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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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移住

作者: tu31
掲載日:2026/09/06

『新天地』


 私たちの星では、もう「未知」という言葉に大した価値はなかった。


 科学技術が進歩し、観測可能な範囲は宇宙のほとんどを覆った。


 新しい星を見つけることも珍しくない。


 だから、その惑星が発見されたときも、最初は誰も興奮しなかった。


 私たちの星と酷似していた。


 水がある。

 酸素がある。

 豊かな生態系がある。


 そして――文明がある。


 知的生命体だった。


 彼らは都市を作り、道具を使い、文字を持っていた。


 私たちは彼らを調査した。


 結果は、すぐに出た。


「こちらの方が優れている」


 身体能力、知能、寿命、環境適応能力。


 ほとんど全ての項目で、私たちが上だった。


 会議では三つの案が提示された。


 支配


 和平


 殺戮


 最初は和平を望む声もあった。


 しかし、ある男が言った。


「なぜ、わざわざ劣った生物に合わせる?」


 反論は少なかった。


 結局、私たちは彼らの星を手に入れた。


 私は移住者の一人に選ばれた。


 格安プランだったため、到着まで百年を要した。


 長い旅だった。


 そして今日、ようやく扉が開いた。


 四本の脚を地面につける。


「……外だ」


 久しぶりの重力。


 久しぶりの空気。


 久しぶりの世界。


 思わず伸びをする。


 視界いっぱいに、新天地が広がっていた。


 だが――


「……つまらないな」


 都市だった。


 高層建築。道路。交通機関。


 私たちの星と大差ない。


 せっかく別の星まで来たというのに、これでは故郷と変わらない。


 腹が減った。


 近くの店に入る。


「肉を」


 店員が差し出したものに噛みつく。


 生肉だった。


 二年間熟成された鶏肉。


 表面は変色している。


「美味い」


 濃縮された旨味が舌に広がる。


 この星を選んだ理由の一つは、食料事情だった。


 食べられるものが多い。


 次に向かったのは、生命体観測場だった。


 かつてこの星を支配していた知的生命体が保存されている。


 ガラスの向こうに、それはいた。


 奇妙な姿だった。


 二本の脚で立ち、二本の腕を持つ。


 頭部には眼球が二つ。


 体毛は少ない。


 四本足で歩く私たちとは、あまりにも違う。


「これが……知的生命体?」


 正直、拍子抜けだった。


 観察対象が何かを叫んでいる。


 係員が説明する。


「視覚を遮断すると、認知能力が大幅に低下します」


 実演が始まった。


 目を覆われた生命体が、途端に動きを鈍らせる。


 観客から笑い声が起こった。


 私も笑った。


「やはり、殺戮して正解だったな」


 この程度の生物と和平を結ぶ。


 そんな選択をしなくてよかった。


 私たちの文明に、彼らを必要とする理由はない。


 観測場を出る。


 新しい家へ帰る。


 家具も食料も、すでに運び込まれていた。


 私はベッドへ向かう。


 そして、いつものように身体を横たえた。


 眠気が来る。


 私は右脳を睡眠状態へ移行させた。


 左脳だけを起こしたまま、本を読む。


 効率がいい。


 明日は仕事を探そう。


 この星での生活にも、すぐ慣れるだろう。


 窓の外を見る。


 夜の街が輝いている。


 見慣れた光景だった。


 ふと、机の上に置かれた古い本に目が止まる。


 移住前に配布された資料だ。


 表紙には、この星の先住知的生命体について書かれている。


 私はページをめくった。


 そこには、彼らの最後の記録が残されていた。


 ――人類は、最後まで抵抗した。


 私は首を傾げる。


「人類?」


 知らない言葉だった。


 私は本を閉じる。


 そして再び、読書を続けた。


 明日になれば、この星のことをもっと知ることができる。


 新天地なのだから。


 きっと、まだまだ――


 私たちが知らないことがある。

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