5.不詳
翌日、同じ道を通った。
昨日と同じ時間。
同じ信号。
同じ建物の影。
そこには、誰もいなかった。
座っていたはずの場所は空いていて、
水のボトルも見当たらない。
置いた痕跡も、残っていない。
ただ、いつも通りの道があった。
少しだけ、肩の力が抜けた。
迷惑じゃなかったのかもしれない、と思ってしまった。
すぐに、その考えが気持ち悪くなる。
自分の行動で誰かを救ったかもしれない、と思ってしまったことに気づいたからだ。
いなくなった理由は分からない。
受け取ったのかもしれないし、
誰かに持っていかれただけかもしれない。
それでも、
私はそこを見た。
昨日はいなかったら、
今日は気にも留めなかったはずの場所を。
私は、確認しに来てしまっていた。
少し離れた場所で、空のペットボトルが転がっていた。
昨日、私が持っていたのと同じ形。
同じ色。
同じ容量。
偶然だと思おうとした。
そういうものはいくらでもある。
けれど、踏み潰された跡がついている。
キャップは、どこにも見当たらない。
誰かが持っていった。
誰かが開けた。
誰かが、手にした。
そこまで考えて、
私はそれ以上を想像するのをやめた。
近くで、二人組が立ち話をしていた。
声は低く、内容は断片的で、
意味を拾うつもりがなくても、耳に入る。
「……最近さ」
「……ああいうの、置くと危ないって」
「……揉めるんだよ」
それ以上は聞こえなかった。
聞かなかったのかもしれない。
私は、足を止めなかった。
昨日よりも長く、その道を歩いていたことに、
角を曲がってから気づいた。
それが何につながるのか、
考えないようにして、歩いた。




