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<神を喰らう獣と、神殺しの遺児>

 「喰らえ!!

  ―――コイツが俺のぉぉぉ!! ファァイナルブロォーだぁぁぁ!!!!」


 西暦20**年。世界は核の炎に包まれる―――事もなく。

 小規模な紛争及び、経済事情の悪化による不況に喘ぐ人々も居たが―――世界は、概ね平和だった。


 「ハッ! その程度の技! ワタシのフニッシュスキルの敵ではない!!!」


 「チィ! だったらこれならどうだ!!

  ―――真・ファァァァァァァイナゥゥゥルブロォォォォォ!! 燃えろ!」


 それを成すは、世界を3度は滅ぼせる。核ミサイルを中心とした、大量殺戮兵器の存在であった。


 「甘いわ! ならばワタシも答えよう! フニッシュスキル・セカンド!!」


 「やるじゃないか……いいだろう。遂にコレを使う時が来たようだ。

  ―――超級・真・ファイナル・ブローだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 振るえば世界を滅ぼす力。人が手にした、そのあまりにも凶悪な力。

 それが世界にもたらしたモノは“破滅”ではなく―――“平和”だった。


 「フッ……素晴らしい。

  まさかこのワタシが、この技を使うことになるとはな……。

  フニッシュスキル・ダブルセカンド―――全ては凍りつく……さあ、こ・ご・え・るがよい!」


 戦乱に次ぐ戦乱の歴史を持つ人類。その戦いの歴史に終止符が打たれたのだ。


 「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!!!」」


 「すげぇ……あいつら堕ちながら闘ってやがる……」


 だがそれは、古より長く長く続いていた冷戦の―――“人外”達の冷戦の終わりを意味していた。


 これは、世界有数の都市である東京。その裏側を彩る人気のない路地裏。

 繁栄の光と影。その影となる―――影となった者たちの物語。


 路地裏から始まり、路地裏に終わる最終戦争アーマゲドン

 開戦のラッパは知る人ぞ知る―――電子網ネットの海に鳴り響いた。



 ―――――――――

 ――――――

 ―――


 「―――と言う夢を見たんだ」


 「焔。フニッシュじゃなくてフィニシュだとか。決め技が何個あるんだとか色々と突っ込みたいところだが……。まずは、根源的なところに突っ込ませてもらう」

 「お、おう?」


 「明日は期末テストの日だ」

 「おう!」


 「ここで赤点取ると、当然追試だ」

 「そうだな」


 「追試中は部活動は一時停止となり、期日が重なる大会出場は不可能となる」

 「それは困る」


 「ああ、困るな。で、だ。

  そこで、キミがどうしてもと言うからわ・ざ・わ・ざ、こうして勉強会を開いた訳だ」

 「おう、悪いな!」


 「―――なのになぜ、夢の話を聞かされるんだ!(ダンッ!)」

 「お、おう……」


 「どうやったら、参考書開いて5秒で爆睡できるんだ!(ダンッダンッ!)」

 「人体の神秘だな。うむうむ」


 「そうかそうか、ならばその神秘を解き明かそうじゃないか……」

 「ちょ、ま!? 落ち着け刀夜! そのメスを仕舞えって!!」


 「良いだろう。アプローチを変えよう」

 「ふぅ……。やれやれだぜ―――って、おいぃぃ!? その怪しげな瓶はなんだ!」


 「カフェインを抽出濃縮した自家製の眠気覚ましだ。

  ―――安心するが良い。致死量ぎりぎり、限界一歩手前の紙一重を見切って調合してある」

 「紙一重でアウトかよ!? それに個人差があるだろ? 個人差が!!」


 「安心しろ。これはキミ専用だ。

  ―――こんな事もあろうかと、昨日作っておいた」

 「ちょ!? まっ!? おま、無免許だろ!? そんな事で大丈夫か?!」


 「大丈夫だ、バレなければ問題ない」

 「問題しかない!?」


 「つまらん反応だな……一番良い薬は頼まないのか?」

 「はぁ? ああ、またなんかのネタか? 余裕あって良いなお前は……」


 「ああ、余裕あるとも。だからこそ、こうやってキミの相手をしてられる」

 「へいへい、ありがたいこってすなー」


 「―――良いのか? ワタシは余裕だが、キミは違うだろ?」

 「うぐ?! だからこうして協力を頼んだわけで……」


 「協力するのは構わないが、肝心のキミがダメダメなままじゃ意味ないぞ」

 「休校になるような雨乞いの仕方や、担任が腹下して試験中止になるようなオマジナイとか無いのか?」


 「協力ってそっちか!? 斜め上過ぎだ!!」

 「お前も医者志望なら、頭の良くなる薬とか持ってないのか?」


 「そんなの有る訳な―――!―――ほら、これだ」

 「待て待て待て! それはさっきの永眠しかねない目覚ましだろ!!」


 「む? さすがに騙されなかったか……成長したな」

 「ふっ、褒めても屁ぐらいしか出ないぜ?」


 「褒めてないし、親しき仲にも礼儀ありだ。本当に出そうならトイレにでも行って来い」

 「おう!、じゃちょいと行ってくる!」


 「駄目だこいつ。早く何とかしないと……」


 頭を抱え、テーブルに突っ伏す銀髪の少年。悪びれること無く笑いながら席を立った赤毛の少年。

 対照的なこの二人は、幼稚園からの幼馴染であり、腐れ縁で繋がった友人同士である。


 ゲルマン民族の血を引き、西洋風の顔立ちをした銀髪の少年―――新條しんじょう刀夜とうや

 成績優秀、運動神経抜群、彫りが深く端正な顔立ちと人目を引く鮮やかな銀髪を持った優等生。眼鏡は伊達。


 生粋の日本人であるが、その気質に合わせたかのような赤毛の少年―――深見ふかみほむら

 運動神経は良いが、成績劣悪。生来の三白眼と赤毛、着崩した服で悪目立ちする不良生徒。


 正反対な印象を持つ二人であり、趣味も好みも違い、性格も合わない。

 出会えば直ぐに、喧嘩腰で言い合うのが日常の二人組。


 そんな二人の仲が良いのは、正反対だからお互い惹かれ合う―――と言った甘い理由ではない。


 焔は、周りから不良と称されてるし、自分もそうだと思っているが、実際は普通である。

 授業をサボることも滅多に無く、喧嘩も自分から仕掛けることは無い。

 喫煙、万引きや恐喝など犯罪行為を行うこともなく、むしろ見かけたら止める方であり、言動は荒っぽく、行動も大雑把なため不真面目な印象を与えているが、本質的には常識人なのだ。

 そのため本物の不良とは話が合わず、一歩引いた付き合いしかしてない。


 対して、刀夜は刀夜で、周りからは真面目な優等生として扱われているが、実際は違う。

 ルールを破ることに躊躇はなく、犯罪行為すら厭わない。授業も、真面目に受ける気は無い。

 冷静に行動を見れば不良そのものである。

 そんな彼が優等生と思われてるのは、外面―――大人受けが良いからである。

 

 文武両道。容姿端麗。礼儀正しい言葉使いと態度(焔相手は除く)。見え隠れする悪事の影も「彼なら大丈夫」とか「何か理由があるんだろう」など、本質を知るものからすれば噴飯ものの理由で許されてるのだ。


 ―――確かに、彼なら大丈夫だろう。


 ボロを出すようなヘマはしないのだから。

 理由もあるのだろう。常人には理解できない、身勝手な理由があるのだから。


 焔は刀夜を(能力的に)信用しているが、(性格は)信頼はしていない。

 刀夜は焔を(性格的に)信用しているが、(能力は)信頼はしていない。


 お互いがお互いを信用はしてるが、信頼はしていない。

 

 ―――それほどお互いを理解し合っている。


 殺伐としてるが仲が良い。そんな二人はまさに腐れ縁の関係であった。


 なんだかんだと目立つ二人では有ったが、ごくごく普通の少年だった。

 

 ―――そう、だった。

 

 ガチャ

 

 「あーすっきりしたぜ?」

 「なんで疑問形なんだ! それより戻ったなら、さっさと続きを……」

 

 ピリリッ!

 ちゃんちゃか、かちゃちゃーちゃちゃちゃちゃ!

 

 「ん? 着信?」

 「メールのようだな……オカシイな? フィルタリングは完璧なはずなんだが?」

 

 二人同時に届いたメール。

 それが終わりの始まりであり、深淵への誘いであった。

 

 「なんだ迷惑メールか……削除っと」

 「……」

 

 内容どころか、題名すらも見ずにサクッと削除する焔。

 彼にメル友はいない。つまり、彼にとってメール=迷惑メールなのだ。

 

 「―――面白い」

 「あ? どうした。猫が寝込んだか?」

 

 おもちゃを見た子供のように目を輝かせる刀夜に、どや顔で話しかける焔。

 

 「ワタシの携帯はフィルタリング設定を強化してある。それを掻い潜って届いたメールだ、興味が湧いて当然だろ?」

 「スルーかよ」

 

 だが、軽く躱され。顔を顰めた焔。だが、メールを読みながらニヤニヤと笑う刀夜に興味を惹かれ、再び声を掛けた。

 

 「おいおい、どうしたよ?」

 「噂には聞いていたが、面白い。実に面白い!!

  さあ、刀夜! 出かけるぞ!」

  

 「お、おう」

 

 勢いに押され思わず頷く焔。

 それを一瞥して、部屋から出て玄関に向かう。

 

 「BBBの招待状だ」

 「は? なんだそれ?」

 

 「旗印を賭けた戦いバナー・ベット・バトルのことだ」

 「ばなべ? 新種の果物か?」

 

 「ソレを言うならバナナだろ。それに、そもそもバナナは新種じゃない!」

 「じゃあなんだってんだ?」

 

 「インターネット上で噂になってる闇試合のことだ」

 「闇試合? 旗包みのことか?」

 

 「それは闇ゴルフだ―――って、よく知ってるな?!」

 「漫画喫茶で、こないだ読んだからな」

 

 「とりあえず意味の無い、どや顔はやめろ。

  ―――まあいい、行けば分かる。ついて来い」

  

 「へいへい」

 

 こうして二人は、反映する都会の闇であり―――“世界”の裏側である、路地裏に足を踏み入れたのだった。

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