくる。

 男の子の方は決まりの悪そうな顔で女の子の後を付いてきていた。


「ありがとう」


「気にすんな。それよりなんで万引きなんて」


 お? よく見ればこの二人見たことあるぞ。


「お前ら確か病院にいたよな。確かお母さんいなかったっけ?」


「あんな奴……母さんじゃない」


 嫌なことを聞かれたと、男の子が小さな声を出す。


「とりあえず俺らは病院行くけど、お前らどうする?」


 俺の言葉に女の子は男の子を見る。

 男の子はハァと溜め息を吐いて俺を睨む。


「助けられてる最中にこのままさよなら出来るわけないだろ! 礼もしてないのに。クソッほんとクソゲーだよこれはっ」


 クソゲー……ね。確かに悪趣味だ。

 少年に心の中で同意しつつ、バッタとともに病院へ向かう。

 未だに時間はあるが、子供を連れて下手に動かない方がいいとバッタに言われたので従うことにした。

 久我山環架

装備:ショートソード、皮の鎧、皮のベルト

所持アイテム:火炎の杖、氷結の杖、雷鳴の杖

魔法:爆裂魔法(手榴弾)

所持金:160


 保科雄一

クラス:重戦士

状態:重傷? 入院中

装備:錆びた斧、壊れた鎧

所持アイテム:火炎の杖、氷結の杖、雷鳴の杖

所持金:400L


 バッタ

クラス:マルチウエポン

装備:ナイフ×2、臭いロングソード、小型のボウガン、ショートソード、タンクトップ

所持アイテム:バッタのキグルミ、火炎の杖、氷結の杖、雷鳴の杖

       組み立て式・鉄塊、ハリセン、着替え

所持金:4810L


負債:2000L

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