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Full of the moon  作者: 五十鈴 りく
Chapter Ⅱ

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〈35〉無謀な申し出

「はぁ?」


 リトラよりも先に、レジスタンスメンバーたちの方が驚きの声を上げてしまった。リトラはというと、こめかみに筋を浮かせて口もとを引きつらせている。明らかに怒っている。それなのに、ザルツは続けた。


「今の俺たちは、正直に言って戦力不足だ。リッジとやり合えるような逸材を見逃す手はない」


 けれど、リトラはそんな言葉で気をよくするタイプではなかった。眼光鋭くザルツをにらんでいる。

 ただ、ユーリは何故か嬉しそうだった。


「リトラ、少しだけ寄り道して行こうか」


 そんな彼女をもリトラはにらんだ。効果は薄かったが。

 それでも、ユーリを落とせばいいのだとザルツが判断するには十分だった。


「あの状況であれだけ冷静な判断が下せた君もだ。協力してくれるとありがたい」


 その途端、リトラは噛み付かんばかりの敵意をむき出しにしたけれど、ユーリはきれいに微笑んでいた。


「あなた方の活動に、私自身はとても興味をそそられます」


 その一言に、レヴィシアは驚いた。お嬢様然としているのに、平然とそんなことを言う。本当に不思議な人だ。

 けれど、とユーリは続ける。


「ただ、私たちは旅の途中で、あまり時間がありません。人も待たせています」


 ようやく、リトラはほっとしたようだ。険しかった表情が少しだけ和らぐ。


「わかったな? お前たちに関わっている暇はない」


 それでも、ザルツは粘った。レヴィシアにはそれが珍しく思える。


「長期とは言わない。一度でいい。次の作戦を手伝ってくれるだけでいい」


 ユーリはちらりとリトラを見遣った。リトラは厳しい面持ちでかぶりを振る。けれど、ユーリははっきりとした声で言った。


「一度だけだよ。それくらいなら、なんとかならないかな。多分それは、今後の私たちにとっても、必要な寄り道なんだ。そうは思わない?」

「思わない」


 即答だ。


「行くぞ」


 すると、ユーリは深く嘆息した。


「いいよ、わかった。じゃあ、リトラだけ先に行ってよ。私は少しだけ残るから」


 一瞬彼は、ぐ、と言葉に詰まった。ユーリはつかまれた腕を振り払うような仕草をしながら更に言う。


「じゃあね。後はよろしく」

「っ……そんなこと、できないってわかってて言ってるだろ!」

「別に? 私は自分が必要だと思うことを優先するだけだよ。リトラも自分が思うようにすればいいじゃないか」


 あんなにも目付きが悪くて凶暴な人間なのに、ユーリが相手だと形無しだ。ついにリトラは妥協した。


「期限は六日! それ以上は無理だからな!」


 吐き捨てるようにそう言った。かなり不本意だということだけが読み取れる。

 それでも、ユーリは花のように可憐に微笑んだ。


「うん。ありがと、リトラ」


 きっと、あの笑顔には逆らえる気がしないのだろう。


 そうして、期限を定めてのことではあるが、二人の仲間が加わった。

 ただし、助っ人の片割れは打ち解けるつもりがないらしい。

 

 リトラの方がリッジよりも強いのかというと、そうでもないのですが。ただ、リトラの動きは不規則で読みづらいので、慣れないと戸惑うんですね。手とか足とかがよく出ます(笑)


 ちなみに、第二章、〈37〉で終わります。後二話です。

 よろしければお付き合い下さい。

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