表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百折不撓のアルゴリズム  作者: 一ノ瀬隆
3章 快刀乱麻のブレイブハート

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/54

53話 『螺旋』

ボクはたまらず、走り出していた。



さっきまであった、膝の震えはない。一歩一歩が、大地をしっかりと踏みしめている感覚を返してくれる。



「......っはあっ、っはあっ、うぅっ......!」



普段動かないから、肺が焼けつくように熱い。心臓が早鐘を打っている。 でも、止まっちゃいけない。止まるわけにはいかない。



必死に前へ、前へと足を動かす。



「......み、見えた!」



黒煙の向こうに、スミスの工房が見えた。もう少

しだ。



疲れで鉛のように重くなった足を叩き、ボクはスミスの工房へと飛び込んだ。



「はぁ、はぁ......ッ」



乱れた息を整えながら、工房内を見渡す。 そこには、先ほどの爆撃で乱雑に崩れた資材と、工具の山があった。 スミスがレイさんのために準備していた、改造の痕跡。



どこだ。どこかに、今のボクでも使えそうな──いや、この状況を覆せる「力」はないか。



「......あった」



工房の奥。瓦礫に埋もれかけてなお、異様な存在感を放つものがあった。 螺旋を描いた、変わった形状の剣。 少し前に、スミスが「制御できねぇ」と愚痴をこぼしていたから知っている。



スミスの作った怪物、”螺旋剣クァエスタ・ヘリット”。



ボクはフラつく足で駆け寄り、その冷たい金属に触れた。 重い。そして、構造が複雑すぎる。 普通の人間なら、どう扱えばいいか分からないだろう。



だが、ボクには分かる。 ボクはずっと、頭の中で世界を作ってきた。何万回ものシミュレーションを繰り返してきた。 だから、この剣の構造も、必要な魔力パスも、触れただけで脳内に設計図が浮かび上がる。



「いける......!」



いち早く、この武器を自分の物にしないといけないんだ!!!!!



そう強く願い、この剣を手に取ろうとしたとき、



バサッ。



汗で張り付いた長い前髪が、視界を遮った。 前が、ちゃんと見えない。



「......邪魔だッ!!!!」



ボクは近くに転がっていた工作用ナイフを手に取り、躊躇なく自分の髪を掴んだ。 ジャリッ、という音と共に、刃が走る。



ここまで伸びた髪は、停滞の象徴。 部屋の隅で膝を抱えていた、弱いボクの抜け殻だ。 もう、時間は止まらない。進むんだ。



切り落とされた金色の髪が、ハラハラと舞い落ちる。 だが、その髪は床には落ちなかった。



ブワッ!



ボクの溢れ出した魔力に呼応するように、宙を舞った髪が光を帯び、複雑な幾何学模様を描き始める。 髪が、魔法陣へと変化していく。 まとまった髪は、まるで意思を持つ蛇のようにクァエスタ・ヘリットの剣身を這い、螺旋の溝へと吸い込まれていった。



「こ、これは......」



本能的に理解した。 切り離した髪が、ボクと剣を繋ぐ「パス」になったんだ。 今、この剣にはボクの分身が纏わっている。ならば、ボクの妄想を、直接この剣に流し込むことだってできるハズだ。



ボクは柄を握りしめ、高らかに叫んだ。



「廻れ、螺旋剣──クァエスタ・ヘリット!!!!!」



その叫びとともに、確かに”繋がった”。 ギャギャギャギャギャギャンッ!!!! 工房の空気を切り裂き、鋼鉄の螺旋が咆哮を上げた。



「ボクも、戦いますよ。レイさ、じゃなかった。レイくん」



そうして、前より大分短くなった髪をまとめ、ハーフアップにした。



もう逃げない。そう決意し、決戦の場へと足を運ぶ。 スミスの工房を後ろにして──────。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ