普通が一番よね!
緋色の人気がこれほどまでとは思っていなかったから。
入学式当日、初めて教室に入った時、かなりの人数が教室の中にいた。
がらりと戸を開け、緋色の姿を認めた途端、ざわざわとした教室が水を打ったように静かになったのよ。
びっくりしたわ。こんな経験は初めてだったから。
男子も女子もみんなが、緋色に見惚れていたのよね。
緋色が動くたびに視線がそれに合わせて動き、そして席に着いてからは一転してざわめきとなり、誰もが緋色に関心を寄せているのがわかったから。
そばでそれを肌で感じていたわたしは、彼女と親友であることがうれしかった。自慢したいほど誇らしかった。
緋色はそんなことは露知らず、平然としていたけれどね。
案の定、それからは、学年を問わず色々な男子達からの誘いがあった。
緋色の男子に対する関心のなさは知っていたから、ことごとくわたしが断っていたのよ。
しかも、普通にいやです。だめです。と拒絶するのは簡単だけど、それでは面白くないなと思い、ゲーム感覚でいろんな口実を探しては、表情もそれに合わせて。
最初のうちはね、愉しかったのよ?
男子達のいろんな顔が見えて・・・
緋色が男子に少しでも感心があるのなら、キューピット役だって喜んでやるし、合コンでも、何でもセッティングして、緋色に相応しい彼氏が見つかるまで協力するのに。
緋色の彼氏だったら、探しがいがあるものね。
プラスの感情にエネルギーを使うほうが、断ることより断然、効率的だと思うわ。楽しみの質が違うもの。
でも関心がない以上、断るしかなかったのよね。
目障りな火の粉はわたしの方にまで降りかかるから、この手で払うしかないのよ。
今日は2回だったけど、明日は金曜日。何回声をかけられるやら。
これが―――
これから3年間続くとなると、食傷する。
注目されるのにもね。
もうごちそうさまって感じ。
はっきりいって飽きてきたわ。
そろそろ、静かな普通の学校生活が送れないかしらね?
ほとんどの人は、そういう生活よね。
どうやったら普通になれるのかしら?