〈6〉何を望む
レーデは明るい空の下を一人、歩く。
他のレジスタンス組織への接触はサマルが担当してくれた。レーデは、民間人への呼びかけである。来る日に、不用意に王都へ近付かないように。無用の混乱を避けるため、その地域の要人にだけそれを伝える。
そのうちの数名は、自分たちにできることはないかと言ってくれた。
そのことに、正直なところ驚いた。荒唐無稽な目標を、その夢を共に見ると言うのだ。
彼らもまた、自分たちの未来を真剣に憂い、決断したのだと思う。まだ見ぬ可能性を恐れない、その姿勢に感服してしまう。守るべきものがあれば、保身に走る。それが当然だと思う。
けれど、それだけでは駄目なのだと、彼らは考えた。そのきっかけであったのは、レヴィシアの父親なのかも知れない。けれど、決断させたのは、レヴィシアだろう。
あの子は、自分の思いにまっすぐに進んでいる。それだけだ。
その他のことは、後から彼女について回る。皆、そうして彼女を取り巻く。
あの行動力が、正直、羨ましくもある。
大人になり、自分はああいう風にはいられなくなった。
考えれば考えるほどに臆病になり、動けなくなる。
踏み出す道が、間違っているのではないかと。
引き返すという選択も、そのまま進むという選択もできず、立ち尽くすだけの人間が大人ではないと思うのに。
それでも、今、はっきりと自分の意志でこの組織に所属して、国の未来を左右する活動に参加できることを喜ばしく思うのも事実だ。
ただ、決戦は近い。結果がどうあれ、組織が解散する日も近いということだ。
そうした時、自分には何が残るのだろう。
アランに従って流されるだけだった自分に、何があるのだろう。
先の未来よりももっと手前に、落とし穴が穿たれたような気がした。
光り輝く陽だまりの中に立つレヴィシアたちに、自分は近付くこともできずに取り残されるのではないだろうか。空っぽの自分は、この先をどう生きるべきなのか。
答えはどこにある。
どこにもない。
どこにもないなら、作り出さなければならない。
自分にあるのは、罪だけか。
だとするのなら、この罪を、アランの命を抱えて、あの家に戻って償うべきなのか。
それとも、世間と離れ、神に仕えるという道が正しいのだろうか。
残りの人生を、そうして生きて行くべきだろうか。
一体、どうしたいのか。
それすらも満足にわからない。




