〈35〉無謀な申し出
「はぁ?」
リトラよりも先に、レジスタンスメンバーたちの方が驚きの声を上げてしまった。リトラはというと、こめかみに筋を浮かせて口もとを引きつらせている。明らかに怒っている。それなのに、ザルツは続けた。
「今の俺たちは、正直に言って戦力不足だ。リッジとやり合えるような逸材を見逃す手はない」
けれど、リトラはそんな言葉で気をよくするタイプではなかった。眼光鋭くザルツをにらんでいる。
ただ、ユーリは何故か嬉しそうだった。
「リトラ、少しだけ寄り道して行こうか」
そんな彼女をもリトラはにらんだ。効果は薄かったが。
それでも、ユーリを落とせばいいのだとザルツが判断するには十分だった。
「あの状況であれだけ冷静な判断が下せた君もだ。協力してくれるとありがたい」
その途端、リトラは噛み付かんばかりの敵意をむき出しにしたけれど、ユーリはきれいに微笑んでいた。
「あなた方の活動に、私自身はとても興味をそそられます」
その一言に、レヴィシアは驚いた。お嬢様然としているのに、平然とそんなことを言う。本当に不思議な人だ。
けれど、とユーリは続ける。
「ただ、私たちは旅の途中で、あまり時間がありません。人も待たせています」
ようやく、リトラはほっとしたようだ。険しかった表情が少しだけ和らぐ。
「わかったな? お前たちに関わっている暇はない」
それでも、ザルツは粘った。レヴィシアにはそれが珍しく思える。
「長期とは言わない。一度でいい。次の作戦を手伝ってくれるだけでいい」
ユーリはちらりとリトラを見遣った。リトラは厳しい面持ちでかぶりを振る。けれど、ユーリははっきりとした声で言った。
「一度だけだよ。それくらいなら、なんとかならないかな。多分それは、今後の私たちにとっても、必要な寄り道なんだ。そうは思わない?」
「思わない」
即答だ。
「行くぞ」
すると、ユーリは深く嘆息した。
「いいよ、わかった。じゃあ、リトラだけ先に行ってよ。私は少しだけ残るから」
一瞬彼は、ぐ、と言葉に詰まった。ユーリはつかまれた腕を振り払うような仕草をしながら更に言う。
「じゃあね。後はよろしく」
「っ……そんなこと、できないってわかってて言ってるだろ!」
「別に? 私は自分が必要だと思うことを優先するだけだよ。リトラも自分が思うようにすればいいじゃないか」
あんなにも目付きが悪くて凶暴な人間なのに、ユーリが相手だと形無しだ。ついにリトラは妥協した。
「期限は六日! それ以上は無理だからな!」
吐き捨てるようにそう言った。かなり不本意だということだけが読み取れる。
それでも、ユーリは花のように可憐に微笑んだ。
「うん。ありがと、リトラ」
きっと、あの笑顔には逆らえる気がしないのだろう。
そうして、期限を定めてのことではあるが、二人の仲間が加わった。
ただし、助っ人の片割れは打ち解けるつもりがないらしい。
リトラの方がリッジよりも強いのかというと、そうでもないのですが。ただ、リトラの動きは不規則で読みづらいので、慣れないと戸惑うんですね。手とか足とかがよく出ます(笑)
ちなみに、第二章、〈37〉で終わります。後二話です。
よろしければお付き合い下さい。




