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ファースト・パーツ 世界のあり方

自由気ままに載せた作品です。

 作品といえるようなものでもないのですが、よろしければご覧ください。

記入ミスなどもあると思いますが、何かお気づきになった場合コメントなどを入れてもらえると訂正をいたします。


※この作品はフィクションです。登場する人物、企業名は存在しません。


ガタンッ、ガタンッ


 俺は規則正しい電車の揺れに身を任せながら、窓の外を見ていた。

 窓の外にはどこまでも続く海と雲ひとつな青い空が広がっていた。

 俺は窓から目を離して手元にある資料を確認する。

「治療費に修理費……あとは転校手続きもしたし……」

 手にもつ資料を一つずつ確かめると、ふうっと大きなため息をついて目蓋を閉じる。


 俺は鈴成すずなり 和也かずや。高校2年生ってところだ。

 両親は考古学の調査をするために、あの事故が起きた日からエジプトの方に行っている。

 そんな海外に行くことが多い親のもとで育ったせいか、俺は親が留守にしている間、その日の食費を考えたり、今みたいに治療費を確認する主婦みたいな高校生になってしまったのだ。


 俺はしばらく心地よい揺れを楽しんだ後、車内放送の音で目を覚ました。

「次は終点。終点でございます。お降りのお客様はお荷物の確認をお願いします……次は終点…………」 もう、終点か。

 俺は大きな伸びを一つすると、何気なく窓の外を見た。窓の外を見た途端、俺は思わずごくりと唾を飲み込んでいた。


「すげぇな……こんなところ日本にあったんだ」


 終点に向かう電車の窓から見えたものは、海の上……遥か上空に浮かぶ天空都市だった。

 テレビで海の上に浮かぶ人工島なら何度か見たこともあったけど、上空に浮かぶ島を見るのは人生で初めての経験だ。


……あらためて日本の技術に驚いた。


 こんなこと夢のまた夢だと思っていたが、こうも現実に見てみるとにわかに信じられない思いでいっぱいになる。

 電車はそのまま天空都市の方向へ行かず、その手前で止まる。

 駅に止まって扉が開いた途端、それまで乗者していた人がぞろぞろと降りだした。

 「さっさと降りねえと……」

 俺は散らばった書類をキャリーバッグのなかに突っ込んで電車を降りようとすると、不意に後ろから呼び止められた。

「お客さん、お1人ですか?」後ろを振り返ると車掌らしき人物がすぐ後ろに立っていた。


 あれ、人の気配なんかしなかったはずなのに……いつの間に……?


「はあ、まぁそうですけど……なにか?」俺は予期せぬ事態に少し戸惑いながらも、返事を返した。


「いえ、ここ最近、無差別に人が襲われる事件が多発していましてね。その事件、お1人の方が襲われているのですよ。……今日はその忠告に」車掌は帽子を目深に被り直すとそう言った。

 この治安がいい時代に物騒だな。

 俺はそんなことを思いながら荷物を持ち直すと、車掌から離れたところで軽く一礼して通り抜ける。


「…………特にあなたみたいな力の強い人間は気をつけないと」車掌は通り抜けた俺に向かってひらひらと手を振った。

 このとき俺は車掌がつぶやいた言葉の意味を理解していなかった。




 その日の午後。俺は転校届けを提出するために、駅から街の中心に向かって歩き出した。

目的は街の中心にそびえ立つ一際ひときわ大きな建物、ここ白樺しらかば学園に来ていた。

 

 事前に予習しておいた情報によると……

 白樺学園は日本でも有数の有名校で、家財関係の商品は世界シェアの60%を占めるといわれる白樺財閥の所有する学校で、現理事長は白樺財閥社長である。

 学園の前には大層でかい門があり、それをくぐると中央に噴水がある庭が目に付く。そこは生徒の憩いの場になっているほどの人気スポットだ。

 豪華な庭を抜けてしばらく行くと、白樺学園の学び舎が前方に見え、白を貴重とした清楚なイメージ感溢れる校舎がある。

 校舎は5階建てで、1階から順に実習棟や教習棟が連なっている。

 屋上には、雨が降った日でも屋上に上がれるようにアーチ型のガラス板が設置されている。

 そのほか、だだっ広い運動場や学園内を移動するために用意されたバス、壮大な学生寮まで完備されている。


 とまあ、こんなにすごい場所なので白樺学園は学生たちの間で憧れの場所なのである。

 

 そして、えない俺が何故こんなところにいるのかというと、それは入院中の話だ。

 一つ言えば、俺はここに来る以前のある一部の……火事の起こった日の記憶をもっていない。

 医者の話によれば俺は自宅が火事になったときに何らかの力が働いて記憶を無理やり破壊されたらしい。


-何者かによる記憶の破壊。


 当時のことを思い出そうとしても何も浮かんでこない。どれだけがんばっても強い頭痛と耳鳴りが襲ってくるだけなのだ。

 ふさぎこんでいた俺に両親は「気分を変えるため」という理由でここの学園に転校するように仕向けたらしい。

 なんでも、父さんと白樺学園の理事長は大学時代の古い知り合いらしく、事件のことを聞いてこころく転入することを了承してくれたらしい。


 俺はでかい門をくぐると、噴水のそばを通って教習棟の事務室を目指した。

 

 それから数分後。俺は完全に迷子になっていた。

 ていうか、どんだけ広いんだよ……

 俺は悪態をつきながら初めて見る場所をうろうろとしていた。


 「おいおい……来て早々迷子とか……勘弁してくれよ……」

 地図どおり歩いたはずなのに、事務室どころか、校舎にさえ着いていない。

 あたりはショッピングモールなのか、子供連れの親子や若い人たちで溢れかえっている。

(せっかく誰にも頼らないように地図も暗記してきたのに……)

 

 周りの視線が痛い。

 嫌だ……あの時と同じだ。

 ここも結局変わらないのか……


 俺がそんなことを思って歩いていると、道の真ん中に人が集まっていることに気づいた。

 なんだ?

 俺は人ごみに近づき、ひそひそ話をしている主婦の会話を盗み聞きした。


「ほら、あの事件。人が襲われるって言う……」


「そうね、この子もしかして……」


「きっとそうよ。それに被害者、消えたんでしょう?服は残ってるのに……」


「かわいそうね……どこに行ったのかしら?」


……人が消えた?どういうことだ?


 俺は主婦から離れると、その言葉の意味を確かめるため、意を決して人ごみの中に入っていった。

 そこで俺は目の前の光景にただ愕然がくぜんと見入ってしまった。

 そこには以前、人が着ていたであろう女性ものの衣服と、その周りに飛び散るおびただしい出血のあとが無残むざんな形で広がっていたのだ。


「……くそっ!なんだよ、これ!?」目の前に広がる無残な光景を前に怒りがこみ上げてくる。

 怒りをどうにか沈めて周りを見渡すと、皆それぞれ悲しげな表情を浮かべていたり、嗚咽おえつを漏らしながら泣きじゃくる人もいた。

 そんな中俺は1人、人ごみを外れて地面にしゃがみこんだ。

「ひどい……ひどすぎる……誰がこんな……」

 想像を超える映像を見たからか、溢れそうになる嘔吐おうと感を必死に押さえ込みながら、なんとか立ち上がることができた。

 激しい頭痛が襲い、ふらふらする体をなんとか支えて前を向くと、ちらっと気になる姿が目に映った。

 そこには、あの車掌が1人ポツリとたたずんでいた。そして、俺を一瞥いちべつすると笑いながら手を振り、店の影に消えていった。

「あいつ……」 

 俺は頭痛の痛みに顔をしかめながら、車掌の後を追った。

 


 俺が男の消えたところに辿たどり着くと、そこは非常通路のようだった。通路は暗く、何か嫌な予感がしてたまらない。

 一歩一歩歩くたびに、頭痛の激しさも勢いを増していく。

 

 体が警告している。この先に行ってはいけない。


 しかし、自分の意思とは裏腹に導かれるように俺は車掌の後を追い続けた。

 1,2分経っただろうか。しばらく歩いていくとそこは行き止まりだった。


「…………どこに消えたんだ?」俺は急いで辺りを見渡してみるが、人間が通り抜けられる場所はなさそうだ。

 壁に手を当てたたいてみても、どすどすっという音がするだけで空間があるとは思えない。

 あきらめて立ち去ろうとしたとき、聞き覚えのない少年の声が耳に入った。


「あなたは誰を捜しているのかな?」狭い路地に声が響きわたる。

「っ!?誰だ?」


 俺はいそいで後ろを振り向くと、朝みた車掌がすぐ後ろに立っていたように、見知らぬ男がすぐそこに立っていた。

 男は上下真っ赤なスーツで身を包み、肩まで伸びた赤い髪を口元にくわえて楽しそうに笑っている。


「さあ?問題だよ。僕は一体誰なんでしょう?」そう言った男は左手を横に広げてみせる。

 広げられた手には紙が3枚。黒魔術にでも使えそうな真っ黒な紙だ。


「知るかよ……」そういいながら、俺は壁際ギリギリに移動する。


「えー。つまんないよ。そんな答えじゃ…………罰として2枚ね」

 男はそう笑いながら手にもつ黒い紙を地面に落とした。


 紙はひらひらと空中を舞い…………地面に……落ちない?


「えー、ちょっと待ってね…………あったあった!……ゴッホン!今からお見せするものはタネも仕掛けもありません、究極のマジックです!今からこちらにただよう真っ黒な紙はどんどん形を変えていきます」男はポケットから用意していた台詞を取り出すと、演技のかかっていない単調なしゃべり方でそれを読み出す。


「おいっ、人の話を聞け!」気味が悪い……悪寒が全身を駆け抜ける。

 

 本能が告げる……この男はマジでやばい……!!

 

 なおも男の話は続いていき、ひと区切りしたところで男はこちらを見た。

「はいっ!では……1(アン)、2(ドゥ)、……3(トゥルウァ)!」カウントを終えると男は指をぱちりと鳴らした。

 その瞬間、黒い紙はぶくぶくと膨れ上がり、目も鼻も口もない二つの真っ黒な人型ひとがたに変わっていった。

 また、それら二つの人型ひとがたの手にはそれぞれ小さな斧と治療のときに使用するメスらしきものが握られていた。


 「わがしもべと成り得た者に告ぐ……さっさとやれ……」男は小さく、低く命令を下す。


 「なっ!?」気づけば俺は二つの人型によって、地面に押さえつけられていた。


「…………は~い、出来上がり。ちゃんと遊んであげてね……」


「ヴルゥゥゥゥ……」

 俺はこいつらから逃げることも抵抗することもできなかった。

 分かった事といえば自分の体が人型によって無数に切り刻まれ、皮を剥がれているということ……


 そして、最後に見た光景は男の面白そうに笑う顔と、あの黒い人型がぱっくりと口を開け俺を…………


 捕食する瞬間だった。

本編を載せました。

あまりよくない文章ですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。

よければ、批評、感想を待っています。

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