プロローグ
ちょっと息抜きに投稿。
既に三つも作品連載してるのになにやってんの? と自分にツッコミ入れながら作成しました。
どこだったかの賞に応募した作品です。落選済み。orz
洞窟にある広い空洞、照りつける人工照明の中、周囲に積み上がるのは無数の死体。
吐き気を催すような臭気の中、目の前に存在するのは見上げる程に巨大なネズミ。
学生でしかなかった俺が現地で仲間になった二人とそれに対峙している。
「よし、どうだ化け物ッ」
絶叫するネズミに斧で斬りつけた痩せた男がガッツポーズ。
が、それは失敗だ。
咄嗟に声を出そうとするが、間に合わなかった。
怒り心頭のネズミが前足を振り下ろす。
慌てて男が飛び退くが、リーチが長かった。
払った前足が頭に当たり盛大に吹っ飛ぶ。壁に激突した男は嫌な音を響かせ動かなくなった。
思わず男の名を叫ぶ。その瞬間、
『環架さんっ!』
思わず逃げるのも忘れて止まった俺にくぐもった女性の声が飛ぶ。
声にハッとしてネズミを振り返ると、丁度こちらに前足を振り上げたところだった。
ああ、なんで……こんなことに?
きっかけは……そうだ、あの手紙だ。
ある日、ポストに見知らぬ手紙が届いた。
差出人は不明。宛先は久我山 環架。つまり俺宛だ。
手紙の内容はリアルでRPGの体験ができる新感覚アドベンチャーイベント、マーダサヴァイバルのモニターに選ばれたという。
参加するか否かを記し返信して欲しいという内容。
切手は貼らなくてもいいようで、書くところを埋めさえすればそのままポスト投函で構わないそうだ。
返送期限はその日から一週間程度。これを過ぎると無効になる。
モニターの期間は夏休みいっぱいいっぱい。ようするに一ヶ月弱だ。
現地に宿題を持っていっておけば参加することは可能だろう。
友人と遊びに出ることもなく彼女も居ない俺にとっては夏のいい暇つぶしではある。
なにより新しい恋というものが待っているかもしれない。
そんな軽い気持ちで、俺は参加しようと思ったんだ。
その選択が……どれほど後悔に満ち溢れたものか予想すらしていなかった。
ネズミの爪が……迫る――――